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【ハイライト動画あり】リーグワン最多3万4568人が見届けた大熱戦。トヨタヴェルブリッツ×東京サントリーサンゴリアスは「1点差」決着!
ラグビーレポート by 多羅 正崇
試合後の会見で、帝京大学の先輩と後輩でもある両主将の声は、喜びと感謝に溢れていた。
「豊田スタジアムで、これだけ多くの方がヴェルブリッツを見てくれたことは、愛知県でラグビーをしてきた者として感慨深いです」(トヨタヴェルブリッツ、NO8姫野和樹主将)
ビジターの東京サントリーサンゴリアス、NO8姫野主将の大学後輩であるHO堀越康介主将。
「最高のスタジアムで、良い環境でラグビーができて、イチ選手として楽しい時間でした」
NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24(D1)第10節交流戦で、リーグ戦1試合の最多入場者数記録が更新された。
観客は3万4568人。過去最多だった今季第2節(サンゴリアス×東芝ブレイブルーパス東京)の31953人を上回った。
この上ない環境の下、まずインゴールで歓喜の輪をつくったのは、ホストの6位(5勝4敗/勝点23)ヴェルブリッツだ。
開始4分。
アーロン・スミス(トヨタヴェルブリッツ)
新加入のSHアーロン・スミスが、右大外で「4対1」をつくる的確パス。慶應義塾大学初の留学生だったアイザイア・マプスアが、フォローから先制トライを挙げた。
ビジターのサンゴリアスも前半12分に絶好調のNO8ツイヘンドリックがトライを返しはした。
しかしサンゴリアスの前半得点はその後、ニコラス・サンチェスの怪我により急遽先発の高本幹也によるPG(26分)のみ。前半は10点に留まった。
一方のヴェルブリッツは、準備したプレーが的中する。
7-7で迎えた前半15分には、2試合連続のFB起用に応える高橋汰地が、内返しから独走トライ。
そして前半28分のラインアウトでは、元バックスのフランカーが突破アシスト。昨季からFW転向のFLウィリアム・トゥポウが、鋭いパスをCTBシオサイア・フィフィタに送る。
CTBフィフィタがラインアウトのFW―BK間の切れ目を切り裂き、フォローのSHスミスがトライ。
ボーデン・バレット(トヨタヴェルブリッツ)
前半終了前にはNZ代表でも同僚のSOボーデン・バレットが約50mのショットを成功。ヴェルブリッツが14点リード(24-10)で試合を折り返した。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1
【第10節ハイライト動画】トヨタヴェルブリッツ vs. 東京サンゴリアス
さらにヴェルブリッツはショートパントの再獲得を契機として、SHスミスが連続トライ。ついに21点のリード(31-10)を奪った。
今日はヴェルブリッツに軍配か――。
そんな瞬間にあってもチームは慌てていなかった、と、サンゴリアスのHO堀越主将は語った。
「今シーズンは本当に逆転の試合が多い。だから逆に、ハドル(円陣)で慌てていませんでした。次に何をするのか、こうすれば絶対スコアできるよね、という明確なゴールがありました」
これこそ経験の価値だろう。21点ビハインドのサンゴリアスは得点差に動揺していなかった。
まずは、そのHO堀越主将が最後尾についたモールで一本返すと(後半11分)、5分後には十八番の連続攻撃で、17フェーズ目でLOハリー・ホッキングスが右隅へ。
これで9点差(22-31)。
「後半40分間、最後の最後まで自分たちのプランを信じて、明確にして、積み上げてガマンしました」(サンゴリアスHO堀越主将)
シオネ・ラベマイ(東京サンゴリアス)
さらに後半22分に途中出場のシオネ・ラベマイが、敵陣ゴール前のコリジョン勝負を制して3連続トライ。自陣で反則を重ねるヴェルブリッツに対し、後半28分のPG成功でついに逆転。
21点差をひっくり返してしまった。
「セカンドハーフでは、相手に対してコリジョン(衝突)の部分で受けてしまいました」(ヴェルブリッツ、NO8姫野主将)
「タックルの高さ、コリジョンを修正できませんでした。サンゴリアスは試合中にそれを修正できるチームでした」(ヴェルブリッツ、ベン・ヘリングHC)
ゲームはここから逆転、そして再逆転が起きるとは誰が予想しただろう。
試合時間はあと約10分。1点を追うヴェルブリッツは最終盤にショットの機会を得る。蹴るのはSOバレット。
その後何が起きたか。公式記録はこうなっている。
●後半39分/トヨタV 10.ボーデン・バレットPG×(31-32)
●後半39分/トヨタV 23.山口修平T(36-32)
この記録だけを見て、SOバレットが蹴ったボールがポストに弾かれる、追いかけていた途中出場の山口修平が捕球する、そのままインゴールへ――。
そんな夢のようなプレーが起きたことを想像できる人は多くないだろうが、実際に起きてしまった。
トライ後のSOバレット、その驚嘆と歓喜の入り交じった表情が、どれほど珍しく、かつチームに貴重なトライだったかを物語っていた。
もしもこのまま決着していたら、プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)の最有力候補は山口だったろう。しかし実際のPOTMはサンゴリアスの斎藤直人だった。
79分56秒。
まさかの展開で6点ビハインド(32-38)を負ったサンゴリアスのキックで、リスタート。ここでヴェルブリッツはボール確保でタッチへ蹴り出せばノーサイド。
ここでLOホッキングスが競り合い、値千金のターンオーバー。敵陣で連続攻撃。直後にサンゴリアス呉季依典がヘッドコンタクトでダウン。
ヴェルブリッツは痛恨のイエロー(その後レッドにアップグレード)。反則から自陣に押し込まれて窮地となり、ラストは敵陣ゴール前スクラムで猛プッシュ。
ここ一番での会心のスクラム・ペナルティで、SH斎藤がパスダミーからインゴールへ。渾身のガッツポーズを決めた。
「ゲームが終わった後に足が攣るくらいのタフなゲームでした」
そう漏らしたのは、いつも気丈なサンゴリアスの田中監督だ。
「こういうゲームを最後まで諦めず、勝つことを信じて戦った選手を誇りに思います。これが東京サントリーサンゴリアスのカルチャー。これを選手が体現して、若い選手に残していくゲームになりました」
ヴェルブリッツのNO8姫野主将は、開口一番は「すごく残念です」と無念を滲ませた。
それでも「良い場面もありました。前半はゲームをコントロールができました。前回ボールを簡単に失っていましたが、ゲームコントロールしながら敵陣でプレーすればスコアを取り切れました」
3万4568人に最高のシーソーゲームを届けた両軍。
5勝5敗となって7位となったヴェルブリッツは、サンゴリアスに肉薄する地力は証明した。次戦の相手は勝点4差で追走している8位静岡ブルーレヴズだ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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