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逆転勝利を喜ぶクボタスピアーズ船橋・東京ベイ
後半戦に突入した「NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24」。ディビジョン1は3月15日(金)~17日(日)にかけて第10節が開催。
15日(金)に東京都・秩父宮ラグビー場で、横浜キヤノンイーグルスとクボタスピアーズ船橋・東京ベイの交流戦がナイトゲームで行われた。強豪同士の激突は最後まで勝負の行方がわからない熱戦となった。
昨季3位のイーグルスは、開幕戦は埼玉パナソニックワイルドナイツに敗れたが、そこから4連勝と白星を重ねた後、2連敗。しかし、その後は連勝し、昨季に続いてのプレーオフ進出の射程圏内の5位につけていた。
沢木敬介監督は、前節と先発メンバーを変えなかった。FW(フォワード)では、LO(ロック)はマックス・ダグラスと、オーストラリア代表のマシュー・フィリップの2人、NO8(ナンバーエイト)には元日本代表のアマナキ・レレイ・マフィらが入った。
BK(バックス)も、SH(スクラムハーフ)天野寿紀とSO(スタンドオフ)田村優のベテランハーフ団や、CTB(センター)にはキャプテンで前節、静岡ブルーレヴズ戦のPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)の梶村祐介らが引き続き先発した。
一方、昨季王者のスピアーズは、開幕戦に東京サントリーサンゴリアスに敗戦するなどシーズン序盤に2連敗し、その後は2連勝したものの、再び連敗となかなか波に乗れない。フラン・ルディケHC(ヘッドコーチ)は、ヴェルブリッツ戦から、FW2名、BK2名の先発を入れ替えた。
FW第1列はHO(フッカー)スカルク・エラスマスと、PR(プロップ)は1番には海士広大が引き続き入り、3番には先週はリザーブスタートだったオペティ・ヘルが上がった。LOは元日本代表のヘル ウヴェが先発に上がり、デーヴィッド・ブルブリングとコンビを組んだ。
勝利に貢献した新人HO江良颯
BKでは、WTB(ウイング)はトヨタヴェルブリッツ戦でケガをした木田晴斗に代わり、前節14番だった金秀隆が11番にシフトし、14番には根塚洸雅が先発に復帰した。ベンチには前節、リーグワンデビューを果たしたHO江良颯(帝京大学)と、明治大学で主将を務めたCTB廣瀬雄也がアーリーエントリーでデビューをうかがった。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24
【ハイライト動画】横浜キヤノンイーグルス vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ |18点差をひっくり返す大逆転劇
両者は昨季2度戦い、第1戦は27-27で引き分けたが、第2戦は15−5でスピアーズが勝利していた。
8910人の観客が集った秩父宮ラグビー場で、試合は午後7:00にキックオフされた。前半2分、スピアーズはFB島田悠平がPG(ペナルティゴール)を決めて、3点を先制したが「65分間はゲームをコントロールしていた」と沢木監督が話した通り、イーグルスのペースで進んでいく。
前半10分、イーグルスはラインアウトを起点にボールを動かし、左隅でWTB竹澤正祥がタックルを受けながらも、3試合連続となるトライを挙げて、5-3とすぐに逆転。
キックでトライを演出したイーグルスSO田村優
20分、スピアーズもモールからHOスカルク・エラスマスがトライを挙げて、逆転したが、33分、イールグスも反撃。ラインアウトからSO田村が裏へキック、そのボールを元南アフリカ代表CTBローハン・ヤンセ・ファンレンズバーグが押さえてトライ。SO田村がゴールを決めて12-8とした。
37分、スピアーズのNO8ファウルア・マキシが危険なタックルで、オフフィルドレビューによりレッドカードとなり、20分間、数的有利となったイーグルスは39分、再び、ラインアウトからボールを継続し、SO田村が右手でタップパスを使って右に展開。CTB梶村、ファンレンズバーグとつないで、最後はWTBヴィリアメ・タカヤワが右隅に飛び込んでトライ。前半はイーグルスが19-8とリードしてハーフタイムを迎えた。
トライを挙げたイーグルスWTBヴィリアメ・タカヤワ
後半も数的有利のイーグルスが先手を取る。2分、相手のキックからボールを動かして、WTBタカヤワが2本目となるトライを挙げて、リードを18点と広げた。その後、膠着した状態が続いたが後半19分、スピアーズはNO8にトゥパ・フィナウが入り、再び15人対15人に戻った。
ゲインするSO岸岡智樹
24分、スピアーズはラインアウトから、この試合好調だったモールでFWが押し込み、最後はCTB立川、SO岸岡智樹とつないで、岸岡が中央にトライ。FB島田がゴールを決めて11点差に迫る。一方、イーグルスは28分、29分、30分と3度も相手陣でラインアウトのチャンスを得たが、相手の粘りもあり、得点に結びつけることができなかった。
するとスピアーズは34分、SO岸岡が「50-22」のキックを決めて、相手陣奥でチャンスをつかみ、モールを押し込むと、イーグルスは反則の繰り返しにより、FLコーバス・ファンダイクがシンビン(10分間の途中退場)となる。37分、スピアーズが再びモールを押し込み、最後はHO江良が前節に続いて右中間にトライを挙げて、FB島田がゴールを決めて4点差に迫った。
WTB根塚洸雅の逆転トライ
残り2分あまり、相手のキックオフからスピアーズはボールを継続し、アドバンテージをもらった後、SO岸岡は自らキックして、そのボールをキャッチするとランで大きくゲイン。最後は右に展開し、FB島田、HO江良、WTB根塚とつないで右隅にトライを挙げて逆転。時間を使って難しい角度のゴールをFB島田が沈めて、29-26でノーサイドを迎えた。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)は18点差をひっくり返したスピアーズからSO岸岡が選出。「順位を考えると落とせない試合だった。展開的にはかなり厳しかったが、最後、何とかしなければと強気にキックとランをした。それがチームの勝利につながったのはすごくうれしいし、それを評価していただいてのPOMだったと思うので非常に光栄」とホッとした表情を見せた。
7点差以内で勝ち点1を得たが、ホストで逆転負けを喫したイーグルスの沢木監督は「残念な結果でショックだが、現実を受け止めて次に切り替えてやっていかないといけない。今日の敗因は、(後半30分前後に)3本あったゴール前のラインアウトから1本でもトライできれば勝てた。しっかり、最後まで勝ちきれる強さをもう一度準備していきたい」と話した。
イールグスの梶村祐介キャプテン
キャプテンのCTB梶村は「本当に残念で、ほとんどの時間をコントロールできたと思うが、勝負どころで取れなかったのが結果につながった。次節は大きな試合があるので、相手どうこうよりも、もう一度自分たちのスタンダードでどれくらいプレーできるか。ゲームのプレッシャーの中でパフォーマンス発揮できる選手はまだ少ないので、その強度の中で発揮できるような準備をしていきたい」と前を向いた。
モールを押し込むスピアーズのFW
大逆転で勝利を挙げ、勝ち点4を加えて総勝ち点を26としたスピアーズのルディケHCは「クボタに来てから本当に一番の大逆転の試合。信じる力、プロセス、やり切るところを出してくれた。過去2試合は、大事な局面で点数に変えることができなかったが、今日の試合ではできた」と選手の成長に目を細めた。
キャプテンCTB立川は「前半ペナルティが多くペースをつかめず、後半も最初に取られたが、そこからやることを明確にすることができたし、レッドカードの中でもゲームをうまく進められた。後半入った選手がインパクトを出してくれた。ケガ人が多い中で、チームの力を出すことができた。次の試合もしっかり準備して臨みたい」と話した。
総勝ち点が29となり、6勝4敗で5位をキープしたイーグルスは、3月23日(土)、同じ秩父宮ラグビー場で、3位の東京サントリーサンゴリアスと対戦する。一方、プレーオフ圏内の4位までの勝ち点差を3とし、6位に浮上したスピアーズは、次節も秩父宮ラグビー場で、3月22日金曜の夜に、無敗で首位を走る埼玉パナソニックワイルドナイツにチャレンジする。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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