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ラグビー コラム 2024年3月11日

【ハイライト動画あり】タフな1週間を経て、強くコネクト。ブラックラムズ、今季2勝目。ヒートは攻め切れず、初勝利に届かず

ラグビーレポート by 田村一博
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松橋周平(ブラックラムズ東京)

ともに勝利に飢えていた。
内に秘めた両チームの気持ちの強さは、試合中の体を張る姿勢、フルタイム直後の光景から伝わった。

3月10日(日)、三重交通G スポーツの杜 鈴鹿は強風も好天。スタンドから見つめたファンは、最後のホイッスルが鳴った後、その場で動けなくなった両チームの選手たちを見た。
ともに力を出し切った。

リーグワンのディビジョン1で最下位(12位)に沈んでいるホストチームの三重ホンダヒートは、今季初勝利を地元・鈴鹿で掴みたかった。
前節の東京サントリーサンゴリアス戦に0-62と敗れたリコーブラックラムズ東京(10位)は、プライドを取り戻したかった。

互いの強い気持ちがぶつかり合った80分は、24-14のスコアでブラックラムズが勝利を手にした。
風上に立った前半に全得点を稼いでの今季2勝目だった。

4トライを奪ったブラックラムズは、開始5分に先制し、30分に加点。失点した直後の37分に再び突き放し、ハーフタイム直前にもトライラインを越えた。
先制パンチにジャブ、カウンターパンチと、効果的にダメージを与えた。

敗れたヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(以下、HC)は、勝負を分けた理由のひとつにチャンスで得点を取り切れた否か。両軍の決定力の差について言及した。
そして、「特に前半最後に2トライを奪われた時間が悔やまれる」と振り返った。

中楠一期(ブラックラムズ東京)

勝者、ブラックラムズが奪った前半5分の先制トライは、相手の反則で得たペナルティキックを敵陣深く蹴り込み、得たラインアウトからだった。
モールを組んで前進するも固執せず、パスアウトされたボールを受けたSO中楠一期が好判断。サイドチェンジから防御の隙を突いてインゴールに入った。

30分のトライも、追い風を利用して敵陣に入った後に得たものだ。圧力をかけて反則を誘い、PK後のラインアウトからモールを押し込む。
攻めあぐむ時間帯もあったが、好機を効率よく生かして差を広げた。

ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1

【第9節ハイライト動画】三重ホンダヒート vs. ブラックラムズ東京

大きかったのは、敵将もダメージを受けたと認めた時間帯の攻防だ。前半のラスト3分で奪った2トライで勝利を引き寄せた。
この試合の3トライ目は中盤のラインアウトからの攻撃で、ブレイクダウンからFL松橋周平がボールを持ち出し、サポートのHO武井日向主将が走り切ったもの。

4トライ目は、最初の40分が過ぎたことを告げるホーンが鳴った後に生まれた。ヒートのノックオン後のターンオーバーから攻撃に転じて攻め切った。
全員で攻め上がり、ボールを大きく動かす。最後はゴール前の密集から、FL松橋が押し込んだ。

アイザック・ルーカス(ブラックラムズ東京)

風下に回った後半、ブラックラムズはSOにアイザック・ルーカスを投入してランプレーで攻めるとともに、前に出るディフェンスを見せた。
ヒートが風を背に受けて攻めたにもかかわらず得点を伸ばせなかったのは、チーム全体が前に出ている状況でキックを使えなかったからだ。

勝者は、80分間プレッシャーをかけ続けることをやめなかったからクタクタになりながらも今季2勝目を得ることができた。

惨敗した前節の試合を終えた後、ビーター・ヒューワットHCは「意図や狙いが見えなかった」と話した。
しかしこの日の戦いを終えた後は、「(きょうは)スタートしてから、すぐに(意図していることが)見えた。フィジカリティを前面に出して戦っていた」と選手たちを称えた。

1週間前の敗戦後、選手たちは腹を割って話し合い、自分たち主導でチームを立て直した。
HCは「タフだったけどいい1週間を過ごした」と言った。

この日、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたFL松橋は「コネクト」という言葉を使い、チームが結束してこの試合に臨んだことを伝えた。
「その結果、勝利を掴めたことは自信になりました」

ただ、「満足はしていません」と安心はしない。
「もっと上にいけるチームだと思っています。でも、きょうの内容では強いチームとは戦えない。プレッシャーがある中でペナルティもしたし、雑なところもあった。もっと精度、判断を上げないと」
勝ち点4の80分は、さらに上昇するための一歩目にすぎない。

呉洸太(三重ホンダヒート)

互いに力を振り絞った一戦のベストトライは、前半34分に生まれたものだったか。
インゴールに入ったのは、この日は黒いジャージーを着た10番、呉洸太。負けたヒートが奪ったものだ。

相手のキックを受けたFBトム・バンクスのカウンターアタックから始まった攻撃は、全員が走り、ボールを繋いで敵陣ゴール前に迫った。
呉のトライは、15フェーズを重ねた後の仕上げだった。

この一連のプレーが示すように、ヒートはよく攻めた。それは、Optaのデータからも分かる。前半は風下のヒートがポゼッションで上回り(53パーセントと47パーセント)、ゲインメーターでもブラックラムズより多く走った(208メートル)。

しかし、ヒートは風上に立った後半の環境を生かし切れず、攻め込んだ後の決定力が足りなかった。
ゲームキャプテンを務めたFL小林亮太は、「アタックでは良い部分もあった。ただ、トライ取るところまでいけなかった」と語り、ミスや反則でプレーが途切れたことを悔やんだ。

集中力が切れる瞬間があったことも課題に挙げた。
「やらなければいけないこと、決め事があったのに、ふっとした時に、それを遂行できない。ソフトなトライを与えてしまいました」

またも今季初勝利に届かなかった。勝ち点も得られなかった。
しかし、「悪い部分ばかりではなかった。しっかり前を向いて次戦に向けて準備をしていきます」と気持ちを奮い立たせる。

第9節を終えて12位と最下位。ただ入替戦など、下を見て戦うには早すぎる。
上を見て走り続けるしかない。

文: 田村 一博

田村一博

前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。

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