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【ハイライト動画あり】勝利への執念。トヨタヴェルブリッツが堅守速攻でクボタスピアーズ船橋・東京ベイを撃破。NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24第9節交流戦
ラグビーレポート by 多羅 正崇クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツの厳しいディフェンスには一貫性があった。
「大事な局面で得点ができませんでした」(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、CTB立川理道キャプテン)
東大阪市花園ラグビー場が舞台となった4勝4敗同士の対決後、降雪もあったタフな80分間を振り返って、スピアーズのレジェンド主将はそう嘆いた。
ホスト開催となったスピアーズの守備も堅調だった。
しかし自陣後退のスピアーズは、相手HO彦坂圭克のインゴールへの突進を、CTB立川主将らがトライセーブ。必死のハードワーク、巧みなボディコントロールで失点を防いだ。
すると前半25分だ。
キックを有効活用するスピアーズ。WTB金秀隆のショートパント再獲得から敵陣侵入。ゴール前でノーハーフとなったが、PR才田智がサイドチェンジしたSO岸岡に即応してパスアウト。
ここでSO岸岡がインゴール右奥へ正確なグラバーキック。追ったFL末永健雄がグラウンディングするスーパープレーで、リード(8-7)を奪い返した。
スピアーズが獲り切りたかった場面は、やはり前半ラストだ。
敵陣ラインアウトからの奇襲的なモール攻撃の後、スピアーズは勝負の大外展開。
ここでヴェルブリッツは、FL姫野和樹主将が相手バックスを止める好プレー。直前のFB高橋の詰めるDFで相手パスが乱れ、体勢を崩した相手WTB金にFL姫野主将が追いついた格好だった。
最後はノックオンでプレーが止まり、ヴェルブリッツは前半終了前の失点を防ぎ、1点ビハインド(7-8)で試合を折り返した。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1
【第9節ハイライト動画】クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. トヨタヴェルブリッツ
「先週の敗戦後から、みんなには『1、2パセーントやることを増やしてほしい』と求めました。それを一人ひとりが実現してくれた。その厳しさが今日のディフェンスに繋がったと思います」(ヴェルブリッツ、FL姫野主将)
ヴェルブリッツの課題のひとつは「一貫性」だったが、後半エナジーは落ちなかった。
堅調なスピアーズDFを崩したのが、この日プレースキック5本を全成功させたSOボーデン・バレットだ。
後半開始直後、キックオフを獲得したヴェルブリッツはSOバレットがショートパント。このバウンドを15番起用の高橋が抑え、開始早々の逆転トライを演出した。
しかし強豪同士の対決は簡単には終わらない。
8-14とリードされたスピアーズだが、スクラム・ペナルティからSO岸岡の好タッチで敵陣22mへ。重量FWで攻め立て、最後はふたたびSO岸岡の鋭いロングパスからWTB金がフィニッシュした。
労力を重ねて1点ビハインド(13-14)に迫ったスピアーズ。
が、直後にソフトなトライを許す。後半10分にキックチャージから後半2本目。ヴェルブリッツは一瞬のチャンスを生み出し、比較的少ない労力で効率的に得点を重ねていく。
8点ビハインド(21-13)となったスピアーズは後半11分、フロントローを全員交替。
帝京大学からアーリーエントリーでデビューとなったHO江良颯、スクラム猛者のPR紙森陽太、ケガから復帰のPRオペティ・ヘルが途中出場。HO江良は豪快なキャリー、正確なスローイングなどで即戦力を証明した。
しかしヴェルブリッツは、常にジョーカー的活躍をするFB高橋の剛脚が閃く。
後半23分、鋭い出足の守備が奏功。相手パスが乱れた。ターンオーバーが起こると途中出場の小池隆成が、FB高橋のショートサイド速攻を察知してポップパス。
そのままFB高橋が右隅を突き抜けてチーム4本目。リードを15点(28-13)に広げた。
ここでヴェルブリッツは、2番手SHの福田健太が負傷交替となり、終盤はCTBチャーリー・ローレンスが球出しを担当した。非常事態だったが、シンプルに徹することで窮地をしのいだ。
「(SH福田のケガについては)起こったことはしょうがないことで、その後は『シンプルなプレーを積み上げていこう』と話しました。チャーリーとフォワードがよくやってくれました」(ヴェルブリッツ、FL姫野主将)
ここからスピアーズも終盤モールを起点に、後半27分にPRヘル、最終盤にはジャッカルからの敵陣侵入で、HO江良がデビュー戦トライを決めたが、2本のコンバージョン差(4点)で届かなかった。
最終スコアは4点差(31-27)。ヴェルブリッツは5勝目。スピアーズは5敗目を喫した。
ヴェルブリッツのFL姫野主将は、大敗したコベルコ神戸スティーラーズ戦後、選手に仕事量を増やすことを要求する一方で、みずからにはハードな練習を課した。
「練習の前に早く出て、自分の課題に取り組みました。練習後も最後まで残って練習したり、帰宅してから何をすべきかをノートに書いたりしていました」
スティーラーズ戦後に「それぞれが自分と向き合ったことがよかった」と語ったFL姫野主将。まず自分達にベクトルを向ける作業から、チームを立て直した。
5敗目を喫したスピアーズのフラン・ルディケHC。選手の健闘も讃える姿に人柄が表れていた。
「アームレスリングのような試合ができました。やるべきことは出来ていましたが、大事な場面でスコアされ、それがプレッシャーになりました」
「選手がギブアップせずにやり続けたところは褒めたいです。最後に(7点差以内の負けによる)ボーナスの勝点1を取ることができました」
CTB立川主将は「タフな試合が続いていくので、学びを得て、進んでいくしかない。下を向いている時間はないというのが正直なところ」と殊勝に語った。
スピアーズの次戦は秩父宮での金曜ナイター(3月15日、19時キックオフ)。相手は6勝3敗の横浜キヤノンイーグルスだ。
ヴェルブリッツの次戦の相手も上位陣。3月16日(土)、7勝2敗の東京サントリーサンゴリアスを豊田スタジアム(愛知)で迎え撃つ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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