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ケイレブ・クラーク(ブルーズ)
「横浜キヤノンイーグルスはイノベーティブ、革新的なチームでした」(ブルーズ、バーン・コッターHC)
リーグワン初の国際交流戦「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」で、2月10日(土)、ニュージーランド(NZ)のブルーズと激突したイーグルスは、序盤から“らしさ”全開だった。
ペナルティからの速攻、ラインアウトなどからの複雑なサインプレーの連続で、相手をリアクションに回らせる。
イーグルスは序盤にペナルティを得ると、クイックスタートからSO田村優がオープンスペースへキック。イーグルスの豊富な運動量をベースとした速攻は、終盤まで続いた。
イーグルスは序盤猛攻。
しかしスーパーラグビーパシフィック開幕を目前(2月23日)に控え、アピール機会に燃える若手主体のブルーズは、豊富な活動量で守り続けた。
序盤の猛攻は奏功せず、得点は生まれなかった。
「(ブルーズは)ラインブレイクの後にフィニッシュさせないディフェンスの粘り強さがありました。これがスーパーラグビー(パシフィック)のノーマル。そうした部分のレベルを上げていかないといけない」(イーグルス、沢木敬介監督)
するとブルーズは、スクラムでの優勢から得点機を掴む。
前半12分のスクラムPKからイーグルス陣内に侵入。この日初めて敵陣22mに入ったブルーズは、巧みなショートパスから、NZ代表のWTBケイレブ・クラークが先制トライを奪った。
イーグルスは接点でプライドを示していた。
コーリー・エヴァンズ(ブルーズ)
ただブルーズはスクラム、スキルの正確性で、チャンスを確実にスコアに変えた。
前半25分にはイーグルスが自陣で連携ミス。イーブンボールを捕球したSOスティーブン・ペロフェタが2本目。4分後にはSOペロフェタの移動攻撃からCTBコーリー・エヴァンズが3本目。
さらにブルーズWTBクラークのスーパートライが生まれる。
SOペロフェタがインゴールへクロスキック。ボールを空中で捕球したWTBクラークが、そのままデッド(ボールライン)手前にグラウンディング成功の超絶プレー。4連続トライで26-0と大量リードを奪った。
「(WTBクラークは)今までハードなプレーを積んできました。(2023年W杯後に)リーグラグビー(豪ラビトーズ)でもプレーし、スキルが上がり、脂肪も落ちて良い状態で戻ってきてくれました」(ブルーズ、コッターHC)
イーグルス、待望のトライは前半38分だ。
3本のパスを繋ぎ、2層目のバックラインで勝負。CTB梶村祐介主将の捨て身のオフロードパスから左隅で2対1に。ボールを受けた流通経済大学出身のフィジアンWTBヴィリアメ・タカヤワがタックラーを振り解き、左隅を快走した。
待望の1トライ目。海外トップチームとの実戦で、手応えを掴んだ。
「通用するところもありました。たとえばアタックのボールの動かし方。ラインブレイクも何回か出来ました」(イーグルス、沢木監督)
「アタックでは崩すことが出来ていて、そこは自分達の強みだと再確認できました」(CTB梶村主将)
前半終了前に1トライを取られ、5-31で迎えた後半。
スタートから高精度の波状攻撃をみせたのはブルーズだった。献身的&正確なブレイクダウンワークで16次攻撃を繰り出し、最後はWTBクラークがハットトリック。
確かな実力で押し切り、ビジターチームが36-5とリードを広げた。
イーグルスも直後の前半4分に途中出場のルテル・ラウララがインターセプトから2本目のトライ。相手の不用意なロングパスに反応した。
しかしトライ後のキックオフボール確保に失敗すると、猛攻を受けて後半7分にノーホイッスル・トライを浴びる。後半21分には8本目を奪われ、スコアは12-50と大きく開いた。
この窮地で突破口を開いたのは、イーグルスのタフネスと、途中出場のWTB竹澤正祥だ。
クロスボーダーラグビー2024
【ハイライト動画】横浜キヤノンイーグルス vs. ブルーズ
終盤になってもイーグルスはペナルティから速攻を多用。体力勝負を仕掛けるタフさを示すと、後半32分、SO田村の速攻からFLコーバス・ファンダイクが抜け出す。
エリア左隅で途中出場の竹澤が相手1対1を外で抜き、ゴール前へ。ブルーズも逞しい活動量で4選手が囲み、トライを防ぐ。
ここで途中出場のカート・エクランドがオフサイドでトライを防ぐ。これをみた滑川剛人レフリーがイエローカードを提示。我慢比べに勝ち、終盤での数的優位を引き出した。
さらにCTB梶村主将がゴールラインに迫る。6フェーズ目で一人ずつパスを繋ぎ、ルテル・ラウララがチーム3トライ目。得点機をものにした。
竹澤正祥(横浜キヤノンイーグルス)
「今日は良かったのは竹澤ですね」(沢木監督)
辛口の指揮官も評価した群馬・明和県央高、日本大学出身の元フランカーは、後半39分にはチーム4本目のフィニッシャーとなった。
最終盤に1トライを取られ、最終スコアは22-57となったが、イーグルスのタフネス、プライドは示した。
初開催のクロスボーダーマッチで、若手主体ながら2連勝を飾ったブルーズのコッターHC。試合後にクロスボーダーを「エンジョイした」と語った。
「今日はフィールドポジションなどでプレッシャーを受けましたが、プレッシャーを得点に変えられたことが良かったです」
「今回のクロスボーダーをエンジョイしました。今後は両チーム、順位をつける形にして、そこで優勝をしたい。ぜひ来シーズンからも続けてほしい」
「時期について言うならば、我々はシーズン前かシーズン後がベストです。1試合は日本、もう1試合はニュージーランドなど、交互の開催が良いでしょう」と前向きな提案をした。
敗戦したイーグルスの沢木敬介監督は「現状このくらいのレベルの差はある」と率直に語った。
「でも良い経験になりました。前半、準備したところはまあまあハマりましたが、チャンスを仕留められないところ、そこはやはりスーパーラグビーのレベルが違うところ」
クロスボーダーマッチの今後についての意見を求められると、沢木監督は「僕はそこはコントロールできない」としつつ「ベストな方法を考えてもらってやってほしいと思っている」と付け足した。
「この試合で勝つことの価値を高めることができたら、(来季の)クロスボーダーに入るために今年絶対に4強に入る、という目標にもなってくる。しっかりした仕組みになればもっと発展していくのでは」
「(現状では)リスクもあるし、勝点もつきません。でもやるからには真剣勝負をしたい。そこで得られるものはある。幸い、大きい怪我人も出ませんでした。こういう機会の価値を選手も理解しています。何回も言いますが、良い経験になりました」(沢木監督)
リーグワンで現在4位のイーグルスは次戦、ビッグマッチが待っている。
2月24日(土)に秩父宮ラグビー場で相まみえるのは、6戦全勝で2位の東芝ブレイブルーパス東京だ。
今季新たなディフェンスシステムに取り組んできたイーグルス。CTB梶村主将は「ここ数試合、ディフェンスの我慢強さ、淡泊なところが失点に繋がっている。ここを改善しないとコンタクトエリアでやられてしまう」と課題感を明かし、最後にこう付け加えた。
「今日の強度を基準にしてやっていきたいです」
今回貴重な経験を積んだイーグルスが、クロスボーダーに出場していない昨季5位のブレイブルーパスと、どんな闘いを繰り広げるか。クロスボーダーマッチの価値も見えてきそうな、興味深い「4位×2位」対決だ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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