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試合前、ハカを披露したチーフス
昨季のリーグワンのトップ4と「スーパーラグビー・パシフィック」に参加するニュージーランドの強豪「ギャラガー・チーフス」と「ブルーズ」が対戦する「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」(クロスボーダーラグビー)が、2月3日(土)4日(日)10日(土)の日程で4試合開催された。
10日(土)、東京都・秩父宮ラグビー場では、最後の試合として、昨季リーグワン王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが、スーパーラグビー・パシフィック準優勝のギャラガー・チーフス(以下チーフス)に挑んだ。
現在、リーグワンで3勝3敗と6位につけるスピアーズのフラン・ルディケHC(ヘッドコーチ)は、「キーとなる選手を3人休ませた」と話したものの、それ以外はケガ人を除いてベストメンバーだったという。
日本代表5キャップで、ゲームキャプテンを務めるNO8(ナンバーエイト)ファウルア・マキシ、WTB(ウイング)には日本代表経験のある根塚洸雅、FB(フルバック)にはウェールズ代表95キャップのリアム・ウィリアムズが入った。
トライをあげたWTB根塚洸雅
なお、1月にキャプテンとして帝京大学の大学選手権3連覇に貢献したばかりのHO(フッカー)江良颯(帝京大学4年)が、アーリーエントリー制度でリーグワンに登録され、早くもベンチメンバー入りを果たした。
一方、先週は埼玉パナソニックワイルドナイツに、14-38で敗れて連敗でニュージーランドに帰ることはできないチーフス。
オールブラックス経験のあるSO(スタンドオフ)ジョシュ・イオアネ、CTB(センター)クイン・トゥパエア、昨年のワールドカップでも活躍した代表70キャップのゲームキャプテンCTBアントン・レイナートブラウンが先発。控えにもオールブラックス経験のあるSH(スクラムハーフ)テトイロア・タフリオランギが入った。
世界のラグビーファンも注目した一戦は、今週もチーフスがオリジナルのハカを見せた後、9,439人の観客を集めて午後2:30にキックオフされた。
THE CROSS-BORDER RUGBY 2024
【ハイライト動画】クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. ギャラガー・チーフス|激戦もあと一歩届かず
先制したのはスピアーズだった。ディフェンスで相手のアタックを止めた前半8分、CTBハラトア・ヴァイレアが落ち着いて中央からのPG(ペナルティゴール)を決め、3点を先制する。しかし15分、チーフスもすぐに反撃、連続攻撃を見せて、SOイオアネのオフロードパスを受けたWTBタナ・トゥハカライナが中央にトライを挙げて7-3と逆転する。
25分、オレンジアーミーの声援を受けたスピアーズは、相手のラインアウトをスチールした後に攻撃を仕掛け、SO岸岡智樹のロングパスを受けたWTB根塚がステップでトライを取り切り、8-7と再びリードする。
しかし、チーフスも意地を見せる。スクラムで相手にプレッシャーをかけて反則を誘った後に攻め込み、最後は32分、PR(プロップ)ジャレド・プロフィットが中央にねじ込んでトライ。さらに39分、自陣からボールを継続し、最後はSHコルテズ・ラティマがトライを挙げ、21-8とリードしてハーフタイムを迎えた。
スピアーズでのデビュー戦となった江良颯
後半、スピアーズベンチが動き、HO江良がスピアーズでのデビューを飾る。6分、スピアーズFW(フォワード)は相手ボールのスクラムにプレッシャーをかけて反則を誘う。そして、直後のラインアウトからサインプレーで右に展開し、7分、途中出場のWTB山崎洋之が右隅にトライ。さらに13分にCTBヴァイレアがPGを決めて16-21と5点差とした。
だが、チーフスも負けじと17分、モールからHOブラッドリー・スレーターが左中間にトライを挙げて、12点差に広げる。スピアーズも20分、モールからHO江良が抜け出しゴールラインに迫り、最後は途中出場のPR才田智がピックからトライを挙げて、再び23-28と5点差とした。
2トライを挙げたWTB山崎
24分、チーフスがキックカウンターからボールを継続。途中出場のLO(ロック)ハミルトン・バーが中央にトライを挙げて、再び12点差とした。それでもスピアーズは諦めることなく、36分、ボールを動かして右サイドでCTBルカス・プレトリアス、WTB山崎とつないでトライ。30-35と5点差に追い上げた。
ノーサイド
最後まで攻めの姿勢を貫いたスピアーズだったが、逆転することはできず、ノーサイド。そのままチーフスが勝利を収めた。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)はチーフスのNO8(ナンバーエイト)サイモン・パーカーが選出された。
パーカーは「スピアーズが素晴らしい仕事をしたので、ハードワークしなければならなかった。違う文化を一緒に経験して、シーズンに向けてポジティブなことしかない」と話した。
勝利したチーフスのクレイトン・マクミランHCは、「いろいろ難しいこともあったが、開幕に向けていい準備ができた。今、見られたチーフスと2週間後にクルセイダーズと対戦するチーフスは違うチームになっている。よりいいプレーができていると思う」と自信をのぞかせた。
ゲームキャプテンのCTBレイナートブラウンは「昨季のチャンピオンのスピアーズと対戦できて光栄。素晴らしいチーム、試合だった。ベストな準備ができた」と語気を強めた。
フィジカルでは互角の勝負だったスピアーズ
惜しくも敗れたスピアーズのルディケHCは、「この試合は選手たちを成長させ、ファンを増やすことにつながるので、ポジティブに捉えている。お互いに攻撃マインドを持っていたし、試合自体もいいコンテストができた。若い選手がスタンダップしてくれたし、最後までわからない試合となった」と振り返った。
ゲームキャプテンNO8マキシは「スピアーズは勝つ準備をしてきた。若い選手もたくさんいて、自分たちにはいいチャレンジだった。いい学びもあったので、それをシーズンに活かしてやりたい」と前を向いた。
大学4年生では最速で『リーグワンデビュー』を飾ったHO江良は、「フィジカル、スピード面と、世界クラスの選手がたくさんいる中で、自分のできることをすべてやり切ろうとした40分だった。自分の武器であるスクラムは手応えがあったし、すごく良い経験だった。日本一、勝利に貢献できるように頑張りたい」と初々しく話した。
こうして初の試みとなった「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」が幕を閉じた。チーフスは帰国し、2月23日(金)のスーパーラグビー・パシフィックの開幕に備える。惜しくも敗戦したスピアーズは1週間後の24日(土)、リーグワン第7節の花園近鉄ライナーズ戦に向けて準備を進めていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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