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ワイルドナイツが快勝
昨シーズンのリーグワンのトップ4と「スーパーラグビー・パシフィック」に参加するニュージーランドの強豪「ギャラガー・チーフス」「ブルーズ」が対戦する「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」が、2月3日(土)4日(日)10日(土)で、4試合行われる。
2月4日(日)、埼玉・熊谷ラグビー場では、昨季リーグワン準優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツが、スーパーラグビー・パシフィックで準優勝したギャラガー・チーフス(以下チーフス)を迎えた。
リーグワンでは、ここまで負けなしの6連勝で首位に立っているワイルドナイツ。スーパーラグビーで5度の優勝経験のあるロビー・ディーンズ監督は、FW(フォワード)に日本代表のPR(プロップ)稲垣啓太、キャプテンのHO(フッカー)坂手淳史、南アフリカ代表LO(ロック)ルード・デヤハー、FL(フランカー)には、日本代表の福井翔大と元チーフスのラクラン・ボーシェー、NO8(ナンバーエイト)に日本代表のジャック・コーネルセンを先発させた。
BK(バックス)も、日本代表SO(スタンドオフ)松田力也、CTB(センター)には南アフリカ代表のダミアン・デアレンデと、日本代表ディラン・ライリーの強力コンビ。WTB(ウイング)にオーストラリア代表のマリカ・コロインベテ、日本代表の長田智希と代表を揃え、現在のベストメンバーを選んだ。
両チームのメンバー
一方、チーフスのクレイトン・マクミランHCは、昨季、ワールドカップに出場した選手は、プレシーズンマッチはトータルで40分しか出場できないというニュージーランド協会の規定などで、オールブラックスの多くのメンバーは欠場した。
LOには、浦安D-Rocksでもプレーしたジミー・トゥポウとナイトア・アクオイ。FLはワイルドナイツのFLラクランの弟で、ゲームキャプテンを務めるケイラム・ボーシェーと、オールブラックスキャップを持つサミペニ・フィナウ。また、ニュージーランド代表経験のあるSOジョシュ・イオアネ、オールブラックスで9キャップのCTBクイン・トゥパエアらを起用した。
THE CROSS-BORDER RUGBY 2024
【ハイライト動画】埼玉ワイルドナイツ vs. ギャラガー・チーフス|リーグワンとスーパーラグビーの強豪が激突
チーフスのハカ
試合前に「大事な試合の機会しかやらない。今回はワイルドナイツとファンの前で試合をするという貴重な機会だった」(マクミランHC)と、チースフが独自のハカを披露した後、7561人の観客が見守る中、試合は午後2:30にキックオフされた。
序盤、チーフスはフィジカルとスピードを武器に攻撃を仕掛け、主導権を握ろうとするが、ワイルドナイツも持ち前のディフェンスを武器にゴールラインを割らせかった。「ワイルドナイツらしいラグビーを、最初の10分でフィジカル、正確性を出していこうとした」(HO坂手キャプテン)。
その言葉通り、ワイルドナイツは元チーフスのFLボーシェがジャッカルを見せるなど、相手に得点を許さず徐々にペースを掴む。そして前半15分、モールを押し込み、最後はキャプテンHO坂手が左中間にトライ、SO松田がゴールを決めて7点を先制する。
さらに22分、自陣で相手ボールをWTBコロインベテが奪い取った後、FB野口竜司が相手陣にキックし、コロインベテがタックルでプレッシャーをかけて、最後はインゴールにあったボールを、SH(スクラムハーフ)小山大輝が押さえてトライ。14-0とリードした。
その後は互いに得点を上げることができず、そのままワイルドナイツがリードして前半を折り返した。後半、拮抗した状態から、先に得点を上げたのはホストのワイルドナイツだった。後半11分、中央のPG(ペナルティゴール)をSO松田が決めて17-0とリードを広げた。
12分、チーフスが反撃。ラックからこぼれたボールを松田がキックしたが、そのボールがチーフスのSOイオアネに入り、そのままトライとなり、10点差に追い上げた。だが18分、チーフスの途中交代で入ったPRルーベン・オニールがラックで危険なプレーをして、シンビン(10分間の途中退場)となる。
数的有利となったワイルドナイツは、その隙を見逃さず、18分、ボールを大きく動かし、最後はWTBコロインベテが右中間にトライを挙げて24-7。34分にもFLボーシェが抜け出し、最後はフォローした途中出場のLOマーク・アボットがトライし31-7として勝負を決めた。
チーフスも40分にPRエイデン・ロスが意地のトライを返したが、ロスタイムにワイルドナイツは途中出場のFB(フルバック)山沢京平が、インターセプトからトライを挙げてノーサイド。5トライを重ねたワイルドナイツが38-14で快勝した。
POMのラクラン・ボーシェー(ワイルドナイツ)
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、古巣との対戦でジャッカル、ランと出色の出来を見せたワイルドナイツのFLラクラン・ボーシェーが選出。「(母国)ニュージーランドのチームと対戦するのは初めてで、両チームともハードに戦ったし、いい戦いだったと思う。これからタフな試合が続くから、準備しておきたい」
チーフスのマクミランHCは「(ワイルドナイツでは)特定の選手ではなく、全体として質の高いチームだった。スーパーラグビーでも結果を残せるようなチームだと思った。(ラクラン・ボーシェーに関して)彼は素晴らしいプレーをした。POMにふさわしい活躍だった。彼は、ニュージーランドから決して失いたくなかったほど質の高い選手だが、彼がこちらに来て成長し、活躍しているのを見られてうれしかった」と話した。
ゲームキャプテンFLケイラム・ボーシェー(チーフス)
ゲームキャプテンのFLケイラム・ボーシェーは「日本に来るのは初めてで、ワクワクしていた。ワイルドナイツは本当に良いプレーをして、さすがリーグワンのトップのチームだと思った。小さい頃はいつも(5歳上の)兄(ラクラン)と裏庭で一緒にプレーしていたが、初めて対戦し、これっきりの対戦かもしれないし、エキサイティングな時間だった」と振り返った。
一方、日本ラグビー、そしてワイルドナイツの強さを披露したディーンズ監督は「決まった以上は、そこに意味を見出さなければならなかった。選手たちは誇りを持ってプレーし、目的を持ってプレーしていた」。
「リーグ戦の最中に、あまり意味のない試合をするのは簡単なことではない。勝ち点もない。選手たちにとっては失うものも多い。今日はエセイ(・ハアンガナ)をケガで失ってしまった。だから精神的には楽じゃない。もし、これが大会の一部であれば、もっと価値があるだろうが、そうではない」。
「しかし、私はチームの戦いぶりをリスペクトしている。私が毎回そうであったように、彼らもジャージーを背負っていることに誇りを持っていた。(対戦した)チーフスにとっては、素晴らしい準備になっただろう。私の古巣(のクルセイダーズ)と対戦するのは3週間後だと思うので、チーフスにとってはいい準備になったでしょう」と総括した。
トライを挙げたキャプテンHO坂手は「ハカが終わった瞬間にスイッチを入れるということを言っていたので、いいマインドでゲームに臨めた。正直、このゲームは公式戦でないので難しかった。しかし今週、自分たちのスタンダードを示すチャンスだということをテーマにして、そこは良かった」。
「タフなメンタルを持ってやれたこのチームをすごく誇りに思うし、今週いいメンタルで乗り越えられたことが、一番財産になり、勝つことができたのはチームとしてすごく成長を感じる」と胸を張った。
黒星スタートとなったチーフスは「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」の2試合目として2月10日(土)に、東京・秩父宮ラグビー場で、昨季のリーグワン王者であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイと激突する。
一方、ワイルドナイツはリーグワンが再開する2月17日(土)に、熊谷ラグビー場で3位の東京サントリーサンゴリアスを迎える。
文:斉藤健仁/Photo by Yuuri Tanimoto
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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