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【ハイライト動画あり】大逆転で1点差決着!「リコーブラックラムズ東京×クボタスピアーズ船橋・東京ベイ」。ジャパンラグビーリーグワン2023-24第6節交流戦
ラグビーレポート by 多羅 正崇根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
最後に待っていたのはどんでん返し。敗戦チームの指揮官は試合後に「残り5秒で勝利を掴みきれませんでした」と言った。
1月27日(土)の東京・駒沢。10位(1勝4敗)ブラックラムズは、昨季優勝の7位(2勝3敗)のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに対し、好スタートを切った。
スクラムは開始1分のファーストから互角模様。相手が成功率で優位のラインアウトにおいても、ブラックラムズはFLブロディ・マクカランがカットするなど攻防で魅せた。
すると前半11分だった。
相手ショートパントを確保したブラックラムズのWTBシオペ・タヴォ。この逆襲から、今季初10番のエースアタッカー、SOアイザック・ルーカスが流石のラインブレイク。
武井日向(ブラックラムズ東京)
さらに第2節以来カムバックのHO武井日向主将がゲインを取ると、最後はWTBシオペ・タヴォが右隅にダイブ。ホストファンに先制トライを贈った。
泥臭い堅守も武器であるブラックラムズは、その後もCTB池田悠希のセービングなどで失点を防ぐ。しかし前半19分だった。
スピアーズは自慢のFWによる敵陣ラインアウトモールを防がれた。それでもゴール前左隅から4本の長短パスを繋ぎ、右大外のWTB根塚洸雅がフィニッシュ。同点(5-5)に追いついた。
しかしブラックラムズが会心の波状攻撃をみせる。
前半21分に相手10番立川理道キャプテンのイグジット(自陣脱出)キックを確保。ここから怒濤の17次攻撃。
FBマット・マッガーンをファースト・レシーバーにしながら、HO武井主将、LOアマト・ファカタヴァ、NO8ネイサン・ヒューズら好キャリアーでくさびを打ち込む。
最後はWTBネタニ・ヴァカヤリアが相手9番とのミスマッチを制し、勝ち越しトライ。キックは不成功も10-5。そのまま5点リードで試合を折り返した。
ブラックラムズは後半も執念のディフェンスで失点を防いだ。
後半11分には相手パスミスからの混戦で、SH高橋敏也が好タックル。バックスが中心となってターンオーバーを起こした。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1
【第6節ハイライト動画】 ブラックラムズ東京 vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ところが潮目の変化がふいに訪れる。
後半23分のスピアーズ陣内スクラムだった。それまで拮抗関係にみえたが、ここでブラックラムズがペナルティ。ブラックラムズのHO武井主将は試合後、スクラム戦について手応えと課題の両方を語った。
「スクラムは安定したボールをバックスに出せたと思います。ただチャンスやピンチの場面で無理にいってしまったので、その部分はもう少し詰めていきます」(ブラックラムズ、HO武井主将)
無理にいったことが祟ったか、痛恨のペナルティ。
岸岡智樹(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
ここでスピアーズはSO立川主将との交替(HIA)により、後半13分から途中出場していた背番号21が魅せた。「怪我人が多い」「大学で9番をやっていた」(スピアーズ、フラン・ルディケHC)という理由からSH起用も想定されていたリザーブ出場の岸岡智樹だ。
早稲田大学時代に日本一も経験しているSO岸岡は、ペナルティを得ると、自陣から敵陣22mまで運ぶ特大タッチキック。強力FWをゴール前まで運んでみせる。
直後のモールは防がれたものの、バックス勝負でふたたびWTB根塚がフィニッシュ。逆転のコンバージョンも成功して12-10。ついに勝ち越した。
ブラックラムズはさらに後半34分のショット成功で5点ビハインドとなり、いよいよ窮地に。
ここでブラックラムズの背番号21も存在感発揮。途中出場の南昂伸が敵陣侵入のビッグゲイン。さらに相手反則からラインアウトモールの得点機を迎える。
時間は78分40秒。
ホストファンの大声援を受け、黒衣軍団がモールを押し込んでいく。ここでスピアーズは背番号5のデーヴィッド・ブルブリングがモール・コラプシング。
平川哲也レフリーはLOブルブリングにシンビンを言い渡すと、踵を返し、Hポール下へ向かった。ペナルティトライ(7点)だ。ブラックラムズがついに最終盤で逆転に成功した。
そしてリスタートのキックオフ。
スピアーズは獲得を狙ったものの、確保したのはブラックラムズ。あとはボールキープ後にタッチに蹴り出すだけ。残り5秒。背番号21が80分出場のHO武井主将にボールを託す。
が、直後のラックで、スピアーズがここでまさかのジャッカル成功。
スコアは2点差(15-17)。スピアーズはショットを選択。決まれば3点追加で逆転サヨナラだ。
ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
場を託されたFBゲラード・ファンデンヒーファーが、落ち着いた表情のまま右足を振り抜く。放物線はHポールを射貫いた。18-17。逆転サヨナラPGが決まり、激戦はまさかの結末でフルタイムを迎えた。
この日一番悔しかったのは、泥臭くハードワークしたブラックラムズの選手たちだろう。
アップセットによる今季2勝目を逃したブラックラムズのヒューワットHC。
「クリアなプランをもって挑みましたが、残り5秒で勝利をつかみ切れませんでした。そこまでしっかりとやり遂げてくれた選手たちを本当に誇りに思います」とプレイヤーを讃えた。
国代表経験者が少ないメンバー構成ながら、一体感とハードワークで格上相手にいつも接戦を演じるブラックラムズ。課題はその先にある勝利の掴み方だろう。
「『接戦が多い』ということは、ビッグゲームを最後にどう締めるのかという経験も必要になります。経験はスイッチを押したら増えるものではありません。時には痛い思いをしながら学んでいく必要もあると思います」(ブラックラムズ、ヒューワットHC)
HO武井主将も「成長しなければいけないポイントだと思うので、接戦をモノにするチームにしていきたいと思います」と課題感は同じだった。
そして大逆転で勝敗を3勝3敗としたスピアーズのルディケHC。
連勝ができた理由については「特に直近の2週間で、パフォーマンスの一貫性が良くなった事」と語った。
「具体的には規律面の改善がひとつ。ペナルティを含め、ベーシックな部分、細かい部分を微調整できました。信頼する力、信じる力によってモメンタムも生まれたと思っています」
勝敗はV字回復してきたスピアーズ。
リーグワンの次戦は約1カ月後の6敗(11位)花園近鉄ライナーズ戦だが、その2週間前の「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」で、昨季スーパーラグビー・パシフィックでプレーオフ準優勝のチーフスと、2月10日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で対戦する。
ルディケHCはチーフス戦の出場メンバーを「若手中心」としながらも「良い機会。カギとなる先発メンバーを出しつつ、若手を使い、ベストメンバーで挑みたいと思っています」と意欲的だった。
1勝5敗で10位のままのブラックラムズ。次戦は、一か月後の2月25日(日)。3勝目を挙げたコベルコ神戸スティーラーズを、本拠地の東京・駒沢で迎え撃つ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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