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復帰戦で存在感を示したスティーラーズFB山中
ジャパンラグビーリーグワンは、1月20日(土)と27日(土)の2週に渡り、ディビジョン1の第6節が開催された。27日(土)、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場では、横浜キヤノンイーグルスが、コベルコ神戸スティーラーズを迎えての交流戦が行われ、港町を本拠地とする「港町ダービー」となった。
2年連続のプレーオフ、そして初の決勝進出を狙うイーグルスは、前節のリコーブラックラムズ東京戦で、24-8と勝利。4勝1敗の勝ち点17で4位につけていた。だが、昨年のワールドカップ優勝メンバーのSH(スクラムハーフ)ファフ・デクラークと、CTB(センター)ジェシー・クリエルの南アフリカ代表2人がケガのため今節から欠場となった。
沢木敬介監督は、FW(フォワード)第1列をブラックラムズ戦から全て入れ替え、PR(プロップ)岡部崇人、東京サントリーサンゴリアスから移籍したPR祝原涼介、HO(フッカー)中村駿太の3人が先発となった。また、SH荒井康植が今季初出場・初先発となるなど、FW(フォワード)4名、BK(バックス)3名の先発を変更した。
両チームのメンバー
対するスティーラーズは開幕2連勝を飾ったが、そこから黒星が続き、前節は昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに34-38と惜敗。3連敗と苦しい状況が続いていた。
デイブ・レニーHC(ヘッドコーチ)は、前節からFW1名、BK4名を入れ替え、CTB(センター)は元ニュージーランド代表のナニ・ラウマペがリザーブに回り、マイケル・リトルが先発、日本代表FB(フルバック)山中亮平が第3節以来の復帰となった。
1万人を超えるファンが集った
イーグルスがホストゲームで勝利し、勝ち点を伸ばすか。スティーラーズが連敗を脱出するか。1万161人の観客が集まる中、スティーラーズボールで午後2:10にキックオフされた。
試合は序盤からイーグルスがボールを継続して優位に試合を進める。前半5分、正面のPG(ペナルティゴール)は、SO(スタンドオフ)田村優がポストに当てて得点にはならなかったが、相手陣でのプレーが続く。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1
【ハイライト動画】第6節 横浜キヤノンイーグルス vs. コベルコ神戸スティーラーズ|神戸が終盤に逆転勝利
スティーラーズのPR中島イシレリがゴール前でノット10mバックの反則でシンビン(10分間の退場)となった直後の17分、イーグルスはスクラムを選択して押し込み、そのままNO8(ナンバーエイト)アマナキ・レレイマフィが左中間にトライを挙げ、SO田村ゴールも決まり7点を先制する。
前半終了間際にDGを決めるイーグルスSO田村
その後もイーグルスが攻めて、スティーラーズがゴールラインを背負う時間帯が続くが、スコアボードは動かない。前半終了間際には、イーグルスのSO田村がゴール正面からDG(ドロップゴール)を決めて、10-0とリードを広げて前半を折り返した。
後半から出場し勝利に貢献したスティーラーズSH日和佐
共同キャプテンのLO(ロック)ブロディ・レタリックが、「前半は22%しか、ボールポゼッションがなく難しかった」と話したスティーラーズは、後半最初から元日本代表のSH日和佐篤、LOワイサケ・ララトゥプア(東海大学出身)を投入。ボールをしっかりキープしてアタックを継続し、巻き返しを図る。
後半9分、スティーラーズはキックカウンターから相手陣でフェイズを重ね、SOブリン・ガットランドがパスダミーから抜け出して中央にトライ。自身でゴールも決めて3点差に追い上げる。
イーグルスも14分にSO田村の45mのロングPGで、再び6点差に広げる。しかし、17分にスティーラーズがクイックスローから連続攻撃を仕掛け、再びSOガットランドが、巧みなステップから相手の間を抜けて中央にトライ。ゴールも決めて14-13と逆転に成功する。
トライを挙げたイーグルスNO8ハラシリ
それでもホストのイーグルスはすぐに反撃し、22分には敵陣でアタックを続けてLOマックス・ダグラスがトライを挙げ、20-14と再逆転。さらに24分、ラインアウトから攻め続けたイーグルスは、途中出場のNO8シオネ・ハラシリがパスダミーから抜け出してトライ。27-14と再び13点差に広げた。
残り10分、モールで2トライのスティーラーズ
それでも諦めないスティーラーズは、30分にラインアウトから15mほどモールを押し込み、最後はSH日和佐が右隅にグラウディング、36分にもラインアウトのチャンスを得ると、モールから途中出場のHO北出卓也がトライを挙げて、28-27とスコアをもう一度ひっくり返した。
POMのスティーラーズSOガットランド
さらにスティーラーズは、試合終了間際にSOガットランドがPGを決めて、31-27で逆転勝利を収め、連敗を3で止めた。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、後半だけで21点を挙げたSOガットランドが選出された。
ガットランドは「POMを勝ち取れたことは誇らしいし、うれしい。後半は修正すべきことは修正し、手にしたボールを大事にして取り切ることで最終的に勝利できた。ボールさばきやキックとゲームの組み立てをするタイプの10番と思われているので、裏をかくではないが、自分がチャレンジすることで意表をつけると思って、スペースを突いたらトライを取れた」と破顔した。
2024年初勝利のスティーラーズ
3勝3敗と星を五分に戻し、勝ち点15で順位を7位に上げたスティーラーズのマイク・ブレア アタックコーチは「苦しんで勝った勝利。相手が後半2トライを取った後、追いかける展開になったが、自分たちのキャラクターを見せて、道を見つけることができたことが大きかった。プレッシャーの中で判断も良かった」と選手たちを称えた。
スティーラーズのブレア コーチ(右)とレタリック主将
共同キャプテンのLOレタリックは「久しぶりに勝利できてうれしい。前半、自分たちは全くボールを持つ時間もなく、セットプレーも思い通りにできず機能しなかったが、後半は真逆になった」。
「BK(バックス)がリードして、戦うべきエリアで戦って、SOガットランドが2トライを取ってくれて、モメンタムを取り戻した。クロスボーダーラグビーがあり、3週間試合がないので、もう一度リフレッシュして後半戦に臨みたい」と先を見据えた。
イーグルスの沢木監督(左)と梶村主将
今季初めてホストゲームで敗戦したが、7点差以内の敗戦で勝ち点1を得て総勝ち点を18とし、4位をキープしたイーグルスの沢木監督は「ロッカーで『内容は良かった』くらいの話をしたら(田村)優にもっと厳しくしろと怒られた。それだけ選手たちが勝ちたかったのが出ていたし、選手からそういう話が出るのはポジティブだと思う」。
「負けたのは悔しいが、ネガティブになる必要はなく、逆にオールブラックスが3人いるチームに、今日出た選手たちが自信の持てる内容だった。だが、ターゲットに対して、我々の基準を落としたらだめだと思う。レベルアップできるようにいい準備をしていきたい」と前を向いた。
キャプテンのCTB梶村祐介は「後半、ブレイクダウンで規律が乱れている感覚があった。最後の2本もブレイクダウンの反則が続いて自陣に入られてしまった。形としては悪くないが、こういうゲームを勝ちきる力がまだまだ足りていないし、それを改善するのはトレーニングの質だと思うので、もう一度やっていきたい」と振り返った。
スティーラーズは休みを挟んで、次節は2月25日(日)に東京・駒沢オリンピック公園総合運動陸上競技場で、10位のリコーブラックラムズ東京と対戦する。
一方のイーグルスは2月10日(土)に神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でニュージーランドの強豪ブルーズと、『クロスボーダーラグビー』を戦った後、24日(土)に東京・秩父宮ラグビー場で、ここまで開幕から6戦全勝で2位の東芝ブレイブルーパス東京と激突する。
沢木監督は「クロスボーダーラグビーはケガ人が出て、メンバーを選んでいる状態ではないから、28人を使いながら、そういう経験が必要な若い選手もいるので、東芝に向けて弾みのつくような試合をしたい」と意気込んだ。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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