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エディ・ジョーンズHC
1月15日(月)、東京都内でラグビー日本代表の指揮官に就任したエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)による、日本代表強化プランに関するメディアブリーフィングが行われた。ジョーンズHCは「まだ就任してから14日しか経っていない(笑)」と言いつつも1時間に渡り、熱弁を振るった。
ジョーンズHCは、まずチーム・コンセプトに関して触れて、就任会見でも強調した『超速ラグビー』(核となる日本ラグビーのアイデンティティー)と改めて強調しつつ、20分ほどのプレゼンテーションを行った。
パソコンでスライドを出しながら
【1】わかるようなプレースタイル(勢い=質量×速度)
【2】速度をどう向上させるか(トレーニング)
【3】限界はない!(世界ランク12位からどこまで上がれるか)
について説明していった。
ジョーンズHCは冒頭「日本は12位だが、どれだけ私たちができるかはわからない。できるだけ上に到達したい。でも、ギャップがある。前の8年で日本代表はトップ10とのテストマッチでは7%しか勝ててない。トップ8のチームは60%勝っている。トップ4は75%くらい勝っている」。
「まず、ジェイミー・ジョセフ、トニー・ブラウン、長谷川慎さんが日本代表にやってきたことを、やり続けて強くならないといけない。それを土台として進化しないといけない。また、違うアプローチも図らないといけない。そのアプローチの話、全体像の話をさせていただきたい」。
「チーム・コンセプトは『超速ラグビー』で、日本のラグビーの核となるアイデンティティー。南アフリカは必ずフィジカルで、30回キックを蹴ってくる。ニュージーランドは最もカウンターアタックが得意なチーム。そこで、最も速くプレーするのが日本代表、という風に変えていきたい。動きだけでなく、考えるスピードも上げていかないといけない」。
「リーグワンでベストな3人はFB(フルバック)チェスリン・コルビ(東京サンゴリアス)、SO(スタンドオフ)リッチー・モウンガ(ブレイブルーパス東京)、NO8(ナンバーエイト)クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)で、その3人は日本人の身体付きに似ている。強度が高く、スピーディーに動くことができ、速く決断できる。1歩前に進んだ状態でプレーしていきたい」。
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「ラグビーの試合は平均30秒のボールインプレーがあり、プレーしていない時間が70秒。今、(アメリカンフットボールのような)NFLのような試合になっていて小さく切り取ったプレーで、休憩が長い。反復できるかにかかっている。ボールインプレーの30秒の中で、スピーディーに動いていきたい」と話した。
続いて、どうしたら勢い(モメンタム)を生むことができるか。それについてジョーンズHCは、「ラグビーの試合は勢いにかかっている。ニュートンの第2の法則は『勢い=質量×速度』。身体の大きさを変えることはできない」。
「日本人の選手は小さい。もっと大きくすることはできるが、それでも世界と比較すると小さい方になる。変えられるところは速度。より速く動くことが可能だと思う。速く動けるようにトレーニングをしていく。速度と質量を変えていきたい」と語った。
そして、最も時間を割いたのは、実際に、どうやって速度をどう向上させていくかというトレーニング方法に関しての話だった。
*****
※【2】速度をどう向上させるか についてのトレーニングは下記の通り
A.ダイナミック・システム
・個人の速度を上げるアプローチ
B.チーム・トレーニング
・具体的に実施:スピードの緩急を反復
C.速くて高い姿勢から低い動き(さらに回転動作の強さ)
D.集団としての意思決定の速さを向上
・明確な試合戦略
・セレクションの一貫性
・チームメイトの知識
・特定のトレーニング(シナリオ別)
・目を使うスキルを強化
*****
「1人ひとりが速度を上げることをしていかないといけない。プレーの時間は30秒なので、そのスピードで練習をやっていかないといけない。2015年に一番労力をかけてやったのはフィットネスだが、今のフィットネスは、スピードを反復できるかどうか」。
「また、世界で一番高い姿勢から低い姿勢にいく動作が速いチームにならないといけない。同じスピードで走った場合、体重が重い方が勝つが、高い姿勢から低い姿勢になるスピードで、コンタクトに勝つことができる。スピードで走り回るだけでなく、高い姿勢から低い姿勢になるスピードも必要」。
プランを発表するジョーンズHC
「チームとしての決断の速さも改善していかないといけない。戦術も明確にしていかないといけない。何かをしないと考えなくなればなるほど、速く決断できるようになる。セレクションも一貫性をもたないといけない。そしてチームメイト同士がお互いのところもよく知らないといけない」。
また、「私の仕事で一番、チャレンジング」と話したのはセレクションだった。「2023ワールドカップで、日本代表は年齢的に、平均年齢の高いチームの1つだった。いい若い選手を見つけて、改善できる、向上できるシニア選手を同時に維持しつつ、一貫性をもったチームを作り上げないといけない」と話した。
そして、最後にジョーンズHCは、「それが全部できれば限界はない!」という言葉を強調しつつ、「日本の女子バスケットボールも12位から2位になった。サッカーのスペイン代表も、身体が小さいチームにもかかわらず優勝できた」。
「ボールを速く動かして、スピードを通して上回って信じてやったから優勝できた。(バスケットボールの)NBAゴールデンスステート・ウォリアーズは『スモールゲーム』で、相手より速く動いてプレーをして(2015年以降)4回優勝した。だから体重の重い選手をセレクションしなかった。
日本代表がどこまでいけるかわからない。ラグビーなのでフィジカルな選手は必要になってくるが、強い日本のアイデンティティーを発掘しないといけない。手と足を使って速く動いて、目を通して世界のどこよりも速く動くということをやり、速く走るという痛みを楽しみながらやれるチームに変革していく」と語気を強めた。
『超速ラグビー』は毎回やるというわけではなく、あくまでも「どうやって世界とのギャップを縮めていくのか、世界一、得意にできるか部分はどこか」と考えたときに出てきた概念だという。
最後にジョーンズHCは「世界のどのチームと比べても、この分野では長けている分野を作っていかないといけない。ファンもそれが見たいと思っているし、日本代表が世界を相手に戦って、ワクワクさせてほしいと思っていると思うので、まさしく、そのようなチームを作り上げたい」と意気込んだ。
近々、トレーニングスコッドを集めたミニキャンプの実施を検討しているが、本格稼働は6月初旬を予定だという。「高校、大学、リーグワンで、コーチングでできないことをやっている選手は誰かと、その観点で見ている。ゲームの感覚、センスがある選手ということ。そして、成長したい、もっと良くなりたいと思っている選手を見つけたい」。
「どの世代のチームも、日本代表でやりたいようなプレーができるような選手を選んでいく。明確な哲学、考え、概念やプレースタイルを統一したい」というジョーンズHCは、高校日本代表の高橋智也監督、U20日本代表の大久保直弥監督とはコミニケーションを取っており、高校生や大学生の指導にもあたる予定だ。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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