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「攻撃力増大のコベルコ神戸スティーラーズ」×「正念場のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ」。NTTジャパンラグビーリーグワン2023-24第5節
ラグビーレポート by 多羅 正崇コベルコ神戸スティーラーズ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
コベルコ神戸スティーラーズの好転は明らかだ。
特に攻撃力の増大は顕著だろう。
第4節の相手だった東京SGの田中澄憲監督は、8点差(44-36)で勝ちきった試合後、スティーラーズへの警戒感を明かした。
「昔からアタッキングマインドが強いチームですが、今季はアーディ・サべアやブロディ・レタリックが加わり、彼らを(スタンドオフの)ブリン・ガットランドが上手くコントロールすることで、さらにアタックの脅威が増していると思います」
スティーラーズはデイブ・レニー新HCの下、強化したフィットネスを土台として、自陣からも積極展開する。
アタックは効果的。OPTAによるとディビジョン1(D1)でボールキャリーの60%以上がゲインラインを越えている唯一のチーム(62.1%)だ。第4節終了時点の185得点はD1で2位となっている。
新体制1季目で明るい兆しがみえる、そんなスティーラーズは1月14日(日)、地元神戸で、1勝3敗(9位)のクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎え撃つ。
昨季チーム初優勝を遂げたディフェンディング・チャンピオンは、開幕4試合で3敗と苦しんでいる。
要因の一つは怪我人の続出だろう。開幕前にW杯で負傷した南アフリカ代表HOマルコム・マークスのシーズン離脱が決まり、同じく昨季主力のSH谷口和洋も負傷。
開幕後ではロスタイム逆転負けを喫した静岡BR戦でSOバーナード・フォーリーも負傷。翌節(第4節)では元スタンドオフのCTB立川理道主将が10番をつけたが、BL東京に競り負け、2試合連続の4点差惜敗を喫した。
20-24で今季3敗目を味わったBL東京戦後、スピアーズのSO立川理道主将は「正直、苦しいシーズンになっている」と話した。
その上で「その先にある勝利や、小さな喜びを見つけていきながら、最終的に勝てれば良いのかなと思います」と語った。
「苦しくないと勝てないと思うので、苦しみをしっかりみんなで味わいながら、最後には勝ちたいと思っています」(スピアーズ、SO立川主将)
次期日本代表HC候補にも手を挙げたスピアーズのフラン・ルディケHCも「立川キャプテンが言ったように、プロセス、選手を信頼して、どう立て直すかを楽しみにやっていきたいと思います」と前向き。
苦境からの脱却を楽しみ、さらなる成長の糧にする。指揮官と主将共に、苦しみにポジティブな価値を見出している姿が印象的だった。
ビジターとして敵地・ノエビアスタジアム神戸に乗り込むメンバーが発表されており、先発15人は前節から変更はない。
司令塔は2試合連続で立川主将が担い、天理大学後輩のSH藤原忍と10歳差ハーフ団を組む。
他国代表歴のあるカテゴリC、新加入のHOデイン・コールズ(NZ代表)とFBリアム・ウィリアムズ(ウェールズ代表)も揃ってスタメン。唯一のメンバー変更はリザーブの根塚洸雅だ。
地元神戸で迎撃するスティーラーズも前節からスタメン変更なし。
LOブロディ・レタリック共同主将とFLアーディー・サベアのNZ代表コンビは今節も登場。サベア以外の若手バックロー、FLサウマキ アマナキ(26歳)とNO8ティエナン・コストリー(23歳)は堂々たる主力だ。
ラン能力もあるSH中嶋大希とコンビを組むのは、抜群の安定感で戦術遂行に寄与しているSOブリン・ガットランド。
両ウイングは先週からサイドの入れ替わった濱野隼大(11番)と共同主将の山下楽平(14番)。ポジション最後方はゲインメーター422mがD1単独2位のFB松永貫汰。リザーブの変更は38歳山下裕史とラファエレ ティモシーだ。
スティーラーズのレニーHCは、志向するスタイルを「観ている人がエキサイティングできるようなボールを展開するラグビー」と断言する。
その上の課題感は「ボールを展開していく上での精度」だ。攻勢時のアタック遂行力は長らくチームの課題。魅力的な展開ラグビーを継続できるか、その精度に注目したい。
一方でスピアーズの課題の一つは「ブレイクダウン周辺の判断」(スピアーズ、ルディケHC)だ。
開幕節の東京SG戦で52失点したディフェンスに関しては改善傾向。第4節のBL東京戦においても「モールディフェンスや前半ゴール前のディフェンスも良かった」(SO立川主将)。
スティーラーズはボールを大きく動かしてくる。スピアーズは堅守からミスを誘い、主導権を握りたい。
ラインアウトは今季も成功率91%と安定(スティーラーズは83%)しており堅固なプラットフォームはある。的確なエリアマネジメントで大型FWを前に出し、敵陣で効果的に圧力をかけられるか。
スティーラーズはスピアーズ相手にリーグ3連敗中。昨季王者の撃破となれば大きな転換点になりうる。熱闘は日曜日の午後2時30分にキックオフを迎える。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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