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ラグビー コラム 2023年12月29日

桐蔭学園、2年ぶりに戻ってきた「東の横綱」が春に続いて日本一に挑む。全国高校ラグビー大会 注目校紹介

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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春の王者で優勝候補の桐蔭学園

12月27日から大阪・東大阪市花園ラグビー場で始まった「花園」こと、全国高校ラグビー大会。30日(土)の2回戦から登場するシード校の中から注目校を紹介していきたい。

今大会の優勝候補はAシード3校で、連覇を狙う東福岡(福岡)、夏の7人制で初の日本一に輝いた佐賀工業(佐賀)、そして、春の選抜で圧倒的な力を見せて優勝し、4度目の優勝を狙う「東の横綱」桐蔭学園(神奈川)だ。

FB(フルバック)松島幸太朗、SH(スクラムハーフ)齋藤直人(東京サンゴリアス)ら、日本代表を多く輩出している桐蔭学園。2019、2020年度と花園を連覇しているが、昨季はSO(スタンドオフ)矢崎由高(早稲田大学1年)、キャプテンWTB松田怜大(慶應義塾大学1年)らがいたにも関わらず、神奈川県の予選決勝で東海大相模に13-14で敗れて悔し涙を呑んだ。

そのため例年より1ヶ月ほど早く、昨年12月に新チームが始動した。チームのターゲットは11月19日の花園予選決勝だった。昨季の予選決勝でPG(ペナルティゴール)を狙うべきところで狙わず、準備していた通りのプランで試合が「徹底」できなかった反省から、今季のスローガンは「徹」を掲げた。出場できなかった昨年末の花園へ『見学』にも訪れた。

笑顔で選手たちに話しかける藤原監督

また、今年1月からコロナ禍が緩和したことから、ラグビーや柔道、野球、サッカーなど強化指定の部活動のみ、平日2時間だった練習が、2時間半できるようになった。「練習時間が30分伸びたことが大きい。やっと、桐蔭学園らしい(細部にこだわった)練習ができるようになった」と、大東文化一高では選手として1度、指導者としては、3度花園を制している藤原秀之監督(55歳)は目を細めた。

今季のチームの特徴はSO伊藤大祐(早稲田大学4年)、NO8佐藤健次(早稲田大学3年)など、絶対的なスターがいたチームとは異なり、スターはいないが、どのポジションにも能力の高い選手が揃うところだ。

その中でも、PR(プロップ)井吹勇吾、前田麟太朗、HO(フッカー)田中健心(いずれも3年)と高校日本代表が並ぶFW(フォワード)の第1列は強力で、ボールを持った時の推進力はもちろん、スクラム、モールは大きな武器となっている。

桐蔭学園の生命線である接点の練習

「(春まで)戦術や細かいところはやっていない。パス、キャッチ、そしてつなぐところしかやっていない」と指揮官は話していたが、関東新人を圧倒的な強さで優勝。キャプテンのNO8(ナンバーエイト)城央祐、快足も武器のLO(ロック)中森真翔(ともに3年)、タックラーのFL(フランカー)申驥世(2年)らも躍動し、春の選抜大会でもFWの力強さを武器に、他を寄せ付けず、4大会ぶり4度目となる春の王者へと駆け上がった。

6月の関東大会では、やや調子を落としたものの、それでもAブロックで優勝。夏合宿では東福岡、東海大大阪仰星などの強豪と戦いつつ、オフロードパスやFW、BK(バックス)一体となって継続する、桐蔭学園伝統の「つなぐラグビー」の精度も高めていった。

そして11月19日、今年も花園予選の決勝を迎えた。昨季の悔しさを前面に出して、狙うところはしっかり、FB吉田晃己(3年)が4PGを決めつつ、7トライを挙げて東海大相模を圧倒し59-0で勝利、2大会ぶり21回目の花園出場を決めた。「FW、接点で勝てるのでシンプルにやった」と監督の言うとおり、決勝戦らしく負けないラグビーに徹し、神奈川王者の座を奪い返したというわけだ。

副将のCTB白井。兄が以前所属したジュビロの練習着でトレーニング

今季の桐蔭学園は、どうしてもFWの選手たちばかりに目に行くが、2年前の花園を唯一経験している司令塔のSO萩井耀司(3年)や、指揮官が「一番成長した」と目を細めたキックとランに長けたFB吉田、OBの白井吾士矛(ヤクルトレビンズ)の弟で、13番から12番にコンバートされた縦に強い副将・白井瑛人と、諸田章彦(ともに3年)、決定力の高いWTB田中健想(3年)、古賀龍人(2年)ら、BKにもタレントが揃う。

藤原監督は「FWはセットプレー、スクラムに自信を持っていて、ボール持って前に出るパワーのある選手も比較的多い。BKも経験こそ少ないが、縦に強いしディフェンスも固い。継続ラグビーは桐蔭学園の強みなので、それも全国大会で出したい」と先を見据えた。

桐蔭学園、NO8城主将

また、先輩の佐藤健次が活躍する姿に憧れて、茨城から桐蔭学園に進学したNO8城は「(神奈川県)予選決勝での連敗は過去にないので、優勝できて安心した。花園は優勝を目標にすることはもちろんだが、大会の入りというのはとても重要なので、まずは1試合目にフォーカスしたい。花園の2週間はとても成長できる時間。その中で、いかに自分たちが成長できるのか証明したい」と前を向いた。

白井副将は「選抜大会は1週間前にケガをしたので、コンディションを整えたい。FWが強いチームと思われているので、BKでも取り切れるということを見せたい」と語気を強めた。

ランとプレースキックに長けたFB吉田

スクラムを支えるPR伊吹は「セットプレーは春から成長しているので、圧倒できると思っているし、強みになっている。絶対王者と言われるようになりたい」、プレースキッカーでもあるFB吉田は「自分の強みであるキックは誰にも負けないように頑張りたい」と意気込んだ。

また、2大会ぶりに花園を決めたこともあり、藤原監督以下、選手たちも楽しそうに練習している姿が印象に残った。「藤原監督らコーチ陣がそういう雰囲気を作ってくれていると思う」と城主将は笑顔を見せた。桐蔭学園にとって2年ぶりの花園だ。コーチ陣にも、選手たちにも早くプレーしたい気持ちが強く感じられた。

昨季、花園に出場できなかったため、今季のチームは、萩井以外は花園初心者で、藤原監督らコーチ陣が、花園の3つのグラウンドの特徴などを話している。またモールディフェンスの対策は、OBの元トップリーガーにも頼んで指導してもらったという。

改めて花園に向けて藤原監督は、「大会中、厳しい戦いを想定して走りつつ、(初戦となる)12月30日の2回戦に向けて調整している。まだまだ、FWとBKの連携が取れていないので修正したい」と冷静に話した。

桐蔭学園はシード校のため、12月30日の2回戦からスタートとなり、1回戦で近大和歌山(和歌山)に勝利した四国王者の松山聖陵(愛媛)と対戦する。昨季の悔しさをバネに大きく成長した2大会ぶりに出場する「東の横綱」。自分たちのラグビーに「徹」して、2020年度以来となる4度目の日本一に挑む。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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