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関大北陽、初出場で旋風を巻き起こすか
大阪・東大阪市花園ラグビー場で始まった「花園」こと、全国高校ラグビー大会。明日の2回戦から登場するシード校の中から注目校を紹介していきたい。
今大会で最注目校の1つは、強豪がしのぎを削る大阪勢として20年ぶりの初出場、そしてBシードに選ばれた関西大北陽(大阪第2)だ。創部が2013年の関西大北陽が、どうして、10年で花園出場の切符を手に入れることができたのか――。
2008年、野球やサッカーの強豪で知られる北陽高校が、関西大学の併設校になり、「関西大北陽」となった。2010年には中学が新設され、ラグビー部が創部。そして、2013年には高校にもラグビー部が創部された。
梶村監督(左)と津山コーチ
関西大北陽中の1期生が中学3年となる2012年のタイミングで、トップリーグのヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)でバックローとして7年間プレーした梶村真也監督(42歳)が赴任した。
仰星のコーチだった 関西大北陽の田中校長
梶村監督は東海大仰星では副将として、全国高校ラグビー大会を制し、東海大学ではキャプテンを務めた。なお、関西大北陽の田中敦夫校長は元・東海大仰星でコーチやレフリーで活躍した人物で、教頭時代にラグビー部創部に尽力、梶村監督を関西大北陽に誘ったという。
「教員志望ではなかったが、母親や兄弟が教員で縁やつながり、出会いもあり、現在の立場になった。ラグビーに対しての捉え方、考え方、戦術、戦略以外にも人のつながりを大事にし、ラグビーをする前に1人の人間としてしっかり行動するなどは、仰星時代の(監督だった)土井(崇司)先生(現・東海大相模校長)の教えです」。
また、「湯浅監督は普段から仲の良い友人ですが、彼の持っている力に憧れている」(梶村監督)。東海大大阪仰星で選手、コーチ、指揮官として6度の優勝に携わった湯浅大智監督は、梶村監督の高校、大学の同期にあたる。また、流通経済大柏の相亮太監督(大東文化大学出身)、中部大春日丘の大向将也コーチなども同じ歳だ。
関西大北陽の高校にもラグビー部ができることが決まると、梶村監督は大阪府の中学校やスクールの選手に声を掛けて、少しずつ強化を進めていった。昨季は大阪府予選の花園決勝に5度目の挑戦となったが、「高い壁」と監督が言うとおり、常翔学園の前に0-21で敗れて涙を飲んだ。
関西大北陽の選手たち
現在、部員は3年生29名、2年生22名、1年23人の計74名。全体の1/3ほどが関西大北陽中学からの生徒で、花園予選決勝は15人中7人が出身者だった。また、大学は関西大学に進学する選手が多いという。
「北陽中の子たちが主軸となり、(中高大と)連携しながら取り組んでいます。関西大学にも訪れさせていただき、ユニット練習をさせてもらっています」(梶村監督)。
昨季まで梶村監督、高森智哉部長の2人で指導していたが、今季から東海大学OBの津山翼コーチ加わり3人体制となった。新チームとなり、ディフェンス、モールに力を入れて大阪府予選を勝ち上がり、近畿大会に出場してベスト4に入った。
過去2回は推薦枠の出場だったが、初めて自力で春の選抜大会に出場した。1回戦で國學院久我山(東京)に7-8で負けたものの、続く、春の大阪総体で大阪朝鮮を10-5で下して2位となり、花園予選のAシードに選ばれ、秋の花園予選決勝で大産大付属を41-7で破って、うれしい花園出場を決めた。
梶村監督は「今季のチームは先輩が残してくれたもの、経験を積んで、その中で、ディフェンスで我慢のできる選手がたくさん揃っている。毎年、チャレンジしていたが、1つ1つ段階を登って、今季のチームが花園出場を達成してくれてうれしい。卒業生たちの積み重ねもあるし、幸せを感じています」と目を細めた。
左から白石、羽根田、永井、宇田のリーダー陣
中心選手は、朝の練習でタックルを繰り返しているというキャプテンNO8(ナンバーエイト)永井玲雅、関西大北陽中出身の副キャプテンSO(スタンドオフ)羽根田陸、FW(フォワード)リーダーのLO(ロック)宇田大晟、高校日本代表候補の身長182cmのBK(バックス)リーダーCTB(センター)白石空のリーダー陣だ。さらにハードタックラーのFL(フランカー)向阪勇人、嗅覚に長けておりFLから転向したWTB(ウィング)川部颯人(いずれも3年)がいる。
秋からは、監督の元チームメイトで日本代表のPR(プロップ)だった山村亮氏が関西大学のコーチになったこともあり、FWの強化のために毎週、関西大学に通ってセットプレーの強化に努めた。
また、武器であるディフェンスだけでなく、夏から秋にかけてはグラウンドを大きく使ったアタックの精度向上にも取り組んできた。「今季のチームは3年生がよくコミュニケーションを取ってくれる。アタックでも意志疎通ができて、機能し始めた」(梶村監督)。
常にチームメイトに話しかけている永井主将
キャプテンNO8永井は「ディフェンスで粘れたのが、花園に出られた一番の要因」と言えば、LO宇田は「ディフェンスから流れ作ってからの攻撃がうまくいっている。選抜大会は1回戦で負けたので、勝ち進んでいきたい」と意気込んだ。
CTB白石は「自分たちのディフェンスを全国に見せることができる」と自信をのぞかせれば、ゲームコントローラーのSO羽根田副将は「全員がまとまって声掛けながらディフェンスができたので花園に出場できた。自分たちの実力を試させることが楽しみ」と声を弾ませた。
Bシードに選ばれた関西大北陽は、12月30日(土)の2回戦からのスタートとなり、1回戦で春の東京王者・早稲田実業(東京第1)に勝利した昨季ベスト4の天理(奈良)と対戦する。同じ山には尾道(広島)、流通経済大柏(千葉)という強豪も入る厳しい組に入った。
ただ、梶村監督が「相手はどこかは関係ない。(強豪が揃う山に入ったので)Bシードのプレッシャーはなくなったと思う。チャレンジャーとして試合に臨みたい」と言えば、永井キャプテンも「Bシードになって驚いたが、大阪の代表として簡単に負けられない。2回戦の相手は強いですが、初出場なので、チャレンジャーとして臨めるので楽しみです。自分たちのスタイルを貫きたい」と語気を強めた。
今季、一致団結して、勝ちに結びつけようという意味を込めてスローガンは「結」(ゆい)を掲げた。特筆すべきスター選手はいないが、全員ラグビーで大阪のプライドを胸に地元・花園で上位進出をうかがう。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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