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ラグビー コラム 2023年12月17日

【ハイライト動画あり】横浜キヤノンイーグルス、リーグ戦最多3万人の前でトヨタヴェルブリッツの猛攻をしのぎ切る

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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W杯決勝以来のマッチアップとなったSHスミス(左)とSHデクラーク

12月9日(土)に開幕した、3シーズン目を迎える「NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24」。16日(土)はディビジョン1の第2節が行われ、神奈川・日産スタジアムでは、昨季3位の横浜キヤノンイーグルスが、6位のトヨタヴェルブリッツを迎えた。

昨季、チーム史上最高成績の3位となったイーグルス、開幕戦は昨季準優勝だった埼玉パナソニックワイルドナイツと対戦。しかし、前半から圧倒されて、12-53で完敗。黒星スタートとなった。

沢木敬介監督はそのワイルドナイツ戦から先発メンバーを変えずに臨んだ。FW(フォワード)第1列はPR(プロップ)岡部崇人、祝原涼介と、HO(フッカー)中村駿太の3人。LO(ロック)にオーストラリア代表のマシュー・フィリップ、NO8(ナンバーエイト)には、2023年ワールドカップ日本代表メンバーのシオネ・ハラシリが引き続き入った。

SHデクラーク(左)、CTBクリエル

BK(バックス)も、南アフリカ代表SH(スクラムハーフ)のファフ・デクラークと、元日本代表SO(スタンドオフ)田村優のハーフ団。CTB(センター)にはキャプテンの梶村祐介と、南アフリカ代表のジェシー・クリエル、FB(フルバック)にはワールドカップ日本代表メンバーの小倉順平らが名を連ねた。

横浜キヤノンイーグルスvs.トヨタヴェルブリッツ

一方、昨季は6位に終わり、プレーオフ進出はならなかったヴェルブリッツ。ホストで迎えたリコーブラックラムズ東京との開幕戦は、後半苦しんだが15-8で逃げ切り白星スタートとなった。

ベン・ヘリングHC(ヘッドコーチ)は、FW、BK1人ずつ先発メンバーを交替。FWは前節でPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)を獲得した元日本代表のFL(フランカー)ウィリアム・トゥポウと、キャプテンの姫野和樹は引き続き先発したが、NO8には南アフリカ代表のピーターステフ・デュトイがメンバー外となり、新人のアイザイア・マプスア(慶應義塾大学出身)が入った。

SOバレット(左)、SHスミス、オールブラックスのハーフ団

BKもSHアーロン・スミス、SOボーデン・バレットのオールブラックスで100キャップ以上を誇るハーフ団、今季、加入したCTB日本代表のシオサイア・フィフィタらが先発し、FBは前節ケガをした丸山凛太朗に替わり、ニュージーランド出身のディック・ウィルソンが入った。

ジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1

【ハイライト動画】第2節 横浜キヤノンイーグルス vs. トヨタヴェルブリッツ| スプリングボクスとオールブラックス、注目のSH対決

大型補強をしたヴェルブリッツが、7-39で敗戦した昨季のリベンジを果たし開幕から連勝するか。それともホストのイーグルスが、ホーム開幕戦で今季初白星を飾るか。リーグワンのリーグ戦最多記録となる3万1312人の観客が見守る中、注目の一戦は午後2:10にキックオフされた。

ゴールを狙うSOバレット

「前半20分で、自分たちからインテンシティー(強度)を上げていく」(沢木監督)と決めていたイーグルスが序盤、自陣からでも積極的にボールを展開して主導権を握る。ただトライには結びつかず、前半13分には、PG(ペナルティゴール)のチャンスを与えてしまい、ヴェルブリッツのSOバレットに決められて、3点を先制される。

しかし直後の14分、イーグルスが反撃。ラインアウトからSO田村が仕掛けてオフロードパス、NO8ハラシリ、そしてPR岡部とつなぎ、岡部が中央左にトライ、田村がゴールを決めて、7-3と逆転に成功。

さらに25分、イーグルスは相手ゴール前でスクラムを押し込み、そのままNO8ハラシリがトライを挙げ、14-3とリードを広げる。「静岡ブルーレヴズから名嘉(翔伍)コーチが来て、良い(スクラム)練習ができている」(PR祝原)。

トライを挙げるCTBフィフィタ

しかし、ヴェルブリッツも徐々に落ち着きを取り戻し、SHスミス、SOバレットを中心にボールを継続し、32分にはCTBフィフィタが右ライン際でフィジカルの強さを見せてグラウンディングしトライ。SOバレットが難しい角度のゴールを決め、4点差に追い上げる。37分、イーグルスはSO田村がPGを沈めて、17-10で前半を折り返した。

トライを挙げたWTBブルア

後半、先手を取ったのはリードしているイーグルスだった。2分、ラインアウトから攻撃を継続し、右サイドで途中出場のWTB(ウィング)ヴィリアメ・タカヤワがゲインし、タックルを受けながらもパスをつないで、最後はWTBイノケ・ブルアがトライ。SO田村のゴールを成功させて、24-10とリードを広げた。

粘り強くプレーを続けた両チーム

しかし、ヴェルブリッツも6分、スクラムを起点に連続攻撃を仕掛け、最後はCTBフィフィタのパスを受けた、WTB岡田優輝が左中間にトライを挙げ、9点差に追い上げる。

30分、イーグルスのLOリアキマタギ ・モリが危険なタックルをしてシンビン(10分間の途中退場)となり、ヴェルブリッツが残り10分を残したところで数的有利となる。33分、相手陣で連続攻撃をしかけて、最後は、ラックサイドを突いたSHスミスが左中間に飛び込んでトライ、SOバレットのゴールも決まって、2点差に迫る。

試合終了、逃げ切った横浜キヤノンイーグルス

その後、ヴェルブリッツは途中交代のWTB山口修平のランなどでゴール前に迫るが、ディフェンス、接点の集散でイーグルスが粘りを見せて反則を誘い、得点を許さなかった。試合はそのままノーサイドを迎え、イーグルスが24-22で勝利。今季初のホームゲームで、今季初白星を挙げた。

POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)にはトライ、そしてスクラムで躍動したイーグルスPR岡部が初選出された。「(3万人の観客が入り)思ったより歓声の響きが違ったので、僕らのモチベーションになった。(トライを振り返ると)毎試合、あのサポートコース走っているがやっと実った。スクラムトライはみんなのトライ。良いところで良いスクラムを組めた」。

ヘリングHC(左)と姫野主将(トヨタヴェルブリッツ)

惜敗したヴェルブリッツのヘリングHCは「最後にトライで仕留めることができなかったことは、来週に向けてのレビューポイントになる。最後のミスはやはり痛手になった。結果は残念だが、試合を通して粘り強くプレーした。今後のシーズンに向けて、いい未来が待っていると思うので、これから修正して先に進んでいきたい」と悔しさを露わにした。

姫野キャプテンも「結果はすごく残念だが、最後まで粘って、粘ってプレッシャーをかけ続けたチームメイト、そのエフォートに関して、すごく素晴らしいものがあった。このまましっかり、そういったマインドセットを常に持ち続けて日頃の練習、試合をやっていくことによって、チームとしてより成熟していくと思う」と前を向いた。

沢木監督(右)と梶村主将(横浜キヤノンイーグルス)

苦しみながらも勝利したイーグルスの沢木監督は「先週(ワイルドナイツに)ボコボコにやられて、今日の試合、ゲームコントロールで言うとブサイクな展開だが、チームのベースにあるのは泥臭く、ハードワークして、相手チームより走ることを根っこになければいけない。強度的にはいいインテンシティーでできた」。

「今季は楽に勝てる試合は1試合もない。今日、そういう根っこの部分、大事にしているものをもう1回、再確認できたのが一番良かった点」と納得の表情を見せた。

試合後、GPSの走行距離がラグビー人生一番の7800mだったという梶村キャプテンは「チームのプライドを取り戻そうという話をしていて、要所、要所でチームに対しての愛情、プライドがすごく見えたシーンがあった。内容的には満足ではなかったが、こういうゲームを勝ち切って次に進めるのは、チームの成長をすごく感じた」。

「(守り切れたシーンを振り返って)あのような場面で走れる選手がグラウンドに立つべきだと思うし、自分たちのやるべきことをやった結果だと思う」と満足げに振り返った。

SHスミス(左)とデクラークのマッチアップ

ワールドカップ決勝でマッチアップしたSH対決は、イーグルスのSHデクラークに軍配が上がった。デクラークは「僕の仕事はいつも自分の役割にベストを尽くすことだから、1人の選手だけにフォーカスするようなことはない。でも、彼(スミス)はいつも良い対戦相手なので、注意をはらっている」と話した。

一方、ヴェルブリッツのSHスミスは「いつも、素晴らしい選手との対戦を楽しんでいる。クオリティの高い選手で、重要なプレーをいくつか見せてくれた。こうしたテストプレーヤーの友人と対戦できるのはいつだってうれしい」と声を弾ませた。

今季、地元の横浜で初白星を挙げたイーグルスは、次節12月23日(土)もホストの神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場に、花園近鉄ライナーズを迎える。連勝とはならなかったが、7点差以内の敗戦で勝ち点1を獲得したヴェルブリッツは、23日に、ホストの愛知・パロマみずほラグビー場で、開幕から連勝中の三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦する。

★横浜キヤノンイーグルスvs.トヨタヴェルブリッツ 試合データ詳細
https://www.jsports.co.jp/rugby/league-one/result/detail/?competition=421&season=2024&match=939851

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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