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苦しい1年となった山本敦輝主将
あまりにも早い終焉だった。「(後輩たちに)本当に苦しい思いをさせてしまった」(PR/プロップ山本敦輝主将)。5年ぶりに大学選手権出場逃し、リーグ戦も全敗。入替戦は勝利したものの、どん底を経験した同志社大学の1年は静かに終わりを告げた。
「帝京大を倒して日本一」。4年生は絶対王者の名前を目標に加え、春から改革に着手した。日々の練習メニューや試合の戦い方は、リーダー陣が主体となって考案。「学生たちでめちゃくちゃミーティングするようになり会話が増えた」(宮本啓希監督)と意見交換し、考える文化が根づいた。
戦術も一新した。昨年は表裏を使い分けた複層的な攻撃に注力し、アタックシェイプに挑戦。一方で今季はディフェンス面に焦点を当て、強化に取り組む。出足の鋭いディフェンスシステムを採用し、ダブルタックルの精度にこだわった。
春の天理大戦でトライを挙げる上嶋友也
春先は帝京大に0-89で敗れたが、立命館大学に連勝。5月末には強豪・天理大学を41-33で下した。指揮官も「今年は(初戦敗退で終わった昨年から)成長できた」と手応えをつかみ、「チームは正しい方向に進んでいる」。誰もがそう信じ、疑わなかった。
しかし、7月2日に関西大学春季トーナメント決勝で、京都産業大学に15-54と大敗。PR山本主将は「1位にこだわりを置いてやっていたので、2位だから良かったではない」と厳しい言葉を口にする。力を入れてきたはずの防御が崩壊し、再構築を迫られた。「正直、もっとやれると思っていた」(宮本監督)と、結果的にこの試合から歯車が狂い始める。
8月に北見市と菅平高原で行なった夏合宿で立て直しを図ったが、失点は減らなかった。筑波大学戦では最大29点差をつけながら、後半に6トライを奪われ逆転負け。主将を含め主力選手が相次いで欠場した合宿最終戦では、早大に70点を取られ完敗。「なかなかチームの歯車が合わずに負け癖がついてしまった。そこで勝てていたらもっと精神的に良かった」(FB/フルバック芦塚仁副将)と低迷の要因になった。
ラグビー 関西大学リーグ2023
【ハイライト動画】入替戦 同志社大学 vs. 大阪体育大学|同志社、名門の意地を見せる快勝
春の序盤に躍進したわずかな期待と、下降線をたどった夏以降の不安が入り混じる中、Aリーグの開幕。シーズン後半に上位校との対戦を控えていた同志社にとって、前半戦が肝だった。
どん底を味わった秋の天理大戦
しかし、立命大に惨敗し開幕節を落とすと、近畿大学にも敗れ、泥沼の連敗がスタート。関西大学と摂南大学にはともに2点及ばず、接戦をものにする力もなかった。「イレギュラーに対応する力が足りなかった」(山本主将)と想定外の連続だった。第5節には天理大学に春の雪辱を果たされ、大学選手権出場の可能性が消滅。目標としていた「日本一」は消えた。
入口に貼られた『THE DOSHISHA』
チームは目標を再設定した。掲げたのは『THE DOSHISHA』。「同志社大学ラグビー部のミッションとしてある応援されるチームになる」(宮本監督)、「ずっと応援してくれている人たちに、恩返しや感動で与えることが自分たちの責任だと思う」(山本敦)。
勝ちへの貪欲さをキーワードに挙げ、全員が通るグラウンドの入口に張り紙も貼られた。だが、残り2戦も落とし、勝ち点2の最下位でリーグ戦が終幕。同志社の威信をかけ入れ替え戦に挑んだ。
万が一負ければ、史上初の2部降格。重圧は計り知れなかった。試合前のロッカールームでは感極まる選手が続出。「同志社を守る戦い」(宮本監督)と覚悟を決め、運命の80分が始まった。
執念が表れた試合だった。前半10分、WTB(ウィング)岩本総司がステップで突破し、先制トライを奪う。その後もFW(フォワード)陣が力勝負を制し、3トライを加えた。
37分には、PR山本主将が敵陣ゴール前でジャッカルを決め、ペナルティを誘発。28点のリードがあったが、PG(ペナルティゴール)を選択した。慌てず冷静に1点でも多く。41点差に引き離した後半18分にも、SO(スタンドオフ)嘉納一千が右足を振り抜き、手堅く勝利を手繰り寄せた。
芦塚仁副将と抱擁を交わす山本主将
62-21でノーサイドの笛が鳴る。会場は拍手と激励の声に包まれた。長く、辛かった1年間。目に涙を浮かべた山本主将は「ずっと苦しい時間が続いたけど、最後まで付いてきてくれてありがとう。最後、こういう形で終われて良かった。ナイスゲーム」と仲間の前で話した。
宮本監督も「人に何かを感じてもらうことが、こんなにも素晴らしいことだと最後に4年生が分かってくれたと思う。それを忘れないでと言いたい」と最終戦を終えた最高学年に対する胸中を打ち明けた。
ともに涙を流した後輩たち
第113代目ラクビー部の戦いは幕を閉じた。チームづくりの失敗、トライを取り切る決定力不足、防御の脆弱さ。来季への課題は山積だ。「自分たちの代でこの結果になった要因をしっかりと考えて、もう1回強い同志社を体現してほしい」(山本敦)と後輩たちに思いを託した。
繋がれた歴史の重みを感じ、名門の返り咲きへ。「もう弱い同志社は見たくない」。全国の同志社ファンはきっとそう願っている。
文/写真:勝部健人(同志社スポーツアトム編集局)
同志社スポーツアトム編集局
同志社スポーツアトム編集局は1978年に創刊された同志社大学唯一の体育会機関紙です。年6回の本紙の発行を軸に、号外の発行やHPの管理などをすべて学生の手で行っています。
公式サイト
Twitter→@atom_doshisha
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