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ラグビー コラム 2023年12月8日

【ハイライト動画あり】慶應義塾大学、帝京大学相手に「前に出るタックル」で大学選手権へつながる敗戦。ラグビー関東大学対抗戦

ラグビーレポート by 慶應スポーツ新聞会
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「前に出る」タックルを決め続けた慶應

12月2日(土)、関東大学対抗戦、慶應義塾大学の最後の相手は王者・帝京大学。スタメンを大きく変え、6名が今季対抗戦初先発となった。主将のPR(プロップ)岡広将はブースター、副将の山田響はメンバー外、CTB(センター)三木海芽がゲームキャプテンを務めた。その中で、どういう試合運びをしていくかがポイントとなった。

前半序盤は互いに得点が入らなかった。この試合は全体的に帝京に攻撃される時間帯が長く、自陣に入られることも多くあったが、80分間通じて強烈なタックルを決め続け、相手の攻撃を防いでいた。前に出るタックルという意味では、対抗戦7試合の中で最も冴えていたのではないか。

帝京は大きなFW(フォワード)陣で前に出て、BK(バックス)陣で展開してトライを取り切ることを得意にしているが、序盤から慶應のタックルが光った。帝京が慶應のディフェンスの圧力を感じていたことを象徴するシーンがある。

前半12分、WTB(ウィング)大野嵩明が足を取られたのもあって、帝京が大きくゲインし、インゴールまであと10mというところまで迫った。普段ならFWで当てに行くところで、アドバンテージも出ていない中、キックパスでトライを狙った。前に出るディフェンスを避け、先制へ一発勝負に出たとも考えられる。

その後も攻め続ける帝京に対し、LO(ロック)中矢健太、FL(フランカー)樋口豪が膝下にタックルを刺していくが、ペナルティを取られてしまった。ラインアウトのスローを、最後尾の後ろに走り入ってくるFL奥井章仁に投げるというサインプレーを決められ、先制トライを許す。しかし、コンバージョンのチャージに成功、格上の相手に対し挑戦心を見せ、周りを勇気づける。

22分、FL奥井や青木恵斗を懸命に止めるも、最後はWTB小村真也に右端を走られ追加点を献上した。それでも、23分にはインプレー中でキックしようとする際、SH(スクラムハーフ)橋本弾介が激しくプレッシャーをかけて阻止するなど、簡単にキックを蹴らせないという、しつこいディフェンスも目立った。

ラグビー 関東大学対抗戦2023

【ハイライト動画】帝京大学 vs. 慶應義塾大学

それもあってか帝京はボックスキック時、ラック後ろに3人、4人と普段より人数を多く配置させ、蹴りやすいようにしていた。25分ではそこに2人しかつけなかったことで、LO中矢のチャージ成功につながった。

しかし、そのディフェンスの中で帝京は得点を重ねる。31分にはLO尹礼温にディフェンスラインの穴を走られ、34分にはラインアウトの確保に失敗後、WTB大町佳生にゲインされ、SH李錦寿にトライを決められた。

前半は残り5分、26点差を追いかける慶大は37分、22mライン手前から蹴ったSH橋本のハイパントをWTB大野がジャンピングキャッチ。敵陣に侵入すると、相手のノットローラーアウェイもあり、チャンスを拡大させる。残り5mと攻め込むと、ここでゴールポスト正面からSO(スタンドオフ)磯上凌がDG(ドロップゴール)を決め、3点を返す。

その後、残り時間で帝京がアタックをするも、CTB村田紘輔が猛タックルでノックオンを誘い、3-26でハーフタイム。最後に良い流れで前半を折り返した。ハーフタイム後、先にグラウンドに姿を現したのは慶大。前半の良い流れそのままに、先にスコアしたいところ。FB(フルバック)今野椋平のキックオフで後半が始まった。

トライを決め祝福される吉村

帝京が蹴ったボールをCTB村田が好キャッチし、WTB大野が走って前に運ぶと、橋本が前半と同様にハイパントを上げる。バウンドが味方し大野に入り、残り1mと迫ると、最後はPR吉村隆志がインゴールにねじ込みトライ。先週の早慶戦でデビューした吉村にとって対抗戦初トライとなった。

後半、1分経たずにトライを返し吉村は左拳を突き上げガッツポーズをすると、背番号の「3」が西日に照らされ、黒黄ジャージは黄金色に輝いていた。今野のコンバージョンも決まり、10-26と幸先の良いスタートを切る。

このまま流れを引き寄せたい慶應は、帝京のアタックに対して低いタックルを決める。帝京がFL奥井、HO(フッカー)江良颯を使い攻めてくるところを、FL本郷海志などFW陣が決死にタックルを決め、前進を許さない。

特に本郷は脳震盪の疑いがあり、メディカルチェックを受けたが、その直後には一番のハードタックルを喰らわせていた。後半8分こそ相手ボールのラインアウトとなり、サインプレーでNO8(ナンバーエイト)延原秀飛にトライを決められるも、その後の15分は再び得点の入らない状態が続いた。

24分に追加トライを許すも、そのリスタート直後、HO中山大暉が帝京のLO岡大翔に身体を浮かせるほどの猛烈なタックルを決め、ペナルティを獲得。中山は大きな雄叫びをあげた。得点が欲しい慶應は、その後のラインアウトからモールを組み攻撃を仕掛けるが、相手のリアクションが速く、ノットリリースザボール。

チャンスは続き33分、PR岡のジャッカルから敵陣に攻め込むと、FB今野のあげたハイパントを獲得した帝京陣を乗り越えボールを再獲得。相手のハイタックルもあり、ラインアウトモールで残り2mまで攻めるが惜しくもノックオン。逆に帝京はロスタイムに2トライ追加し、10-54でノーサイド。慶應は3勝4敗の5位で対抗戦を終えることになった。

この試合では、明治戦や早慶戦で課題でとなった序盤を含め、相手に長時間攻められながらも再三のタックルを決め、失点を防いでいた。タックルの成功率自体は他の試合も高かったが、タックルで「前に」出れていたという面では、帝京戦が一番手応えを感じたのではないか。

王者・帝京がサインプレーを多用してトライを取っていたことからも、帝京にとっては慶應のディフェンスの圧力を感じていただろう。この試合ではディフェンスリーダーのCTB三木がゲームキャプテンを務めたが、「ディフェンス」面でチームを引っ張っていた成果とも考えられる。

また、自身初得点でチームに貢献したPR吉村やSO磯上、我慢のタックルを決め続けたWTB伊吹央やCTB村田など、新戦力の台頭という意味でも収穫のある一戦となった。欲を言えばもう少し長く攻撃し、得点を積み重ねたかったが、「ディフェンスから前に出るラグビー」が体現できた、良い対抗戦の最終戦となった。

慶應は、大学選手権初戦の3回戦で天理大学と対戦することが決まった。天理は3年前に日本一を果たすなど関西で力のあるチームだが、臆することなく慶應らしいプレーを発揮して欲しい。慶應の目標は「正月越え(ベスト4)」。ここからはノックアウト形式となるが、目の前のプレーに1つ1つ集中し壁を乗り越え、国立に帰ってくる黒黄戦士に期待したい。

文:野上賢太郎/写真:野上賢太郎(慶應スポーツ新聞会)

慶應スポーツ新聞会

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慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト

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