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早慶戦のPOMは早稲田のFB伊藤大祐主将
11月23日(木・祝)、今年も関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、早稲田大学vs.慶應義塾大学の『早慶戦』が行われた。両校の対戦は1922年に始まり、節目の100回目を迎える今年は、東京・国立競技場で開催された。
定期戦の対戦成績は早稲田大学が72勝20敗7分とリードしており、最近は1分けを挟んで早稲田が11連勝中だ。ただ、早稲田大が連勝しているが、過去2年は7点差と僅差のゲームが多く、今年も接戦が予想された。
4勝1敗の早稲田大学の大田尾竜彦監督は「慶應さんとの試合は接点、コンタクトでプレッシャーを掛け合う。強み、カラーがハッキリしているので、自分たちがそこにどういう戦い方できるか」と選手たちを送り出したという。
早慶戦のスタメン
一方、3勝2敗の慶應義塾大学は早慶戦に勝つことを今季の最大のターゲットにしており、青貫浩之監督は「毎回の練習で早稲田のことを意識して、すべてのこと逆算してやってきた。早稲田にどうやって勝つか、早稲田のトイメンにどうやって勝つか、イメージさせて取り組んできた」と語気を強めた。
両チームの主将を先頭に入場する両校
臙脂か、黒黄か――。快晴の中、伝統の一戦は2万7000人を超える観客を集めて、午後2:00にキックオフされた。
先制トライを挙げる早稲田SH島本
試合の主導権を握ったのは早稲田大学だった。前半4分、キックカウンターを起点に攻め込み、LO(ロック)池本大喜(4年)がパスダミーから抜け出し、最後はフォローしたSH(スクラムハーフ)島本陽太(4年)が中央トライ。CTB(センター)野中健吾(2年)がゴールを決めて7点を先制する。
10分、早稲田大学はカウンターから攻め込み、相手の反則を誘うと、モールからFL(フランカー)安恒直人(3年)が左中間に押さえて14-0とした。さらに20分、相手陣のスクラムを起点にキャプテンFB(フルバック)伊藤大祐が左端にトライを挙げて21-0と大きくリードを広げた。
MIPの慶應SO山田響
慶應義塾大学も反撃する。23分、キックチャージから攻め込み、副将SO(スタンドオフ)山田響が裏へグラバーキック、そのボールを自分でキャッチし左中間にトライ。自身でゴールを決めて21-7。さらに33分、モールを押し込み、最後はFW(フォワード)にこだわり、20次攻撃でHO(フッカー)中山大暉(3年)がねじ込みトライを挙げて21-14と追い上げた。
ラグビー 関東大学対抗戦2023
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 慶應義塾大学|100回目の早慶戦、6トライで早稲田の勝利
しかし、早稲田大学は直後のキックオフのボールを、1年のWTB(ウイング)矢崎由高(桐蔭学園)がキャッチし、相手陣奥に攻め込み反則を誘う。ロスタイム、ラインアウトからHO佐藤健次(3年)が左中間に押さえて28-14でハーフタイムを迎えた。
後半、先に好機を迎えたのは早稲田大学だった。3分、相手のキックを自陣22m内でFB伊藤がフェアキャッチし、クイックタップで攻め込み、HO佐藤につなぐ。最後はトップスピードでフォローしたWTB矢崎が左中間にトライ。11分にはCTB野中がPG(ペナルティゴール)を決め、38-14とリードを広げた。
活躍した早稲田大WTB矢崎
慶應義塾大学は14分にモールからFL(フランカー)富田颯樹(4年)が1トライ返すのがやっとで、早稲田大学はロスタイムにWTB矢崎、1年のNO8(ナンバーエイト)松沼寛治とつないで右端にトライ。そのままノーサイドを迎えた。6トライを重ねた早稲田大学が43-19で快勝した。
ノーサイド後、称え合う両校
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には早稲田大学のFB伊藤主将、MIP(モスト・インプレッシブ・プレーヤー)には慶應義塾大学のSO山田副将が選ばれた。
2010年度以来の勝利を目指したが、大敗してしまった慶應義塾大学の青貫監督は「前半の入りから悪く、なかなか修正できず、最後まで引きずってしまった。規律の部分もなかなか守りきれず、修正してきたつもりではいたが、まだまだ足りなかった」。
「1年間、シーズンが始まってからこの試合に勝つためだけに取り組みをしてきたが、結果を出すことができずに、私自身監督として実力不足だと思っています」と肩を落とした。
慶應の岡主将(左)と青貫監督
主将のPR岡広将(4年)は「この1年、目標にしてきた11月23日に勝ちきれなかったことがすごく悔しい。早稲田大学はゲインラインの近くで、どんどんアタックをしていくイメージでやっていましたが、ブレイクダウンで想像以上に受けてしまい、そのまま失点につながってしまったことが敗因の1つ」と振り返った。
100回目の早慶戦に快勝した大田尾監督は「先輩方々が築き上げてこられた両校の歴史です。その100回目で勝つことができて、非常に良かった。キッククチェイスは今までやれていなかったが、伸びシロがあると取り組んできて、安定したゲームを生んだ。セットプレーが安定したことで、選手たちが判断に余裕があるような気がして、それが点差になったと思う」と話した。
早稲田の伊藤主将(左)と大田尾監督
伊藤主将は「慶應さんは日本で一番古いチームで、プレッシャーを常に感じる。点数が開いたが、開いている気ではなく、そういう相手に勝つことを大事にしてやってきたので、多少、固いゲームになったが、勝ってホッとした部分がある」と安堵した表情を見せた。
5勝1敗(勝ち点24)で3位につける早稲田大学は12月3日(日)、再び国立競技場で、同じく5勝1敗(勝ち点25)で2位の明治大学との「早明戦」を迎える。早稲田大学は対抗戦の優勝の可能性はないものの、再びライバルに勝利して2位を狙う。
一方、3勝3敗(勝ち点14)で5位に順位を落とした慶應義塾大学は12月2(土)、東京・秩父宮ラグビー場で、全勝で首位を走る帝京大学と激突する。慶應義塾大としては勝ち点1以上を得て自力で大学選手権出場を決めたい。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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