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残り2節で迎えた6位立命館大と7位関西大の激突。キックオフ前時点の両校の勝ち点差は「2」で、この試合に勝ったほうは下位2チームが回る入替戦の回避へ一歩前進できる。決戦のひとつ手前の大一番は、予想通り白熱したクロスゲームとなった。
序盤、主導権を握ったのは関西大だ。強みのラインアウトを起点に敵陣22メートル線内に攻め込み、連続攻撃からPR宮内慶大が開始3分に先制トライを挙げると、6分にはSO池澤佑尽のロングタッチキックから相手ボールのラインアウトをFL中川一星があざやかにスティール。そのままテンポよくアタックを継続してディフェンスを揺さぶり、内返しのパスでラインブレイクしたWTB立石一馬がインゴール中央へ走り抜ける。わずか8分で14-0と先行した。
関西大はさらに9分に中川、11、12分にはLO中薗拓海と、4本続けて相手投入のラインアウトを奪取。攻撃の起点を完全に支配し、立ち上がりの重要な時間帯を優位に進める。
もっとも、立命館大もそのままズルズルとは崩れなかった。15分、相手陣22メートルライン付近のラインアウトをようやく確保すると、自慢のBK陣が左オープンに展開。CTB江川剛人が半身前に出ながらオフロードでつなぎ、縦へ切れ込んだFB吉本匠希が左中間に滑り込む。
これで息を吹き返した立命館大は、22分にも相手のペナルティに乗じて敵陣レッドゾーンのラインアウトのチャンスをつかみ、モールドライブで前進。最後はPR前川和輝がラックサイドをねじ込み、ゴールラインを越える。これで10-14と詰め寄った。
追い上げられた関西大だったが、またも優勢の空中戦から突破口を開く。30分過ぎ、中盤でのマイボールラインアウトをキープすると、キャプテンのHO垣本大斗が密集サイドを鋭く突いてビッグゲイン。テンポよく出たボールをSO池澤が左奥のオープンスペースに蹴り込み、ダイレクトでキャッチしたWTB澤口飛翔が軽快なフットワークでタックラーを次々とかわして左コーナーに飛び込んだ。
ラグビー関西大学リーグ2023
【ハイライト動画】立命館大学 vs. 関西大学
その後、立命館大も反撃に転じ、38分に相手ペナルティ→タッチキックで得た敵陣でのチャンスでBKが左へ展開。大外でパスを受けたWTB三浦遼太郎がタックルを受けながらインゴールに押さえ、5点を返す。しかし関西大も42分にSO池澤が左中間約35メートルのPGを成功。22-15と関西大がリードして前半を折り返した。
一進一退の流れは後半も続く。先に取ったのは追いかける立命館大だ。45分、ゴール前ラインアウトからFWの近場勝負は押し切れなかったものの、右オープンに振ってCTB中村颯汰がギャップを縫うようなスラロームランでトライ。SO山下真之介のコンバージョン成功で22-22の同点に追いつく。
関西大も53分、得意のラインアウトからモール勝負を挑み、ジワジワと押し切ってHO垣本が左中間にグラウンディング。27-22と引き離しにかかるが、立命館大もすかさず立て直し、66分に10フェーズにおよぶ連続攻撃を仕留め切ってFB吉本がこの日2本目のトライをマークする。ゴールも決まり、29-27と立命館大が初めてリードを奪った。
しかしその直後、関西大にビッグプレーが飛び出す。キックオフを深く蹴り込むと、入替で入ったばかりの立命館大のキャプテン、SO森駿太がタッチへ蹴り出そうとするところへ鋭い出足でプレッシャーをかけ、LO中村将人が狙い澄ましたキックチャージ。弾むボールをみずから拾ってポスト右になだれ込み、貴重な逆転トライを挙げる。これで34-29と、ふたたび関西大が一歩前に出た。
ラスト10分は消耗で足が止まり始める中、両者の意地が激しくぶつかり合うシーンが連続する。キックとラインアウトを軸にエリアを押し上げようとする関西大。立命館大は身上のスピーディーなラインアタックで果敢にボールを動かし、突破を図る。
そして迎えた88分。細い糸をたぐるように望みをつないできた立命館大は、相手ゴール前5メートルの位置でマイボールラインアウトの絶好のチャンスをつかむ。
トライとゴールで逆転というところまで見えた場面だったが、この最大の勝負どころで、関西大はまたしても相手のサインを読み切りLO中澤が値千金のラインアウトスティールに成功。そのままタッチに蹴り出し、フルタイムを迎えた。
劇的な展開で今季2勝目を手にし、トータルの勝ち点を9に伸ばした関西大は、同8の立命館大、摂南大を上回って暫定ながら5位に浮上。対立命館大戦の勝利は実に33年ぶりで、まさに大きな意味を持つ1勝となった。「創部100周年なのにまだ何も残せていなかった。33年ぶりに立命館に勝てたのは、自分たちにとって本当に価値のあることだと思います」。正確なラインアウトスローに加え力強いボールキャリーでもチームを牽引したHO垣本主将の表情にも、充実の色がにじむ。
敗れた立命館大は終始ラインアウトが安定せず、プラン通りにゲームを組み立てられなかったことが大きく響いた。もっともその状況でもワンチャンスで逆転というところまで追い上げたのは地力の証であり、BKの切れ味鋭いラインアタックは、今季のチームのポテンシャルの高さを表していた。まだ自力で入替戦圏を脱出できる可能性は残っており、次節の近畿大との最終戦(12月2日14時キックオフ@花園II)は、文字通りマスト・ウィンの戦いとなる。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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