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関東大学対抗戦Aは、11月5日(日)、全4試合が行われ、秩父宮ラグビー場の第2試合で帝京大と早大の全勝対決が実現した。昨年度の全国大学選手権決勝と同カードではあるが、その時のスコアは73-20で帝京大の圧勝。今年度の春季大会、夏合宿でも帝京大が勝っており、現時点で早大がどこまで差を詰めるのかが一つの焦点だった。
この時期にしては珍しく24度という暑さの中で、午後2時、帝京大SO井上陽公(4年)のキックオフで試合は始まった。まずは互いに陣地を進めようとキックの応酬。先制したのは帝京大だった。前半5分、早大陣22mライン右のラインアウトからHO江良颯(4年)が縦突進し、左オープンに展開してタッチライン際でWTB高本とむ(4年)がタックルされながらもタッチラインの外に出ずにボールを残す。FL青木恵斗(3年)の突進からさらに右へ展開し、SO井上がうまくタメをつくり、CTB大町佳生(2年)から後方から走り込んできたCTB上田倭土(1年)にパスが渡ってトライ。井上のゴールも決まって、7-0とした。
この後も帝京大はスクラムで圧力をかけ、ボールをキープして攻め続けるが、ディフェンスを崩しそうになるところで、パスミスなどハンドリングエラーでチャンスを逸する。ようやく追加点を挙げたのは前半38分だった。早大陣ゴール前の左のラインアウトからLO尹礼温(4年)がタックラーを弾き飛ばしながらゴール中央にトライ。ゴールも決まって、14-0とする。
伊藤大祐(早稲田大学)
このまま前半終了かと思われたが、帝京大はスクラムで反則を得ながらそのタッチキックが外に出ず、早大のカウンターアタックを受ける。早大はFB伊藤大祐キャプテン(4年)が自らのキックを確保して前進し、さらにゴールライン方向へキック、転々とするボールを帝京大の選手と競り合うも、そこに走り込んできたNO8松沼寛治(1年)がボールをかっさらうようにトライ。ワンチャンスをものにして、14-7として前半を終了した。
ラグビー 関東大学リーグ戦2023
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 帝京大学
後半5分、帝京大は早大のパスミスを足にひっかけて前進。井上がさらに蹴ったところで、高本がこのボールを確保してインゴールへボールを運んだ。井上のゴールも決まって、21-7とリードを広げる。しかし、早大は13分、ゴール前のラインアウトモールからHO佐藤健次(3年)がトライし、21-14と再び差を詰める。
17分、帝京大が早大に陣深く入ったところでPKを得る。帝京大がゲームを支配する展開から、多くの観客はタッチキックでラインアウトを選択するだろうと思ったのかもれない。しかし、江良颯キャプテンは、PGを選択。手堅い判断に観客席がどよめいた。「チームメイトも、タッチやろ?という顔をしていましたが、あそこは点差を広げて心の余裕を持った方がいいと判断しました」(江良)。
奥井章仁(帝京大学)
その言葉通り、26分には早大にラインアウトからディフェンスを崩されLO村田陣悟(4年)にトライを奪われたが、同点にはされず、スコアは24-21。33分にはFL奥井章仁(4年)がトライを追加。40分には自陣10mライン付近で相手ボールを奪うと、FL青木恵斗(3年)がゴールライン方向に大きくキック。早大のディフェンダーの足が止まっているのを横目に高本が快足を飛ばしてボールを確保し、ダメ押しのトライをあげた。
帝京大の江良キャプテンは「苦しい試合のなかで勝てたのは収穫ですが、課題、修正点は多く見つかった。次の明大戦、その先の日本一に向かって加速していければと思います」とコメント。一方、敗れた早大の伊藤大祐キャプテンはフィジカル面のぶつかりあいでは手ごたえをつかんだようだ。「悔しい気持ちが強いです。しかし、疲れて動けないということもなく、ボールを失った数を直すことができれば、怖くないと思いました」。今季CTBでプレーしてきた伊藤をFBに下げたことは相手キックのキャッチ、カウンターアタックでも功を奏していた。
早大の大田尾竜彦監督は「きょうは結局スクラム」と、HO江良、PR上杉太郎(4年)を軸にした帝京大のスクラムに圧力を受けたことが大きな敗因だったと話した。帝京大はミスの多い内容だったが、スクラムで反則を奪うことで流れ引き寄せた。今シーズン中の再戦が実現するかは未知数だが、帝京大の勢いを止めるスクラムを組めるかどうかが対戦チームの勝利への鍵になる。別会場で行われていた明大対慶大は、66-40で明大が勝ち、全勝は帝京大と明大のみ。両者は、11月19日(日)、秩父宮ラグビー場で対戦する。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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