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強みを前面に押し出して迷いなく攻め合う動きの激しい展開の中、終始先にスコアを重ねて優位を保ち続けた。優勝への生き残りをかけた2位流通経済大と3位東洋大の激突は、序盤に集中力を発揮し主導権を握った流通経済大が、食い下がる東洋大を47-38で振り切った。
最初のトライが生まれたのは前半13分だ。自陣22メートル線付近のターンオーバーからすかさず切り返して相手陣ゴール前でマイボールスクラムの好機をつかんだ流通経済大は、強烈なプッシュでアドバンテージを得るやすかさず右に展開。フラットに走り込んだCTB杉崎晴人がタックルを受けながら体を伸ばし、左中間に押さえる。
16分、ふたたび相手のエラーに乗じて一気に敵陣レッドゾーンへ攻め込むと、テンポよくラックを連取してWTB當眞寮がフィニッシュ。さらに直後の19分には、またもこぼれ球を確保してカウンターに転じ、FL篠澤輝があざやかなランで左ライン際を駆け抜ける。難しい角度のゴールをSO佐々木開が決め、リードは21-0まで広がった。
ここまでは予想外の一方的な展開。しかし東洋大も22分過ぎに反撃に転じる。中盤での相手の不用意な反則から敵陣22メートル線内に攻め入り、FWがラインアウトモールをドライブ。結束を保ったままジリジリと押し切り、まずは1トライを返した。
関東大学リーグ戦2023 特集ページ
これで息を吹き返した東洋大は、29分過ぎにもラインアウト起点のアタックでテンポよく前進。快足CTBモリース・マークスがディフェンスのギャップを切り裂き、サポートしたWTB杉本海斗が右中間に飛び込む。杉本がみずからコンバージョンを通し、7点差に詰め寄った。
ただ、流通経済大もズルズルとは崩れない。32分、中盤ラインアウトから右オープンに展開し、SO佐々木が前に飛び出す東洋大ディフェンスの裏へキック。弾むボールをFL原田季弥キャプテンが胸に収め、スピーディーな球出しからCTB杉崎が抜け出して左コーナーへ走り切る。28-14とふたたび点差を広げると、終了間際の自陣ゴールラインを背負ってのピンチもしっかりと守り切り、前半を折り返した。
関東大学リーグ2023
【ハイライト動画】流通経済大学 vs. 東洋大学
2トライ2ゴール差で迎えた後半。立ち上がりの10数分間は激しいせめぎ合いで拮抗した攻防が続いたが、55分、追いかける東洋大が均衡を破る。中盤ペナルティからタッチキックで敵陣レッドゾーンに入ると、ラインアウトモールを力強くドライブ。20メートルあまりを押し切り、ワンチャンスで逆転圏内の21-28と詰め寄る。
しかし流通経済大はここからがたくましかった。58分過ぎ、中盤のスクラムとその後のラックにプレッシャーをかけてターンオーバーを勝ち取ると、NO8ティシレリ・ロケティが大きくゲイン。テンポを落とすことなく左右にボールを動かし続け、最後はWTBアポロサ・デレナラギが跳ねるような走りで右コーナーを陥れる。
その5分後にはまたもスクラム押し込んでペナルティを獲得し、一気に敵陣ゴール前へ。東洋大の厳しいタックルを受けながらも攻撃を継続し、縦に切り込んだFB中村楓馬が壁を突き破る。残り15分を切ったところで、40-21と大きく突き放した。
もっともこれで勝負は決まらなかった。2年連続の大学選手権出場に燃える東洋大は72分、クイックタップからの速攻でゴールラインに迫り、左順目展開でオーバーラップを作ってWTB杉本が左隅にグラウンディング。ゴール成功で12点差とする。
流通経済大も直後にCTB杉崎がこの日3本目のトライを挙げて引き離すが、東洋大は続くキックオフでボールを確保し反撃。SO天羽進亮が防御の隙間を抜け出して約50メートルを走り切り、あきらめない姿勢を示す。そして80分を大きく過ぎたロスタイム9分、センタースクラムからBKのサインプレーで途中出場のルーキーWTB坂本琥珀が右ライン際を独走。チーム6本目のトライをマークしたところで、フルタイムとなった。
モットーの「ダイナミック・ラグビー」を体現する意欲的にボールを動かすアタックで、難敵から7トライを奪って全勝を維持した流通経済大。細かなミスと反則で突き放しきれなかった点は反省材料だが、どのエリアからでも一発でトライまで持っていける決定力は大きな魅力を感じさせた。日本大、東海大との残り2戦でどこまでディフェンスの厳しさを高められるかが、9年ぶりのリーグ戦優勝へのカギだろう。
敗れた東洋大も序盤の劣勢からよく勢いを盛り返し、最後は9点差までスコアを縮めてプライドを保った。こちらも受けに回った時の粘りが今後の課題となるが、さまざまなパターンで6トライを取ったことは、残る2試合に向け小さくはない意味を持つはずだ。
なお同日同会場で行われた第1試合で法政大が30-29で大東文化大に勝利し、4位を争う両校が勝ち点10で並んだ結果、勝ち点25の東海大と22の流通経済大は3位以内が確定。最後の大学選手権出場枠を巡る争いは、勝ち点16の3位東洋大が一歩リードしている状況だが、4位法政大、5位大東文化大に加え勝ち点9の6位立正大、同7の7位日本大もまだ可能性を残している。最終節まで緊迫した順位争いが繰り広げられそうだ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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