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【ハイライト動画あり】「大会を通して成長した」イングランドが銅メダル!3位決定戦でアルゼンチンを撃破。ラグビーワールドカップ2023フランス大会
ラグビーレポート by 多羅 正崇
大会前にイングランドの3位を予想した人は多くなかっただろう。
当の選手でさえ、前向きではなかった。
「私たちは結束しておらず、パフォーマンスも不十分でした。2、3カ月前に時間を巻き戻して『あなたは銅メダルを獲得し、世界で3位になるだろう』と言われても信じられなかったでしょう」
イングランドのSOオーウェン・ファレル主将も、大会中にこそ成長したと総括した。
機先を制したのはイングランド。開始13分で13点を先取した。
まずFLトム・カリーの敵陣ジャッカルでショット成功。前半7分には短い攻撃回数(5フェーズ)でトライを奪い、2本目のPGも追加。効率的に13点をリードしたのだ。
南米最強アルゼンチンも魅せる。
お互いにPGを追加して13点ビハインド(3-16)の前半36分。
折り返しながらピッチ幅いっぱいに順目攻撃を9回続け、フィニッシュはSHトマス・クベリ。全ランナーがゲインする攻撃力で6点差(10-16)に詰め寄り、前半を終えた。
めまぐるしくスコアボードが動いたのは後半開始直後。
まずウイング経験が豊富なSOサンティアゴ・カレーラスが、相手HOダンを振り切って独走トライ。ゴール成功で16-15と逆転し、この日初めてリードを奪った。
しかしイングランドは、その直後だった。
「私のミスタックルが相手からのトライに繋がり、チームにとって致命的になる可能性がありました。ミスを取り返すことが出来て嬉しかったです。」(イングランドHOダン)
タックルを外されて失点原因を作ったHOダンが、敵陣で相手SOカレーラスのキックをチャージ。再獲得から逆転トライを奪い、イングランドがふたたび6点リード(23-17)を奪ってみせた。
勝負の分かれ目は、後半35分のショットだったろう。
点差は3点(23-26)。アルゼンチンが2本のPGで詰め寄っていた。
アルゼンチンはWTBマテオ・カレーラスの好走などで敵陣ペナルティを奪取。ショットを選択肢し、途中出場のベテラン司令塔、ニコラス・サンチェスがキッカーとしてHポールに向かった。
蹴り上げられた楕円球は、しかしHポールの左に反れた。
諦めないアルゼンチンは逆転を懸けて自陣からアタック。しかし足元でボールが暴れる不運もあり攻撃フェーズが伸びない。
最後はターンオーバーを狙ったラックでペナルティを取られ、万事休す。
ベスト4唯一の北半球チームだったイングランドが、死闘を制し、3位の座におさまった。
「負けたことを受け入れるのは難しいです」と、アルゼンチンのマイケル・チェイカHCは敗戦後に語った。
「モールとスクラムは一貫性を保つ必要があります。効果的な時もありますが、ミスをする時もありました。もっと一貫性が必要です」
日本戦は3トライの活躍で試合の最優秀選手に選ばれたWTBマテオ・カレーラスは「本当に悲しいです」と、悔しさを噛みしめた。
「このチームはもっと出来たと思いますし、後味の悪いこの4位という結果は、私たちに相応しくはありません」
アルゼンチンのHOフリアン・モントージャ主将は「私たちはアルゼンチンを誇らしい気持ちにしたいと思っていました」と悲痛だったが、さらなる進化を誓った。
「時に最善の努力をしても足りないことがあります。今日がまさにそうでした」
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 3位決定戦
【ハイライト動画】アルゼンチン vsイングランド
「しかし私たちは挫けず、改善を続けるべきです。痛みはあるものの、継続する必要があります」
プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)は、イングランドのFLサム・アンダーヒル。24タックルを放った頑強なフランカーは「信じられません」と喜びもひとしお。
HOダンは大会最終戦を勝利で飾り、「望んでいたメダルではなかった」としながらも、「銅メダルを獲得できて私たちは喜んでいます。これは私たちや故郷の皆にとっても多くの意味を持ちます」と充実感を口にした。
イングランドを3位に導いたスティーヴ・ボーズウックHC。「選手は本当に努力をしてきたので嬉しい」と、勝利を噛みしめた。
「7試合中6試合に勝つことが出来ました。世界チャンピオン(南アフリカ)には1点差で負けました。これはこのチームの成長を表していると思います」
大会前に強かったチームより、大会中に強くなったチームが勝ち進む。大会前の不調から立ち直ったイングランドは、ラグビー発祥国の未来に資する結果を手にした。
「私たちは金メダルを目指していましたが、それは達成できませんでした。しかし最終戦という経験はとても大事で、この先にとって重要なものになるでしょう」(イングランド、ボーズウィックHC)
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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