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バトル・オブ・ザ・ジャイアント 4度目の頂点に立つのはどっちだ? 上り調子のNZに対し、南アはFW15名、BK8名編成で挑む
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
世界のラグビー史の中で抜きんでた実力を持ち続けた両者が、第10回ラグビーワールドカップ(RWC)のファイナルで相まみえる。優勝は3回ずつ。史上最多の4度目の王座に就くのはどちらか。舞台は、パリ近郊のサンドニのスタッド・ド・フランス。8万人の大観衆が集うことになるだろう。10月28日、午後9時(日本時間:29日、午前4時)キックオフ。レフリーは、テストマッチ110試合という最多記録を誇るウェイン・バーンズ。腐敗、詐欺・不正を専門とする刑事裁判の弁護士でもある。激闘を勝ち抜き、決勝にたどり着いた両雄を、当代一のレフリーが見守る。ラグビーファンにとって贅沢な時間がまもなく始まるのだ。
戦績は105戦して、ニュージーランド(NZ)が62勝39敗4引き分けと勝ち越しているが、今大会直前の8月25日、ロンドンのトゥイッケナムで行われたテストマッチでは、南アフリカ(SA)が35-7で勝っている。前半終了間際にNZのLOスコット・バレットがレッドカードを受け、後半は14人で戦ったという事情もあった。ディフェンス・コーチのスコット・マクラウドは「この試合は、違ったシナリオにどう対応するのかを思い出させてくれた」と、この試合以降のチームの成長を語る。
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26日に発表された試合登録メンバーを見ると、NZは準決勝でアルゼンチンを下したメンバーから先発とリザーブを一名ずつ変更した。FW第二列のLOはブロディー・レタリックが先発し、先発だったサム・ホワイトロックがリザーブに回る。またリザーブのPRで、フレッチャー・ニューウェルに代わってベテランのネポ・ラウララが入った。8月に南アフリカに大敗したメンバーと比べると、FWにHOコーディ・テイラー、LOレタリック、FLシャノン・フリゼルが加わっており、大きな戦力アップだ。
一方のSAは、メンバー発表だけでファンの気持ちを熱くした。準々決勝、準決勝とリザーブだったSHファフ・デクラーク、SOハンドレ・ポラードを先発で起用し、リザーブ8名中7名をFW(第一列3名、二列2名、三列2名)で固め、BKの控えはウィリー・ルルーだけという思い切った編成だったからだ。ジャック・ニーナバーヘッドコーチは「勝てるメンバーを選んだ。23人で戦う」とコメントし、NZにフィジカルで引けをとらない屈強な選手を並べた。
スクラム、ラインアウトのセットプレー、フィジカルバトルで優位に立ち、デクラーク、ポラードのキックで前進、激しく圧力をかけるディフェンスでボールを再獲得し、WTBチェスリン・コルビ、カートリー・アレンゼを走らせる。そんなシーンが目に浮かぶ。専門職のSHに負傷者が出た場合は、コルビがカバーする可能性が高いが、BK陣は複数のポジションをこなせる選手が多く、FWの控えのクワッガ・スミスはBKでもプレーできる。
SAの戦い方は明確。対するNZはフィジカルバトルでも負けていないが、SAの激しいコンタクトをできるだけ避けたい。SOリッチー・モウンガ、CTBジョーディー・バレット、FBボーデン・バレットのキックを上手く使って地域を進め、できるかぎりSA陣で戦おうとするだろう。キックの精度は勝つために重要だ。
単純に言えば、パワーとスピードの対決だが、焦点の一つはスクラム。SAは準決勝でイングランドのスクラムの成功率を60%に抑えることで勝利した。決勝点もスクラムで圧力をかけることで得た反則からのPGだった。NZは決勝トーナメントに入ってから、スクラムの成功率は100%と安定している。ここで優位に立てば南アフリカに勝機が出てくる。逆にNZはスクラムで対等以上に戦い、南アフリカから反則を誘うことができれば試合運びも優位になる。大一番では、お互いに意図通りにできないプレーも多くなるだろう。そこで我慢しつつ、勝利への鍵を探す戦いになる。
個々の選手に光を当てると、NZが優勝した場合、サム・ホワイトロックは2011年、2015年大会に続いて、3度の優勝を経験する史上初の選手になる。NZのWTBウィル・ジョーダンは、ここまで8トライをあげてRWCの個人トライ記録に並んでいる。ジョナ・ロムー(NZ)、ブライアン・ハバナ(南ア)、ジュリアン・サヴェア(NZ)が保持する記録だ。あと1トライで史上最多となり、同時にトライ王にも輝く。NZのもう一人のWTBマーク・テレアと、控えのPRタマティ・ウィリアムズは、ワールドラグビーアワードの年間最優秀新人賞にノミネートされている。決勝で活躍すれば受賞する可能性が出てくる。
このほかワールドラグビーアワードでは、年間最優秀コーチに、NZのイアン・フォスター、SAのジャック・ニーナバー、年間最優秀選手賞に、NZのアーディ・サヴェア、SAのエベン・エツベスがノミネートされている。他チームの候補者もいるので、決勝を戦うチーム以外からの選出もあり得るが、個人賞争いも注目点のひとつだ。さまざまな角度から楽しめる決勝戦である。緊迫感ある時間が続くことは間違いない。主導権を握ろうとせめぎ合う最初の20分は息をのむ展開になるだろう。キックオフが待ち遠しい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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