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オールブラックスのハカ「カパ・オ・バンゴ」
10月20日(金)、パリ近郊サン=ドニの「スタッド・ドゥ・フランス」で、ラグビーワールドカップ2023の準決勝1試合目が行われた。初の決勝進出を狙うアルゼンチン代表(世界ランキング7位)と、4度目の優勝を目指す「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表(世界ランキング2位)の南半球の2チームが激突した。
2大会ぶり3度目のベスト4に進出した「ロス・プーマス」こと、アルゼンチン代表。マイケル・チェイカHC(ヘッドコーチ)は、準々決勝から先発をSH(スクラムハーフ)の交代のみにとどめた。
アルゼンチンvs.ニュージーランド
FW(フォワード)は、キャプテンのHO(フッカー)フリアン・モントーヤ、PR(プロップ)トマス・ガージョ、を筆頭に、LO(ロック)はギド・ペッティ、トマス・ラバニーニ、FL(フランカー)ファン=マルティン・ゴンサレスと、マルコス・クレメル、NO8(ナンバーエイト)には50キャップ目となるファクンド・イサが入った。
BK(バックス)はSH(スクラムハーフ)ゴンサロ・ベルトラノウが先発し、SO(スタンドオフ)サンティアゴ・カレーラスとコンビを組んだ。WTB(ウイング)には日本代表戦で3トライを挙げたマテオ・カレーラス、エミリアノ・ボフェリが入った。ベンチには100キャップを超える38歳のHOアガスティン・クレービー、SOニコラス・サンチェスらベテランが控える。
開幕戦でフランス代表に敗れたものの、順調に9度目の準決勝に進出したオールブラックス。イアン・フォスターHCは準々決勝戦からFW1名、BK1名を変更した。
キャプテンのFLサム・ケインを筆頭に、LOは史上初めてワールドカップで4度目の準決勝となった151キャップのサム・ホワイトロックが先発に上がり、NO8はアーディー・サヴェアが入った。
BKは、SHアーロン・スミス、SOリッチー・モウンガのハーフ団、CTB(センター)にジョーディー・バレット、WTBはウィル・ジョーダンと、準々決勝はメンバー外だったマーク・テレアが先発に復帰し、FBはボーデン・バレット(トヨタヴェルブリッツ)が務める。控えにはLOブロディー・レタリック、WTBダミアン・マッケンジーらが入った。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会
【ハイライト動画】準決勝 アルゼンチンvs.ニュージーランド|オールブラックス、7トライで快勝
両者はこれまで36回対戦し、オールブラックスが33勝1分2敗と圧倒。ただ、この4年間で2度、アルゼンチン代表が勝利しているが、ワールドカップでは過去3度対戦し、いずれもニュージーランド代表が勝っている。
時折、小雨が降る中、オールブラックスのハカ「カパ・オ・バンゴ」の後、試合はキックオフされた。序盤はアルゼンチン代表が相手陣でボールを継続。前半5分、相手の反則を誘い、WTBボフェッリがPG(ペナルティゴール)を決めて3点を先制する。
オールブラックスもモールでプレッシャーを掛けて、11分、相手陣でチャンスを掴む。相手陣奥のラインアウトを起点にモールを押し込んだ後、ラックを連取、最後はBKに展開しWTBジョーダンが右中間にトライを挙げて7-3と逆転に成功する。さらに17分、自陣でジャッカルを決めた後、カウンターを仕掛けてボールを継続、最後はCTBバレットが右隅に押さえて12-3とリードを広げた。
その後は拮抗した状態が続き、35分にアルゼンチン代表、38分にニュージーランド代表がPGを決めて15-6とした。ロスタイム、オールブラックスがスクラムを押し込み、相手の反則を誘う。さらに相手陣22mのラインアウトからチャンスを得て、WTBテレアがゲインし、最後はSHスミス、FLシャノン・フリゼルとつないで左隅にトライを挙げ、20-6とオールブラックスがリードを広げて前半を終えた。
オールブラックスはFW戦でも圧倒
後半、黒衣軍団が畳みかける。1分、相手陣22m右サイドのスクラムを押し込み、NO8サヴェア、SHスミスとつないで、スミスが右端にトライ、SOモウンガのゴールも決まって27-6。さらに9分、SOモウンガが相手のギャップを突いてゲインし、最後はFWにこだわり、FLフリゼルがねじ込んで2本目のトライを挙げて34-6として勝負を決めた。
この後もニュージーランド代表は攻め手を緩めず、22分にはラインアウトから順目に攻撃し、最後はWTBジョーダンがトライ(39-6)。アルゼンチン代表は何とか1本返そうと攻め込むが、最後まで黒い壁を崩すことができなかった。
オールブラックス、アルゼンチンをノートライに抑える
25分、オールブラックスはLO スコット・バレットがイエローカードを受けて数的不利になったもの、33分、ラインアウトからWTBジョーダンがゲインし、自ら蹴ったボールをキャッチし、ハットトリックとなる3本目のトライを挙げて44-6とし、ノーサイドを迎えた。ニュージーランド代表がセットプレーでプレッシャーを掛け、攻めては7トライ、守っては相手をノートライに抑えて5度目となる決勝に進出した。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には攻守で光ったCTBジョーディー・バレットが選出。「とても素晴らしい。このグループにとっては新しい境地だ。私たちは4年前、準決勝の壁にぶつかった。このグループを誇りに思う。まだ終わったわけじゃない。来週の相手が誰であろうと、とてもタフな試合になる」)。
悲願の決勝進出は、またも叶わなかったアルゼンチン代表のチェイカHCは「選手たちは国のため、ファンのため、アルゼンチンの人々のために勝ちたかった。残念だ。チームはベストを尽くしてくれた」。
「ラックとスクラムでやるべきことができなかった。前半終了前に何度かあった重要なスクラムでは、いいポジションを取れていたのに、ボールを失ってしまった。ポゼッションを失い、トライを奪われた。同じことが後半の最初にも起こった。ニュージーランドのようなチームに対しては、わずかなミスが命取りになる。彼らはとても効率的で、我々のミスをすべて得点に変えてきた」と振り返った。
さらに指揮官は「悲しい瞬間ではなく、チームにとって誇らしい瞬間だ。私たちはワールドカップの準決勝にいた。まだ終わっていない。メダルを持って帰りたい。だから来週は僕らにとって大きな意味を持つ。決勝に行って何かできると、本当に思っていたから辛いが、今夜を乗り越えなければならない。ここから学んでまた強くなる」と3位決定戦に向けて前を向いた。
HOモントーヤ主将は「オールブラックスはセットプレー、スクラムで完全に支配していた。チャンスがあれば必ず得点する。彼らは信じられないようなチームで、今日は断トツでベストチームだった」。
「今日の我々は、見せたかったレベルにはほど遠い。打ちのめされているし、本当にがっかりしている。決勝でプレーするという夢は終わったが、まだやるべきことがある。今は本当に心が痛いが、僕らにはまだ戦うべきものがある。遠くから来てくれたファンのため、アルゼンチンのすべての人のため、来週は最高の形で終わらせる」と語気を強めた。
2015年大会以来の決勝進出となったオールブラックスのフォスターHCは、「ワールドカップの準決勝では、勝つことが目標だった。タフな戦いだった。アルゼンチンは試合の最初から激しく、我々に大きなプレッシャーをかけてきた。決勝は自分の仕事を楽しまなければならない」。
「私たちにとって、高いレベルで試合を遂行することが目的。そうすることで、チームは大きな誇りを持つことができる。トーナメントを戦い抜くには、それを楽しまなければならない。このグループの一員であることを誇りに思うし、コーチ陣も選手たちとうまくリンクしていて、いい相乗効果が生まれている」。
「だが、あと1週間残っている。明日の準決勝はポップコーンを食べながら観るよ(笑)。でも、どっちが勝とうが関係ない。私たちは自分たちのことに集中しているし、1日増えたことで精神的に一息つける。南アフリカは素晴らしいラグビーを見せてくれているが、イングランドも静かに成長している。スタイルの対比が興味深い」と話した。
キャプテンのFLケインは「いいスクラムを組み、いいドライブをしたかった。ハーフタイム直前のスクラムのペナルティで相手陣内に攻め込み、得点できたのは大きかった。この努力には本当に満足しているし、次もこのように戦いたい」。
「僕は先週、歴史的に見てもディフェンス面でトップクラスのチームがワールドカップで優勝することになると言った。僕たちのチームには、特にそのことに熱心な選手が何人かいるから、かなり強いと思う」とファイナルに向けて自信をのぞかせた。
アルゼンチン代表は銅メダルをかけて、10月27日(金)の3位決定戦を戦う。4度目の栄冠を目指すオールブラックスは、28日(土)にファイナルを迎える。
文:斉藤健仁/Photo by S.IDA
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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