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本試合のみどころは、前半と後半の序盤の攻防にあるだろう。特に慶大自慢のFW(フォワード)が、序盤からスクラムやモール中心に相手を圧倒できるかというところは、注目する価値がありそうだ。お互いのこれまでの戦いを振り返る。
慶大はラインアウトからモールを組み、FW戦に持ち込むという戦術に自信を持っているように見える。第3戦でも、相手のペナルティからタッチでインゴール付近まで前進し、モールを組んだ末、HO(フッカー)中山大暉が3トライを上げるなど、その形はいつ繰り出しても成功するという完成型になっている。
しかし、注目すべきはここ3戦での得点の時間帯だ。慶大はここまで8トライ含む、66点を記録しているが、前後半開始から20分までの得点は2トライ、2PG(ペナルティゴール)の16点。
2勝は両方逆転勝ちで、特に立教大学戦ではロスタイム10分、あるいはそれ以上の時間を戦い逆転勝ち。負けた筑波大学戦もロスタイムでの逆転負けであり、これまで追いかける展開や接戦になることが多かった。相手の疲れが出始めた頃に、FW中心に畳みかけ得点を上げれていること、リードされていても決して諦めない執念の2つが、この傾向を生み出しているようだ。
慶大伝統のディフェンス
終盤に得点が多い要因は他にもあるだろう。課題を試合中に解決する修正能力の高さである。3戦とも序盤はスクラムでコラプシングを取られたり、警告を受けたり、相手のスクラムのプレッシャーもあるとは思うが、組みにくそうなシーンも多かった。
青山学院大学戦でも初めはスクラムに苦戦し、得点を許してリードされる展開であった。しかし、相手のコンバージョン中などにPR(プロップ)岡広将主将が円陣を組み、気をつけるべきポイントをメンバーで共有し、勝負どころでスクラム戦を制すと、後半は無失点と見事なディフェンスを見せた。
試合に向けて「あらゆる場面を想定した準備をしている」と以前話していたが、それが試合での修正能力に活かされ、後半での猛攻や逆転勝利につながっているといえる。
慶大は前試合でSO(スタンドオフ)山田響、CTB(センター)永山淳が揃ってスタメン出場するなど、攻撃の布陣が整いつつある。また、青貫浩之監督はFW陣をほぼ固定させて戦ってきたが、第4戦にきてメンバーを少し変えてきた。左PRに木村亮介、右FL(フランカー)に田沼英哲を起用するようだ。木村は初スタメンとなるが、スクラムで対するは成蹊大最重量の右PR・鈴木翼だ。スクラムで優位に立つためにも、木村の第1列での躍動に期待がかかる。
対する成蹊大のここまでの戦いぶりを見ると、3試合で280失点と大量失点がどうしても目立ってしまう。早稲田大学戦では、相手の攻撃を受ける時間帯が長くなってしまった。早大SH(スクラムハーフ)・島本陽太のテンポの速いパス回しに翻弄された。慶大も、SH・橋本弾介の巧みなパス回しが攻撃のポイントになりそうだ。
また、成蹊大は反則から攻め込まれる失点もある一方、早大のFB(フルバック)矢崎由高の個人技による突破など、チームとしてではなく誰か1人の個人技によってゲインを許し、ディフェンスを崩されることが多かった。しかし、1つ1つのディフェンスシーンを見ると光る部分も多く、身長170cmのHO金子颯馬、身長169cmのFL井上雄太の相手の膝下に低く突き刺さるタックルや、PR・大舘幸長のタックルは早大相手も苦戦するほどであった。
BK(バックス)では、1年生のWTB(ウィング)網田優作がここまでデビューから2トライを上げるなど、網田のスピードには慶大も注意したいところ。成蹊大としては、序盤から相手に1つの大きなゲイン、トライを許す場面が多く、それが相手に勢いを与え大量失点してしまっているため、序盤のディフェンスの入りに集中したいところだろう。
前・後半の終盤に強い慶大か、序盤に穴がある成蹊大か。慶大にとっては優勝戦線に食い込むためにも3トライ以上の差をつけ、勝ち点5が欲しいところ。伝統校の慶大に、今季1部へ復帰した創部100周年を迎える成蹊大がどういう戦いを見せるか、キックオフの瞬間から目が離せなさそうだ。
文/写真:野上賢太郎(慶應スポーツ新聞会)
慶應スポーツ新聞会
慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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