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ラグビー コラム 2023年10月16日

【ハイライト動画あり】ラスト10分に底力を発揮したアルゼンチン、ウェールズとの熱闘制し2大会ぶりのベスト4進出決める。ラグビーワールドカップ2023準々決勝リポート

ラグビーレポート by 直江 光信
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勝利後、チームメイトのマテオ・カレラスと抱き合うアルゼンチンのフアン・クルス・マリア

ひとつのボールキャリー、一発のタックルに、負ければ終わりのノックアウトステージの緊張感は漂った。互いに一歩も引かぬ気迫満点のコリジョンが連続した80分。最終盤まで流れが揺れ動く白熱の激闘は、紙一重のかけひきを制すわずかな経験の差で、アルゼンチンに軍配が上がった。

立ち上がりの30分はウェールズの時間だった。身上の出足鋭いディフェンスから序盤の主導権争いで優位に立つと、14分にミドルエリアでリターンパスを受けたCTBジョージ・ノースがラインブレイク。SHガレス・デーヴィスへのオフロードからSOダン・ビガーへとパスがつながり、ポスト下に先制のトライを刻む。

このプレー中にレフリーのヤコ・ペイパーがふくらはぎを痛め、急遽カール・ディクソンに交代するアクシンデントがあったが、ウェールズの勢いは衰えない。21分にはビガーが正面約35メートルのPGを落ち着いて成功。これでリードは10-0に広がった。

ペナルティを蹴るアルゼンチンのエミリアーノ・ボフェリ

しかし29分のPG機をビガーが外すと、そこまで苦戦を強いられていたアルゼンチンが徐々に息を吹き返し始める。エナジーあふれる連続攻撃で敵陣レッドゾーンに攻め込み、39分にWTBエミリアーノ・ボフェリが正面のPGを決めて3点を返すと、前半ロスタイムにもボフェリがPGを追加。6-10とスコアを縮めて、最初の40分を折り返した。

アルゼンチンは後半に入っても勢いを持続し、44分にボフェリが3本目のショットを決めて1点差に迫る。その4分後には中盤での強烈なタックルで相手の反則を誘い、ボフェリが約55メートルのロングPGを成功。12-10と試合をひっくり返す。

しかしウェールズも当然ながら簡単には引き下がらない。アルゼンチンの不用意な反則に乗じて一気に相手陣22メートル線内まで前進すると、ラインアウト起点の連続攻撃から途中出場のSHトモス・ウィリアムズが自慢の脚力で判断よくラックサイドを抜け出し、インゴール中央にトライ。コンバージョンも決まり、17-12とふたたびウェールズが前に出た。

ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 準々決勝

【ハイライト動画】ウェールズ vs. アルゼンチン

アルゼンチンもここで気力をみなぎらせて猛反撃に転じ、60分以降はウェールズをゴール前に釘付けにする。LOギド・ペティがラックのオーバーに入った際、ウェールズのCTBニック・トンプキンスの頭部にヒットするヒヤリとしたシーンもあったが、TMOの結果問題なしと判定され、チャンスを継続。ペナルティからタッチキックへ蹴り出し、FWで真っ向勝負を挑む。

渾身のボールキャリーで前に出るアルゼンチン。ゴールラインを背負って懸命に守るウェールズ。息づまるタイトな攻防が続く中、この重要局面を制したのはアルゼンチンだった。68分、FWが粘り強く近場を攻め続け、最後は交代出場の巨漢PRジョエル・スクラビが密集サイドをねじ込んでトライ。WTBボフェリが難しい角度のゴールも決め、19-17と再逆転を果たす。

あきらめないウェールズも74分、WTBリオ・ダイアーの鋭いラインブレイクからビッグチャンスをつかみ、WTBルイス・リース=ザミットが左コーナーに飛び込んだが、アルゼンチンはCTBマティアス・モローニが驚異的なカバーディフェンスでタッチに押し出しトライを阻止。その後もスタジアム中に響き渡る大声援の後押しを受けて起死回生のビッグタックルを連発し、ジリジリとウェールズを追い込んでいく。

そして勝利を決定づけるトライが生まれたのは77分だった。グラウンド中央のスクラムでウェールズがBKでサインプレーを仕掛けたのに対し、アルゼンチンのSOニコラス・サンチェスがあざやかな読みでSOサム・コステローのパスをインターセプト。そのまま50メートルを走り切り、リードを9点に広げる。

これで余裕が生まれたアルゼンチンは、その直後にもキックチェイスのディフェンスからHOアグスティン・クレービーがしぶとくボールに絡んでペナルティを奪取。時計が80分を回る中、SOサンチェスが右中間30メートルのPGを決めて、29-17でフルタイムを迎えた。

イングランドとのプールマッチ初戦での完敗からよく立ち直り、試合を重ねるごとにパフォーマンスを向上させて、ついにトップ4にたどり着いたアルゼンチン。主軸選手の多くがキャリアのピークを迎え、この試合ではHOクレービー、SOサンチェスらベテランが勝負どころで決定的な仕事をやってのけるなど、ここにきてチームは急速に進歩を遂げつつある。ここから先はすべて格上相手の厳しい戦いとなるが、2大会ぶり3度目の準決勝では、さらに研ぎ澄まされた攻守を見せてくれるだろう。

「この試合が大一番になること、そして一致団結しなければならないことはわかっていた。(中略)すべてが思い通りにいくわけではない。大切なのはしっかりと反応することだ。我々は最後まで戦い続けることができた」(アルゼンチンHOフリアン・モントージャ主将)

一方のウェールズ。開始からの30分で10-0と先行し、その後も複数の得点機を作れていただけに、痛恨の準々決勝敗退となった。最終スコアは12点差と開いたが、内容としてはひとつのプレー選択、ひとつの判定で勝敗が入れ替わっていた可能性も十分ある際どいクロスゲームだった。

「(アルゼンチンは)ハーフタイム前に少し足が止まったように思ったが、そこで2、3のペナルティを許し、ゲームを振り出しに戻されてしまった。そのソフトなペナルティは残念だった」とウォーレン・ガットランド監督。FLジャック・モーガン主将も、「相手がフィジカルを押し出してくることはわかっていたが、規律とミスが自分たちを苦しめた」とみずから流れを手放したシーンを悔やんだ。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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