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「昨夜はジェイミーの横に座って一緒に飲んだ」。ラグビー日本代表、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが7年間の「ジェイミージャパン」の旅を振り返る
ラグビーレポート by 斉藤 健仁藤井雄一郎NTD
10月8日、ラグビーワールドカップ2023のプールD最終戦で、アルゼンチン代表に27-39で敗れ、2勝2敗の3位で今大会を終えたラグビー日本代表。激闘から一夜明けて、藤井雄一郎NTD(ナショナルチームディレクター)がオンラインで取材に応じた。
まず、前日のアルゼンチン代表戦を振り返って「目標は上を目指していったが、最後の最後で逆転するかどうかで、できなかった。本当に持っているものすべて出して戦ったが、勝ちか負けか、どこに責任かあるかというのは私の方にあると思う」。
「(タックルミスなど)いくつかもったいないトライはあった気がする。勝負どころで(得点を)取ったらすぐに取られるという、頑張らないといけないときに頑張れなかったのが、昨日の敗因だと思う。選手は頑張っていると思うが、勝負の力を入れないといけないところは、経験を積んでいかないと埋まっていかない。チーム内での競争も含めて選手層を厚くしていかないといけない」と冷静に話した。
前日の試合後はホテルに戻り、夕食をみんなで食べてお酒も飲んだという。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)とは、「横に座って一緒に飲んだ。本当にサンウルブズから始まって苦労もいっぱいしたし、いろんなことがあった。昨日、負けはしたが、今持てる力を全部出し切ったと思う。みんな悔しい思いもあるが、日本のラグビーを少しいい方向に向かわせられた、と話をしながら飲んでいた」。
アルゼンチン戦後の会見で穏やかな表情を見せたジェイミー・ジョセフHC
「部屋でたまたま2人きりになったとき、ジェイミーから『ありがとう』という感じで、その時だけ涙を流していた。2人でしんみりなっていた」。
スコッドが31名から33名に増えたが、2019年大会同様に今大会も5人の選手を起用することはなかった。「何度も使おうと試みた選手もいたが、試合数がずっと少なかった。主軸である選手も試合数が少なかったので、彼らに試合数を踏ませた。そういった意味で、前回と同じような感じになってしまった」。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会
【ハイライト動画】プールD 日本vs.アルゼンチン|日本、力尽きる。アルゼンチンに敗れプール敗退
この4年間について、強化担当の藤井NTDは「コロナの影響でまったく活動できなかったのと、ヨーロッパ勢は隔離や制限された中で、試合をやっていた。ニュージーランドも早く始めていた。そういう意味で、イーブンなコンディションがどうかというとそうではなかった。その中で工夫してやる、考えてやった。ただ、その影響がまったくなかったとは言えない」と正直に話した。
そして、2016年からのジョセフHC体制の7年間に関しては「本当に長い間、ワールドカップで勝てなくて、2015年で少し勝てるようになって、ベスト8まで行けるかまでいった」。
「その中で選手をしっかり使いつつ、若い選手も成長させて、ワールドカップ2大会でで6勝3敗。自分たちもできると確実に示したと思う。日本代表は続いていくので、次につなげるようにレビューして次にバトンを渡したい」と振り返った。
2015年大会は3勝しながら予選プールで敗退、今大会も2勝2敗で予選プール3位だった。ベスト8に行くために必要なことは?と聞かれて藤井NTDは、「以前から言っているが、日本代表はベストなチームで戦わないといけないので、いろんな選手にチャンスがあるという試合はなかなか組みにくい」。
「スーパーラグビーだったり、ジュニアの代表だったり、いろいろな工夫しながら国際経験を積ませる環境を作っていくのが一番だと思う。それが今後、大事なところ」と答えた。
藤井NTD
リーグワン、そして代表のスケジュールの相関に関して藤井NTDは「日本代表はすべての選手をリーグワンから借りている選手。イタリアだと、『ベネトン』と『ゼブラ』の2チームで、欧州の大会に出て、それが強化につながっている。リーグワンの日程と、日本代表のスケジュールが大切になってくる。
私がどうこう言えないが、来年、テストマッチが多いと聞いているので、選手のウェルフェアのところも含めて、リーグワンと話をして、いいスケジュールを組んでいければいいと思う」。
「代表スコッドの中で、若い選手は使うことができるが、リーグ全体の底上げは基本的にはジェイミーの仕事ではない。リーグの形だったり、やり方だったりは日本協会が考えていかないといけない。そこにいい選手を送り込むかという構造をしっかり作っていかないといけない。」。
「すべてがヘッドコーチの責任になっていると、ヘッドコーチは基本的にどんどん変わっていくので、協会がしっかり腰を据えてやらないといけないことだと思う」と話した。
練習を見守るジェイミー・ジョセフHC
最後にジェイミー・ジョセフHCと7年間、一緒に作ってきた日本代表を振り返って藤井NTDは、「コーチ陣、スタッフも変わらないし、絆という言葉を使っていたが、しっかり選手とも絆を持って、選手同士もそうですし、本当にファミリーというか、家族のようなチームをジェイミーは常に目指して強い組織を作っていた」。
「チームの作り方自体は昔から変わらず、チームとして+αを出せるような文化や、チーム作りをずっと心がけてきたと思う。それは他のコーチにない彼の強み」と語気を強めた。
ジェイミー・ジャパンは今後、帰国の途につき、10月11日夜に会見を開いて4年間、いや7年間の活動を終える。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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