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ラグビー コラム 2023年10月8日

【ハイライト動画あり】激戦、サモアがイングランドを追い詰めるも逆転負け。ラグビーワールドカップ プールD

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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健闘を称え合うSHタウマティネ(サモア/左)とPRマーラー(イングランド)

今週末でプールステージ全ての試合が終わり、準々決勝へ駒を進める8チームが決定するラグビーワールドカップ2023。10月7日(土)はリールで、プールD首位通過を決めているイングランド代表世界ランキング6位)に、わずかの可能性だが、ベスト8進出の可能性が残っていたサモア代表世界ランキング14位)が挑んだ。

イングランド代表は70-0で大勝したチリ代表戦からキャプテンのオーウェン・ファレル以外の先発メンバーを変更。SO(スタンドオフ)ジョージ・フォード、CTB(センター)ファレルの組み合わせで臨んだ。

一方、ここまで1勝2敗だが、準々決勝進出の可能性を残し、2027年大会の出場権獲得の3位も目指す位置にあったサモア代表。22-28で敗れた日本代表戦から先発9人を入れ替えた。

イングランドvs.サモア スタメン

FW(フォワード)第1列を全て入れ替え、PR(プロップ)マイケル・アラアラトアがキャプテンを務めた。元オーストラリア代表のSOクリスチャン・リアリーファノがベンチに下がり、大会終了後、清水建設江東ブルーシャークスでプレーする元オールブラックスのSOリマ・ソポアンガが先発した。

試合序盤、イングランド代表はスクラム、ラインアウトモールといったセットプレーでプレッシャーをかけ、ペースを握る。前半9分、ハーフウェイライン付近から短いパスでつないで左サイドに展開、最後はタッチライン際で待っていたLO(ロック)オーリー・チェサムが持ち込みトライ。CTBファレルのコンバージョンは外れたが、5点を先制する。

さらに、イングランド代表は18分にCTBファレルがPG(ペナルティゴール)を決め、名SOでキックの名手だったジョニー・ウィルキンソンが22年間保持していた、1179点の記録を抜き、イングランド代表の歴代最多得点記録(1180点)を更新し、8-0とリードを広げた。

だが、サモア代表も、自陣でのインターセプトから敵陣に攻め込み、22分に日本でも活躍したWTB(ウィング)ナイジェル・アーウォンがトライ。コンバージョンも決まり、8-7と追い上げる。

ラグビーワールドカップ2023 フランス大会

【ハイライト動画】プールD イングランドvs.サモア|あと一歩まで追い詰めるもサモアが逆転負け

勢いに乗るサモア代表は、29分にラインアウトから、キックパスがWTBアーウォンにつながりトライ。SOソポアンガのキックも決まり、サモアが8-14と逆転に成功。

さらに35分、相手のキックミスから、FBダンカン・パイアアウアがトライしたと思われた。しかし、TMOの末にサモア代表のノックオンによりトライにはならなかった。結局、サモア代表が14-8とリードしたまま前半を折り返した。

後半、過去1度も負けていない相手に負けられないイングランド代表は、最初から積極的にアタックを仕掛ける。ただ、サモア代表が後半8分にソポアンガがPGを決めて17-8とリードを広げる。

イングランド代表は18分にCTBファレルがPGを決めて11-17、さらに25分にも再びPGのチャンスがあったが、CTBファレルがショットクロックの時間超過で追加点を重ねることができない。

だが、26分にサモア代表CTBトゥームア・マヌが危険なタックルでイエローカードが出てシンビン(10分間の一時的退場)となってしまう。

数的有利になったイングランド代表はスクラムにこだわり、33分にマイボールスクラムから、途中出場のSH(スクラムハーフ)ダニー・ケアがトライを奪い、ゴールも決まりイングランドがついに18-17と逆転に成功する。

最後、イングランド代表は攻め込まれるシーンもあったが、サモアに得点を許さず、試合はそのままノーサイドを迎えた。

イングランドは、4戦全勝でプールD首位通過を決めた。一方のサモアはプール4位が決まり、2027年の出場権を逃した。この結果、日本代表の予選プール3位以内が決まり、2027年ワールドカップの出場権を獲得した。

LOチェッサム(イングランド)にタックルするSOソポアンガ(サモア)

POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、敗れたものの最後までイングランド代表を苦しめたサモア代表SOソポアンガが選出。「この2週間は残念なことばかりで、ジャージにふさわしい正当な評価を与えられなかったと思っている。今夜は誇りに思う。すべてを出し切った。序盤は劣勢に立たされたが、戦い続けた」と話した。

勝利を逃したサモアのセイララ・マプスアHC(ヘッドコーチ)は、「正直に言えば、選手たちのことを思うと胸が張り裂けそうになる。我々は勝利を得るために十分なことをした。スポーツとは残酷なものだ」。

「フランスに来てから、4試合目までにベストのプレーができているのは偶然ではない。私たちは真剣にプログラムを見直す必要があるし、ティア1のチームとのタフな試合を経験する必要がある。フィールドで一緒にいる時間、つまり試合数を増やすことだ。それは私たちが持っていない最大のリソースの1つだ。世界中に選手がいるのだから、常に大変なことだ」と話した。

キャプテンのPRアラアラトアは「本当にがっかりしている。このような結果になってしまったことに関しては、本当に言葉を失ってしまった」。

「私たちは、自分たちができることの片鱗を見せてきたし、今夜は80分間、誇れるパフォーマンスを見せた。すべてを出し切り、試合に勝つためにできることはすべてやった。イングランド代表の選手たちの中には、これまでで一番タフな試合だと自分で言っていた選手もいた。それがわかってよかったよ。母国の人たちに誇りに思ってもらえたと思う」と胸を張った。

なんとか逆転して、全勝でプールステージを終えたイングランド代表スティーブ・ボースウィックHCは「サモア代表は素晴らしいプレーをしたと思う。彼らはこれがワールドカップの決勝戦だと話していたが、まさにその通りだった。彼らは私たちを本当にテストし、多くのミスを強いた」と相手を称えた。

そして「(この試合を)詳細に検討し、今後より良いチームとなるよう、可能な限りの学びを得ようと思う。来週に向けて必要なテストだった。このテストから多くのことを学び、それを来週に生かしていきたい」と決勝トーナメントを見据えた。

キャプテンのCTBファレルは「(イングランド代表の最多得点記録を更新したことについて)あまり多くのことは考えていない。これから数日間、チームのことに集中するつもりだ。でも、とても光栄なことだよ。チームメイトは額入りの写真とプレゼントをくれたよ」と笑顔を見せた。

ただ、ショットクロックの時間がオーバーしたことについては「時計を意識していなかった。このようなことが2度と起こらないようにしたい。勝ててよかった」と反省していた。

サモア代表は1勝3敗で、プールDを4位で大会を終えた。一方、首位通過したイングランド代表は、10月15日(日)、マルセイユでプールCの2位(フィジー代表もしくはオーストラリア代表)と準々決勝を戦う。

文:斉藤健仁

★イングランドvs.サモア戦の試合データ

◆プールD 順位表
1位 イングランド:18(4勝0敗)
2位 アルゼンチン:9(2勝1敗)
3位 日本:9(2勝1敗)
4位 サモア:7(1勝3敗)
5位 チリ:0(0勝4敗)

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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