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ラグビー コラム 2023年10月2日

【ハイライト動画あり】決勝トーナメントに望みつないだオーストラリア、変幻自在のポルトガルから勝ち点5をもぎとる

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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他力本願ながら決勝トーナメント進出に望みをつなぐため、4トライのボーナス点を獲っての勝利が必要だった。オーストラリアは1987年から始まったラグビーワールドカップ(RWC)の歴史の中で一度もプール戦敗退の経験がない。ここまで1勝2敗の結果は、過去2度優勝を誇る強豪国の選手達にとって受け入れ難いことだっただろう。プール戦最後の相手は、16年ぶり2度目のRWC出場となったポルトガル。2大会でいまだ勝ち星のないポルトガルから4トライ奪うのは容易いことだと思われたが、現在のチーム状況では簡単なことではなかった。

10月1日、午後5時45分(日本時間2日、0時45分)サンテティエンヌのスタッド・ジェフロワでオーストラリアにとっての大事な戦いが始まった。前半4分、SOベン・ドナルドソンが先制PGを決める。まずは3点を取る慎重なスタートがチーム置かれた現状を物語っていた。その後は、「ミニ・フィジー」とも称されるポルトガルがフィールドの横幅一杯にスペースを使ってディフェンスを崩しにかかる。何度も大幅ゲインを許すオーストラリア。12分には、ポルトガルCTBペドロ・ビッテンクールにトライを奪われる。CTBトマーズ・アプレトンがオーストラリアのディフェンダーの前で正確なロングパスを決めたものだ。スコアは、3-7と逆転。

魅惑のアタックで観客を魅了するポルトガルだが、16分に地域を挽回しようとしたタッチキックが痛恨のダイレクトタッチ。オーストラリアにチャンスのラインアウトが訪れる。ここからオーストラリアは22歳のPRアンガス・ベルが大きく前進し、NO8ロブ・ヴァレティニがさらに前進して最後はLOリッチー・アーノルドがトライ。前半19分で10-7と試合をひっくり返した。続く21分、ゴール前に迫ったラインアウトからモールを押し込み、キャプテンのHOディヴィッド・ポレクキがトライして、17-7。26分、気迫あふれる突進を何度も見せたアンガス・ベルが密集サイドに走り込んでトライを追加し、24-7と突き放した。ボーナス点獲得まで1トライだ。

ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールC

【ハイライト動画】オーストラリア vsポルトガル

ポルトガルも前半終了間際にWTBホドリゴ・マルタが自陣からタックラーをかわして抜け出し、FLニコラス・マルチンズが左コーナーに滑り込んだが、ここは、オーストラリアFBアンドリュー・ケラウェイが懸命のタックルでタッチに押し出した。後半のポルトガルの追い上げを考えれば大きなプレーだった。

後半もポルトガルはオーストラリアのディフェンスが薄いタッチライン際にボールを運んでチャンスを作ったがトライは獲りきれず。逆にオーストラリアは後半7分、SHテイト・マクダーモットの好判断からFLフレーザー・マクライトがトライし、ようやく4トライ目のボーナス点を獲得。その後はオーストラリアに2枚のイエローカードが出たこともあって、ポルトガルが猛反撃。窮地に陥ったオーストラリアだが、WTBマリカ・コロインベテの強力なタックルなどでしのぎ、34-14で逃げ切った。

試合中は声を荒げていたエディー・ジョーンズヘッドコーチは、試合後は笑顔になり、選手を称えた。「13人になってしまいましたが、若いチームとしては多くの勇気を示してくれたと思います」。オーストラリアは、4試合を終えて2勝2敗の勝ち点11とし、ウェールズの勝ち点14についで2位に浮上。しかし、フィジーは1試合の残した勝ち点10をあげている。最終戦のポルトガルに勝利、引き分けでオーストラリアを上回り、ボーナス点1を獲って同点となった場合も直接対決で勝っているフィジーが上位。オーストラリアは、フィジーがボーナス点を獲らずに負けた場合のみ生き残ることができる。

フィジー対ポルトガルは10月8日(現地時間午後9時)に行われる。待つしかないジョーンズヘッドコーチは「こんな状況は初めてなのでどうしていいか分からない。とにかく、3日休んで3日練習し、試合結果を待ちます」と話した。敗れたポルトガルのアプレトン主将は、「選手たちを誇りに思うが、結果は残念」と複雑な表情をしていた。もう少しアタック面の精度が高ければ歴史的勝利もあり得る戦いだったし、勝算があって臨んだからこそだろう。オーストラリアを苦しめた実力からして、フィジー戦でRWC初勝利をあげる可能性はある。わずかな可能性を残したオーストラリアは、この日破ったポルトガルに運命を託すことになった。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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