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FLリーチのトライ
9月8日に開幕した、ラグビーワールドカップ2023もプール戦終盤に差し掛かった。現地9月28日(木)、ラグビー日本代表(世界ランキング14位)は、トゥールーズの「スタジアム・ドゥ・トゥールーズ」で、「マヌ・サモア」こと、サモア代表(同12位)と激突した。
2戦を終えて、ともに1勝1敗の勝ち点5で並んでおり、得失点差でサモア代表が2位につけている。日本代表としては、ベスト8進出に向けて、絶対に負けられない、どんな形であれ白星を挙げたい試合だった。
過去の対戦成績では5勝12敗と日本代表が負け越しており、今年7月、札幌での対戦では22-24で惜敗した。ただ、ワールドカップでは、2015年大会で26-5、2019年大会では38-19で、日本代表が勝利している相手だった。
初戦でチリ代表に勝利し、2戦目のイングランド代表戦は負けている日本代表。中10日と休養は十分であり、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はスクラム、ディフェンスが良かったFW(フォワード)はイングランド戦と変えず、BK(バックス)2名の変更にとどめた。
CTB(センター)ディラン・ライリーが先発に復帰し、負傷で離脱したセミシ・マシレワに替わり、レメキ ロマノ ラヴァがFB(フルバック)で大会初先発。また、SO(スタンドオフ)李承信が、初めてワールドカップのメンバー入りした。
一方、サモア代表のセイララ・マプスアHCは、アルゼンチン代表からFW2名、BK2名と計4人の選手を変更。ただ、試合前に共同キャプテンのLO(ロック)クリス・ヴイが「個人的な事情」でメンバーから外れ、元オールブラックスのスティーブン・ルアトゥアが先発に上がり、FL(フランカー)フリッツ・リーがゲームキャプテンを務めることになった。
ラグビーワールドカップ2023
【ハイライト動画】プールD 日本vs.サモア|激戦を制したジャパン、サモアの猛追を振り切る
まだ暑さの残る中、サモア代表によるシバタウが披露された後、試合はサモアボールでキックオフされた。試合早々の前半2分、日本代表がペナルティ。サモア代表はCTB(センター)アライ・ダンジェロ・レイルアが、50mの距離のあるPG(ペナルティゴール)を狙うが、ボールはクロスバーを越えず、先制点はならなかった。
無理にボールをつながず、ハイパントキックを軸に戦った日本代表は13分、スクラムからSH齋藤がボールをワイドに展開し、FBレメキが突破。SH齋藤からのパスをFL(フランカー)ピーター・ラブスカフニがねじ込みトライ。SO(スタンドオフ)松田力也がコンバージョンを決めて、7点を日本代表が先制する。
サモアも25分、スクラムからペナルティを獲得。PGを決めて3点を返すが、すぐに日本代表もSO松田のPGで10-3と突き放す。さらに日本は32分、再びスクラムを起点にボールを展開し、最後はSO松田の飛ばしパスを受けた,FL(フランカー)リーチ マイケルが左隅にトライ。松田のゴールも決まって17-3とリードを広げる。
さらに、この一連の攻撃の中で、サモア代表SHジョナサン・タウマテイネは、妨害プレーのため、イエローカードで10分間の退場となってしまう。ところが36分、日本代表もHO(フッカー)堀江翔太が、FBダンカン・パイアアウアへの危険なタックルでイエローカードが出てしまい、14対14となる。サモア代表はラインアウトからモールを押し込み、最後はHOセイララ・ラムが持ち込んでトライ。17-8と日本リードで前半が終了する。
後半序盤は日本代表がボールを支配するも、なかなか得点まで結びつかない。そんな中、7分に、サモア代表WTBベン・ラムが、FLラブスカフニへの危険なタックルでイエローカードとなり、バンカーシステムでの裁定でレッドカードに変更。サモアは残り30分を14人での戦いを余儀なくされる。
すると10分、数的有利となった日本代表はラインアウトからモールを少しずつ押し込み、最後はキャプテンのNO8(ナンバーエイト)姫野和樹がトライを挙げて22-8。さらに16分にSO松田のPGで、25-8とリードを広げた。
ディフェンスを振り切るWTB松島幸太朗
日本代表は23分、ディフェンスで相手のミスを誘い、WTB(ウィング)松島幸太朗のトライと思われたが、TMOの末にノックオンの判定となり、追加点を挙げることができない。
すると残り20分切ってから、サモア代表はFWを中心に近場をピック&ゴーで攻め込み、25分、LO(ロック)テオ・マクファーランドのゲインから、チャンスを作り、最後はSHメラニ・マタヴァオから、FBダンカン・パイアアウアに渡ってトライ。コンバージョンも決まり、10点差に追い上げる。
日本代表も35分、SO松田のPGで3点を追加するが、38分、サモアは猛攻を続けて最後はSOクリスチャン・リアリーファノが中央左に飛び込んでトライ。自身でゴールも決めて28-22とした。
1トライ&1ゴールで逆転される点差となったが、日本代表は集中力の高い守備を見せて、試合はそのままノーサイド。「拮抗したきつい状況でのキーワードとして、『サムライタイム』という言葉を作った。自分たちの役割、勇気、メンタリティーを出すために、『サムライコール』で全員が自分たちで同じ画を見て、ディフェンスできたことは良かった」(姫野)。
POMのレメキ ロマノ ラヴァ
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、効果的なゲインを繰り返したFBレメキが選出。「本当に勝ってよかった。(FBとして初先発)準備とか、そんなに変わってないが、自分の仕事をやって、国とチームメイトのために頑張れればいいと思っていた」。
「トライを取りたかったけども…。ボールを持ったら常に前に行っていたし、きつい時でもちゃんと行けてプレッシャーをかけることができた。プラン通りうまく成功した。ワールドカップは本当に最高。日本人も結構多かったし、みんなの応援の声がめっちゃ聞こえた。めっちゃ力になった!」
マプスアHC(左)とゲームキャプテンのFLリー
惜しくも敗れたサモア代表のマプスアHCは「やるべきことをうまく実行できなかった。もう少しボールをキープできていれば、もっと得点を取れただろう。私たちはそれを克服できていない」。
「それは間違いなく、私自身とコーチングチームが全責任を負っている部分だ」と悔やみながらも、「まだ1試合残っている。準々決勝には進めないかもしれないが、2027年オーストラリア大会への出場権を自動的に獲得できるようにしたい。イングランドと対戦するチャンスはそう多くないので、その試合にすべてをかけるつもりだ」と前を向いた。
ゲームキャプテンを務めたFLリーは「実行はできなかったが、試合中の選手たちの努力を責めることはできない。修正可能なことは修正しなければならない」と話した。
ジェイミー・ジョセフHC
勝ちきって2勝目を挙げた日本代表のジョセフHCは「非常にタフな試合で、サモアの選手は大きくてフィジカルが強く、私たちに立ち向かって来た。試合そのものは、まさに腕相撲だった」。
「サモア代表が仕掛けてくる場面もあったし、試合を通して終始奮闘し続ける必要があった。チームとして来週に向けて、1つ2つ取り組まなければならない事がある。今日の試合の意味は、準々決勝に進むチャンスを得たということだ。勝たなければならないテストマッチだった」と振り返った。
トライを挙げるだけでなく、ジャッカルも決めたキャプテンのNO8姫野は「本当にタフなゲームだったし、勝ててホッとしている。チームを誇りに思うし、チームのみんなで勝ち取った勝利。アタックのクオリティー上がっていることは喜ばしいことで、アルゼンチン戦に向けてポジティブだと感じる。その中で、FW(フォワード)が3トライ取ったことは、FWの選手としてはうれしい」と話した。
7点差以内の敗戦で勝ち点6としたが、プール戦敗退が濃厚となったサモア代表は10月7日(土)、すでに決勝トーナメント進出を決めているイングランド代表と対戦し、プール3位以上で次回大会の出場権獲得を目指す。
一方、勝利したラグビー日本代表は勝ち点4を積み上げ、総勝ち点を9に伸ばし、10月8日(日)にナントで行われる、プール最終戦のアルゼンチン代表戦に勝てば、文句なしに2大会連続でのベスト8進出が決まる。
★日本vs.サモア戦の試合データ
◆プールD 順位表
1位 イングランド:勝ち点14(3勝0敗)
2位 日本:9(2勝1敗)
3位 サモア:6(1勝2敗)
4位 アルゼンチン:4(1勝1敗)
5位 チリ:0(0勝3敗)
文:斉藤健仁/Photo by S.IDA
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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