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スコットランドvs.トンガ
ラグビーワールドカップ2023、9月24日(日)はプールBで、スコットランド代表(世界ランキング5位)とトンガ代表(同15位)の対戦がスタッド・ドゥ・ニースで行われた。
スコットランド代表は初戦、南アフリカ代表に3-18で敗れた。トンガ代表も初戦はアイルランド代表と対戦し、16-59と大敗した。ともにベスト8進出のためには勝利したい一戦だった。
スコットランド代表はFW(フォワード)、BK(バックス)それぞれ2名ずつを変更。キャプテンFL(フランカー)にキャプテンのジェイミー・リッチー、LO(ロック)はベテランのリッチー・グレイ。
SO(スタンドオフ)はフィン・ラッセル、CTB(センター)に元ヤマハ発動機のシオネ・トゥイプロトゥ、WTB(ウィング)にはフィジカルに長けたドゥハン・ファンデルメルヴァ、FB(フルバック)はブレア・キングホーンらが先発した。
スコットランドvs.トンガのメンバー
トンガ代表は1試合目と同じ先発で、ゲームキャプテンを務めるPR(プロップ)ベン・タメイフナ、元オールブラックスのNO8(ナンバーエイト)バエア・フィフィタが引き続き入った。
日野レッドドルフィンズに所属する元オールブラックスSH(スクラムハーフ)オーガスティン・プル、CTBにも元オールブラックスのマラカイ・フェキトア、FBにはワールドカップ終了後に静岡ブルーレヴズでプレーすることが決まっている元オールブラックスのサレシ・ピウタウらが入った。
総合力に長けたスコットランド代表が有利と予想される中、元オールブラックスで経験ある選手を揃えたトンガ代表が、得意のフィジカルでとこまで対抗できるかが焦点となった。
トンガ代表のウォークライ「シピタウ」の後、試合はキックオフされた。先にチャンスを迎えたのはスコットランド代表だった。5分、相手陣22mラインアウトからモールを押し切って、最後はHO(フッカー)ジョージ・ターナーが飛び込んでトライ、SOラッセルがゴールを決めて7点を先制する。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会
【ハイライト動画】プールB スコットランドvs.トンガ|7トライをあげたスコットランドが勝利
トンガ代表も接点でプレッシャーをかけて対抗。10分、SOウィリアム・ハビリがPGを沈めると、さらに20分、スクラムからチャンスを得て、ボールを右外に展開。最後はFBピウタウがオフロードパスでつなぎ、WTBソロモネ・カタが右隅にトライ、ゴールも決まって10-7と逆転に成功する。
だが、すぐさまスコットランド代表も反撃。相手陣20m、右サイドのラインアウトからモールを押し込んだ後、BKがきれいにボールを展開し、最後はWTBファンデルメルヴァが押さえてトライ、再び12-10と逆転。30分にも再びラインアウトからボールを継続し、WTBカイル・ステインがディフェンスの間を突破し右中間にトライ。17-10とリードを広げた。
トンガ代表は34分、WTBアフシパ・タウモエベアウが危険なタックルでシンビン(10分間の一時的退場)となる。数的有利となったスコットランド代表はロスタイム、相手ゴール前スクラムからFLロリー・ダージが力強い突破から中央に押さえてボーナスポイント獲得となる4つ目のトライを挙げて、24-10で前半を折り返した。
後半、先に得点を挙げたのはリードされていたトンガ代表だった。4分、WTBカタがカウンターからゲインし、最後はPRタメイフナが持ち前のパワーを武器に15mほどゲインしトライ、ゴールも決まって、7点差に追い上げた。
だが、スコットランド代表も焦ることなく、15分、WTBファンデルメルヴァがカウンターからゲインし、途中出場のSHジョージ・ホーンが左隅にトライし、ゴールも決まって、31-17と14点差とした。
スコットランド代表は攻撃の手を緩めず、28分、相手反則からクイックタップで攻め込み、FWで攻めた後に、BKに展開し、最後はFBキングホーンが右中間に押さえてトライ、38-17とリードを広げた。
その後はお互いに、ゴール前でペナルティ、ミスを繰り返して得点を重ねることができない中、37分、トンガ代表のNO8フィフィタが危険なタックルでレッドカードとなる。
ロスタイム、追加点を狙ったスコットランド代表は自陣からボールをつなぎ、スピードスターのWTBダーシー・グラハムが60mを走り切ってトライ。終わってみればスコットランド代表が7トライを挙げて45-17で快勝した。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)にはトライだけでなく、カウンターから得意の力強いランを見せたスコットランド代表WTBファンデルメルヴァが選出。「ここニースを拠点にして数週間が経つが、サポーターの皆さんが来てくれて、特別な夜になった。とてもうれしい。最初の30分はかなり厳しかった。あんなにヒットされたのは初めてだ。でも、フィン・ラッセルのような選手が僕にチャンスを与えてくれた」と笑顔を見せた。
ボーナスポイントを含めた、勝ち点5を得たスコットランド代表のグレガー・タウンゼントHC(ヘッドコーチ)は「自分たちのゲームプランと意図と接点の攻防はとても良かった。トンガ代表はフィジカルが強いが、私たちもそれに匹敵したと思う」。
「ディフェンスも素晴らしい面があった。たとえ得点できなくても、相手を消耗させることができるとわかっていた。前半に4トライを取れたことはプラスになった。ただ、後半は少し欲が出てしまった。スコアボードでリードしているときは、そういう場面でもっとよくならなければならない」。
「中6日でルーマニア戦に臨むが、ボーナスポイントを獲得するためには、このパフォーマンスをさらに向上させなければならない」と選手を称えつつ、反省も忘れなかった。
途中で交代したFLリッチーに替わり、会見に出席したSOラッセルも「(初戦から間が空いたが)いい準備ができたし、十分なパフォーマンスも披露できた。グループステージを終えてこの大会に残るためには、もっと良くならなければならないが、今夜はボーナスポイント獲得という必要なものを得ることができた」。
「7トライを挙げたのは良かったが、4、5トライを逃してしまった。多くの選手が得点したのはいいことだが、この先勝ち進むためには、個人としても集団としても、内容を改善する必要がある」と冷静に振り返った。
試合途中まで善戦したトンガ代表のトウタイ・ケフHCは、「(アイルランド戦との)最大の違いは、トライを奪うチャンスをいくつかものにできたことだ。逃したチャンスもいくつかあった。プレッシャーをかけ続けることができなかった。努力は良かったが、1対1のタックルを何度かミスしてしまった」。
「私たちは常に、自分たちのパフォーマンスに誇りを持つことを基本としてきた。私たち自身、そして私たちの国が誇りに思えるようなパフォーマンスを披露したかった。選手たちはそれを成し遂げた。次の南アフリカ代表は大きな挑戦だ。スプリングボクスとはそう何度も対戦する相手ではない。我々はファイトし続ける」と前を向いた。
ゲームキャプテンPRタメイフナは、「少し複雑な気持ちだ。選手たちは全力を尽くしてプレーしたし、スコアは今週の準備の成果を反映していない。このジャージを着て、このチームを率いることができて、とても誇りに思う。(この試合で)トンガ代表が今、どのような位置にいるのかを示している。トップレベルとはどういうものかを知ることができた。でも、決してあきらめない」と気持ちはすでに次戦に向いていた。
1勝1敗となったスコットランド代表は9月30日(土)にリールでルーマニア代表と対戦するが、しっかり勝利して10月7日(土)のアイルランド代表戦に備えたいところだ。一方、0勝2敗となったトンガ代表は10月1日(日)にマルセイユで前回大会王者の南アフリカ代表にチャレンジする。
文:斉藤健仁
★スコットランドvs.トンガ戦の試合データはこちら
◆プールB 順位表
1位 アイルランド:勝ち点14(3勝0敗)
2位 南アフリカ:10(2勝1敗)
3位 スコットランド:5(1勝1敗)
4位 トンガ:0(0勝2敗)
5位 ルーマニア:0(0勝2敗)
※4・5位は得失点差
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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