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【ハイライト動画あり】アイルランド、磐石。史上最強のトンガを寄せつけず快勝で勝ち点5を積み上げる。ラグビーワールドカップ2023プールB注目カードレビュー。
ラグビーレポート by 直江 光信アイルランド代表ジョニー・セクストン選手
4人の元ニュージーランド代表を含む充実布陣のトンガから8トライを奪って完勝を収めた。相手の猛烈なヒットにもまるで怯まず、堂々と受け止め、はね返し、圧力が緩んだ瞬間にたたみかけてスコアを重ねる。凄みすら感じさせる圧巻のパフォーマンスで、世界ランキング1位のアイルランドが今大会最初の関門を突破した。
開始7分にアイルランドのジョニー・セクストン、16分にトンガのウィリアム・ハヴィリと両SOがPGを決め合う中、アイルランドが最初のトライを刻んだのは21分だった。左ラインアウト起点のアタックで順目を攻め、NO8ケーラン・ドリスが縦に鋭く切れ込んで防御ラインを突破。内をサポートしたLOタイグ・バーンがタックルを受けながら腕を伸ばし、右ポスト脇に押さえる。
トンガも24分にハヴィリが右中間約50メートルのロングPGを決め喰らいつくが、直後にWTBソロモネ・カタがレイトチャージでペナルティを与え、自陣22メートル線内への侵入を許してしまう。アイルランドはこのチャンスでラインアウトからモール勝負を挑み、ドリスが密集脇をこじ開けてトライ。セクストンのゴールも決まり、17-6と引き離しにかかる。
これでペースをつかんだアイルランドは33分、よどみなく攻撃を継続して相手防御を揺さぶり、WTBマック・ハンセンが隙間を縫うような走りでインゴールへダイブ。その後も攻守に厳しくプレッシャーをかけ続け、トンガの勢いを封じ込める。38分には得意の狭いスペースでの細かいつなぎでラックサイドをブレイクし、最後はセクストンがアイルランド代表史上最多得点を更新するトライを中央に決めた。
ただ、トンガもこのままでは終わらない。時計が40分を回ったところから相手陣深く攻め込み、FWが真っ向勝負でゴールラインに肉薄。FLピーター・オマーニーをシンビンに追い込み、ロスタイム7分を超えたところでスクラムサイドを突いたNO8バエア・フィフィタがポスト右に飛び込んだ。
【ハイライト】アイルランド vs.トンガ |ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールB
31-13で迎えた後半。フロントロー3人とセクストンを早々に交代させたアイルランドに対し、トンガは43分にスクラムでペナルティを獲得すると、ハヴィリが落ち着いて正面やや左のPGを通す。差を15点に縮め、勢いに乗るかと思われた。
しかしアイルランドもここで底力を発揮する。SHコナー・マレーや入替で登場したSOロス・バーンが巧みなキックでトンガを背走させ、じわじわと体力を奪うと、敵陣で優勢にゲームを展開。51分にHOロブ・ヘリングがペナルティから押し込んだシーンはダブルモーションでトライキャンセルとなったが、59分にラインアウトモールをドライブし、相手防御が手薄になったところをSHクレイグ・ケイシー→WTBジェームズ・ロウで崩し切った。
すさまじかったのはここからだ。スコアが開いたことに疲れも重なってトンガの足が止まり始めるや容赦なくたたみかけ、63分にラインアウト起点のBK展開からCTBバンディー・アキが豪快に中央を突き抜けて走り切る。さらに6分後にも11フェーズにおよぶ長い連続攻撃を仕留め切って、アキが悠々とポスト下へ。
最後の仕上げは80分だ。ゴール前マイボールラインアウトからのモールは押し切れなかったものの、直後の相手投入が乱れたところにHOヘリングが反応し、今度はしっかりとフィニッシュ。最終スコアを59-16まで伸ばして、フルタイムを迎えた。
文句なしの内容で難敵に快勝し、ボーナスポイントつきの勝ち点5を手にして激戦のプールBで首位を維持したアイルランド。万事に隙を見せず、自分たちのスタイルを忠実に遂行する磐石の戦いぶりは、ことごとくベスト8の壁に阻まれてきた過去のワールドカップからの決別を力強く宣言するようでもあった。点差が開いてもプレーが軽くなるような様子は皆無で、チーム全体が地に足つけてさらなる高みへと歩を進めていることをうかがわせる。
次戦の相手は前回大会王者の南アフリカ(日本時間9月24日04時キックオフ@サンドニ)。開幕戦のフランス対ニュージーランドと並ぶ、プールマッチ最大の大一番だ。ここに勝利できれば、チームの自信はもう一段上のレベルに上がる。ウェブ・エリス・カップも、よりくっきりと視界に入ってくるだろう。
結果的にビッグスコアでの敗戦となったものの、トンガも随所に持ち味を発揮して見応えあるファイトを繰り広げた。これが今大会の初戦で、8月15日以来のゲームだったことを考えれば、まだまだここからチーム状態が上がっていくのは間違いない。次戦は9月25日日本時間00時45分キックオフの対スコットランド(@ニース)。いずれにとっても決勝トーナメント進出に向け絶対に落とせない一戦だけに、こちらも激闘必至だ。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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