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劇的な結末となったウエールズ対フィジー戦
戦前の見立てでは互角かややフィジー優勢。2007年のフランス大会では4点差の惜敗を喫し、プールマッチ敗退の苦汁をなめたウエールズにすれば、これ以上なく燃えるシチュエーションだっただろう。同じ轍は絶対に踏まぬ。その心意気が、予想通りの激闘となったゲームでウエールズに白星をもたらした。
試合はキックオフ直後からめまぐるしく動いた。先にスコアを刻んだのはウエールズだ。開始3分にSOダン・ビガーが約45メートルのゴールを決めると、7分にはCTBジョージ・ノースのラインブレイクから一気に相手陣22メートル線内まで前進。ラックから左オープンを攻め、WTBジョシュ・アダムスがコーナーに飛び込む。
もちろんフィジーも黙ってはいない。13分、中盤ラインアウト起点の連続攻撃でキャプテンのCTBワイセア・ナヤザレヴが力強く右中間へ駆け抜けると、17分には今大会のスター候補のひとりであるCTBセミ・ランドランドラのあざやかなスラロームランから、オフロードを受けたFLレキマ・タンギタンギヴァルが走り切ってトライ。ゴール成功で14-8とゲームをひっくり返した。
このままフィジーがたたみかけるかと思われた場面。しかし規律の乱れでみずから流れを手放してしまう。24分にディフェンスラインのオフサイドでウエールズSOダン・ビガーのPGを許し、25分以降は危険なタックルで与えたペナルティから自陣ゴール前に釘づけにされた。
逆にウェールズはこのチャンスを逃さず仕留め、CTBニック・トンプキンスがタックルを受けながら絶妙のパスでノースのトライを導く。コンバージョン成功でふたたびウエールズが18-14と前に出た。
30分以降はフィジーが敵陣レッドゾーンで猛攻を仕掛け、34分にPRエロニ・マウィがポスト左に飛び込んだが、これはグラウンディング寸前にボールが手からこぼれていたとのTMO判定でノートライに。39分のゴール前ラインアウトのチャンスもウエールズの好ディフェンスにあと一歩を崩し切れず、18-14で前半の40分を折り返した。
【ハイライト】ウェールズ vs.フィジー |ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールC
どちらが先にスコアするかでその後の展開が決まる後半の立ち上がり。この大切な時間帯で追加点を挙げたのは、またしてもウエールズだった。
開始直後のPGこそわずかに右へ逸れたものの、身上の堅守からペースをつかみ、迎えた47分。中盤中央のスクラムから左サイドを突破して敵陣22メートル線内に攻め入ると、キャプテンのFLジャック・モーガンが判断よく右奥へキックパスを蹴り込む。転がるボールをWTBルイス・リース=ザミットが手に収め、右隅にフィニッシュした。
これで25-14とワンチャンスでは追いつけない差までリードを広げたウエールズは、その後もWTBアダムスの猛タックルやSOビガーの巧みなコントロールキックでフィジーの反撃を寸断。58分以降の自陣ゴール前でのピンチも渾身のディフェンスで厳しく体を当て続け、トライラインを死守する。62分過ぎには懸命のカバー防御で相手のミスを誘い、こぼれ球を拾ったビガーがすかさず切り返して50:22キックを決めた。
するとウエールズはこの好機に集中力を発揮し、ラインアウトモールでフィジーを圧迫。一度目は取り切れなかったもののFLタンギタンギヴァルをシンビンに追い込み、二度目は難なく押し切って右中間になだれ込んだ。ビガーのゴール成功で、スコアは32-14に広がる。
いよいよ追い込まれたフィジー。しかし試合はこのまま終わらなかった。68分にウエールズのPRコーリー・ドマコウスキーがシンビンを受け14人対14人になると、力を振り絞って懸命に攻め、73分にCTBチョスア・トゥイソヴァがウエールズ防御の壁をこじ開ける。
さらに78分にはフィジーらしい変幻自在のつなぎで自陣から敵陣ゴール前まで攻め上がり、FWが真っ向勝負で近場を前進。PRメサケ・ドンケがパワーで押し切り、26-32と逆転圏内に迫った。
残り時間は1分20秒あまり。どのエリアからでも一発でトライを取る力を有するフィジーにすれば十分な時間だ。スタジアムのムードが最高潮に達する中、白のジャージーは自陣から粘り強く13フェーズを重ね、ウエールズ陣の22メートル線内に攻め入る。
しかし通ればトライかと思われた大外のランドランドラへのパスは、無情にもその手からこぼれる。歓喜を爆発させるウエールズ。フィールドに崩れ落ちるフィジー。この瞬間、激闘に終止符が打たれた。
誇りを感じさせるディフェンスで初戦の大一番を制し、貴重な勝ち点「5」を手にしたウエールズ。相手の驚異的な攻撃力に差し込まれながらも懸命に体を張り続け、崖っぷちで踏みとどまった戦いぶりは、随所に伝統国の底力を感じさせた。あと一歩を押し切れなかったものの、持ち味を存分に発揮し限りなく勝利に肉薄したフィジーの勇敢な奮闘も見事だった。
プライドとプライドの激突。キックオフからフルタイムまで、ワールドカップの魅力にあふれる80分間だった。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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