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【ハイライト動画あり】ラグビー日本代表、白星発進!パッション溢れるチリ代表との大会初戦制す。ワールドカップ2023フランス大会
ラグビーレポート by 多羅 正崇アマト・ファカタヴァ
「オーレ!オレオレオレ!チーレ!チーレ!」
チリ代表サポーターの大声援が、スタジアム・ド・トゥールーズに充満している。舞台は中立地のフランスだが、まるでアウェーだった。
ラグビー日本代表“BRAVE BLOSSOMS”が9月10日(日)、ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会の初戦で、初出場のチリと激突した。
主将のNO8姫野和樹は「ふくらはぎに少し問題」(トニー・ブラウンコーチ)があり、大事をとって欠場。
急きょユーティリティFWのジャック・コーネルセンが8番に入り、メンバー外からサウマキ アマナキがロックに入った。
試合開始前、3万人超の観客が見つめるピッチに、まず日本代表通算50キャップ達成のPR稲垣啓太が先頭入場。両国国歌の後、熱波到来中のフランスで、熱き戦いの火蓋が切られた。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
流大
この日のゲーム主将を務めたSH流大。初戦の緊張感を明かした。
「(大会初戦の緊張は)なかったといえば嘘になります。僕も緊張しました。1試合目、みんなに言ったのは『プレッシャーをなくそうとするのではなくて受け入れよう』ということでした」
しかし先制はチリだった。
この日のチリは「できる限りボールを持つことでペナルティを作ることがポイント」(チリ・ライワルイHC)。ボールを保持すると、有能バックスが躍動した。
前半6分、チリはフランス国内2部でプレーするFBイナキ・アジェルサが右隅で突破。混戦からSOロドリゴ・フェルナンデスが足元のボールをコントロールし、インゴールへ。
歴史的なW杯初試合で、ボールを保持して先制トライ。チリサポーターの爆発的な歓喜が起こった。
日本は4年前の2019年W杯、ロシアとの開幕戦で先制トライを許している。やはり大会初戦は難しい――。
そんな空気が漂ったが、2分後だった。
キックオフボールを確保すると、SH流大が相手を引きつけながらショートパス。大会初出場のLOアマト・ファカタヴァが抜けだし、チーム大会初トライ。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールD
【ハイライト】日本 vs.チリ
SO松田力也のコンバージョンも成功。すぐ同点(7-7)に追いついた。
序盤に乱れた守備も復調モードに。スクラムからの相手突破は、先発抜擢のFL下川甲嗣が追いかけてストップ。HO坂手淳史はチーム大会初のジャッカルを決め、攻守交代を起こした。
しかしその後、PR具智元が相手のレイトタックルを受けて脚を負傷。相手FLが10分間の一時退場となると、前半30分だった。
PR具を含めた敵陣ゴール前スクラムで押し込むと、初出場のWTBジョネ・ナイカブラが2トライ目。リードを7点(14-7)とした。
さらに前半37分、チリに2度目のイエロー(FLマルティン・シグレン主将)が出ると、直後にモールから3本目。SO松田が左隅からのコンバージョンを決め、21-7で後半へ入った。
しかし主導権はまだ掌握できない。
後半最初のトライはチリ。後半6分にCTBディラン・ライリーが故意のノックオンにより、チーム大会初カード(イエロー)。
直後、LOアマナキらが好守を続けるが、FW戦からラック脇に飛び込まれてチリが2本目。コンバージョンは外れたものの、リードは9点(21-12)に縮まってしまった。
しかし消耗戦になる後半は、やはり日本の得意領域。
フィットネスが落ち始めたチリに対して、日本はキックカウンターから反撃。最後はおとりの裏側を走ったFLリーチマイケルが、待望のチーム4本目を奪った。
ラスト10分間は日本のゲーム。
中村亮土
敵陣ゴール前中央でスクラムを選択した後半31分、サインプレーからCTB中村亮土がトライラインを超えた。
同39分には今季代表戦初出場、途中出場からピッチに入ったワーナー・ディアンズが押し込んで6本目。
日本は42-12で勝利。大会初戦を白星で飾った。
SO松田は6本のコンバージョンを全成功。両端15m内の難しいキックは3本あったが、「自信を持って蹴ることができました」。大会初戦で自信を深めた。
栄えあるマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのは、大会初出場のLOファカタヴァだ。
「ワールドカップは特別な場所で、最初の20分は少し緊張しました。しかし自分の役割にフォーカスしました。最初のワールドカップでトライを取ることができて嬉しいです」(LOファカタヴァ)
日本代表のジェイミー・ジョセフHC。ボーナスポイント1点も付いた今大会初勝利を受けて、こうコメントした。
「我々は気迫を込めたパフォーマンスを見せようとしていましたが、ワールドカップ初出場のチリ代表はそれを上回り、大きなプレッシャーをかけてきました」
「私たちはすべてを懸けて戦わなければなりませんでしたが、選手たちは打ち克ちました。選手たちを本当に誇りに思います。最終的に40点(42点)を取れたことは大きな勝利です」
そして姫野主将に代わり試合をリードしたSH流。「チリは本当に素晴らしいチーム。フィジカルで我慢強かったです」と話した。
「しかし誰もパニックすることなく、自分たちとゲームをコントロールできました。そこはすごく良かった。ビッグスコアで勝とうとは思っておらず、自分たちのやるべきことを重ねていきました」
「チリのパッション、フィジカルは学ぶことが多い。ポジティブな試合でした」(SH流)
一方、初出場ながら大声援の後押しを受け、闘い続けた勇敢な「ロス・コンドレス」(チリの愛称)。FLシグレン主将は「試合は予想通りの激しさでした」と語った。
「最後の20分間は試合のコントロールを失い、ボールを持てませんでしたが、私たちは戦い続けました。今日の試合には誇れる点がたくさんあります」と晴れ晴れした様子だった。
日本の選手やスタッフは試合直後、ピッチ上でリラックスした良い表情だった。
序盤こそ乱調だったが、ハーフ団を中心にW杯経験者が試合を落ち着かせ、後半はフィットネスでも上回り、主導権を握った。
一方で日本時間9月18日(4時)のイングランド代表との第2戦へ向けて、ラインアウトモールの精度など、再確認すべき事項はあるだろう。
白星発進した日本。期待はますます高まる。
次なる相手は、初戦でアルゼンチン代表を破ったラグビーの母国、1勝のイングランド。舞台はフランス南部のニースだ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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