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【ハイライト動画あり】悲願の決勝トーナメント進出に向けイタリアが好発進。ナミビアも果敢な攻守でスタジアム沸かせる。ラグビーワールドカップ2023プールAレビュー。
ラグビーレポート by 直江 光信悲願の決勝トーナメント進出に向け好スタートを切ったイタリア
最終スコアは52-8。しかし敗れたナミビアもなすすべもなく屈したわけではなかった。前半はシンビンによる一時退場者を出しながら8-17で折り返し、時計が80分を回った後も死力を尽くして果敢にトライを狙いにいった。あらゆる局面のあらゆる選択に、この舞台で戦う覚悟と誇りがにじむ。そんなワールドカップの醍醐味を感じさせる一戦だった。
開始4分にナミビア、8分にイタリアがPGを決め合う立ち上がりの中、最初のトライが生まれたのは11分だ。FBトンマーゾ・アランの50-22キックでイタリアが相手陣22メートル線内でマイボールラインアウトを得ると、力強くモールを押し込む。一度目は取り切れなかったがコラプシングによりナミビアHOトルステン・ファンヤースフェルトをシンビンに追い込み、二度目は難なく押し切ってNO8ロレンツォ・カンノーネがゴールラインを越えた。
15分には、HO不在でナミビアのラインアウトが乱れたところを逃さずターンオーバー。すぐBKに振ってSOパオロ・ガルビシが防御のギャップを鋭く走り抜ける。FBアランがコンバージョンを決め、イタリアのリードは17-3に広がった。
ひとり少ない状況で立て続けの失トライ。流れが一気に傾きそうな時間帯だったが、ナミビアもここから意地を見せる。鋭い出足のディフェンスで圧力をかけてイタリアのラインアタックを寸断すると、21分にスクラム起点の連続攻撃でオーバーラップを作り出し、WTBゲースウィン・ムートンが右コーナーにフィニッシュ。一人ひとりの気迫が立ち上るトライでムードを変える。
その後は観客席の後押しも受けてナミビアが勢いに乗り、たびたび見せ場を作った。渾身のタックルでたびたびイタリアのエラーを誘い、ボールを奪えば迷いなく突破を図る。33分以降は相手陣22メートル線内に攻め込み、テンポのいい連続攻撃でゴールラインに迫った。
しかし、シックスネーションズで数々のハイプレッシャーゲームを経験しているイタリアはたくましかった。フラストレーションから強引な攻めでたびたび好機を逸するも、ディフェンスでは厳しいヒットとスペースを埋める高い意識を維持し、決定的な場面を作らせない。追加点は許さず、17-8で前半を折り返した。
ラグビーワールドカップ2023 フランス大会
【ハイライト】イタリア vs. ナミビア |ラグビーワールドカップ2023
互いにハーフタイムでどう戦い方を整理してくるかが注目された後半。入りは決してよくなかったイタリアだが、相手のキックミスにより敵陣でのマイボールスクラムを得ると、ナミビアの反則を誘い一気に敵陣ゴール前まで攻め込む。ラインアウトからFWのパワープレーで近場を崩し、LOディノ・ラムが左中間に押さえた。
これで14点差になり余裕が生まれたイタリアは、以後のナミビアの反撃にもあわてることなく体を当てて前進を阻み、着実に勝利へ歩みを進めていく。そしてゲームを決定づけるトライが生まれたのは55分だった。ゴールラインを背負うディフェンス局面を堂々と守り切って危機を抜け出すと、自陣10メートル付近のラインアウトから左オープンへ展開。大外をWTBアンジュ・カプオッソが駆け上がり、WTBモンティ・イオアネ-ふたたびカプオッソとつながって左コーナーを陥れる。今大会注目選手のひとりであるカプオッソのファンも待ち望んだ快走で、スコアは31-8となった。
30度を超える猛暑もあってラスト20分は消耗戦となり、しばらくは膠着した時間が続いたが、イタリアは攻撃の手を緩めない。70分以降はナミビアの足が完全に止まり、74分にHOハメ・ファイヴァ、78分にはFLマヌエル・ズリアーニがパワフルなボールキャリーでゴールラインを割る。
この試合のベストシーンが訪れたのは80分過ぎだ。勝負はすでに決していたが、お互いのプライドにスタンドの期待も重なってどちらもプレーを切ることなく攻め合い、目まぐるしく攻防が入れ替わる。最後は中盤のペナルティからイタリアWTBカプオッソがタップキックで仕掛け、左ライン際を途中出場のWTBパオロ・オドグブが爆走。50点の大台を超えて52-8までスコアを伸ばし、フルタイムを迎えた。
注文通り大量得点で勝利し、ボーナスポイントつきの勝利を手にしたイタリア。キャプテンのFLミケーレ・ラマロが「FWでもBKでもトライを取れたのはよかった」と振り返ったように、多彩なパターンで7本のトライを奪ったことは、平均年齢26.7歳の若いチームにとって大きな自信になるだろう。次戦は12日後の対ウルグアイ戦(日本時間00時45分キックオフ@ニース)。悲願の決勝トーナメント進出に向け、好スタートを切った初戦の勢いをどう維持していくかが注目される。
一方ナミビアの次戦は9月16日の対ニュージーランド(04時キックオフ@トゥールーズ)。タフなチャレンジになることが予想されるが、愛称“ヴェルヴィッチャーズ”は2019年の日本大会でもオールブラックスとプールマッチで戦っており、結果的には9-71と大差になったものの、前半35分までは9-10と奮闘してスタジアムを沸かせた。いまだアマチュア選手も多く含むスコッドながら常に全力を出し尽くすナミビアの誇り高き戦いぶりは、見る者の心をゆさぶる。前回大会以上の健闘を期待したい。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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