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稲垣啓太とワーナー・ディアンズ(右)
ワールドカップ初戦のチリ代表戦に向け、試合会場の「スタジアム・ドゥ・トゥールーズ」で前日練習が行われた。その後、会見が行われ、日本代表からはトニー・ブラウン コーチ、PR(プロップ)稲垣啓太、LO(ロック)ワーナー・ディアンズが出席した。
―― 稲垣選手は明日のワールドカップ初戦が50キャップ目となります
50キャップ目となる稲垣啓太
稲垣:50キャップ目がワールドカップの開幕戦ということは、タイミング的に巡り合わせがあると思う。ただ、50キャップ目だからといって、やるべきことは変わらない。やるべきことやって、チームに貢献したい気持ちが強い。
―― ワールドカップをチームでは「デスゾーン」に例えていますね?
稲垣:みんな、覚悟を決めてここまでやってきた。なかなか結果が振るわず、メンタル的に難しい状況の選手もいたと思いますが、選手全員で乗り越えてきた自信があります。大事なのは自分たちがやってきたことをどれだけ信じられるかに尽きると思います。みんな自信を持っていると思います。最後、グラウンド100%できるのかできないのか、できるようにやるだけ。
ワーナー:ワールドカップまで試合に出られなくて、いきなりワールドカップで試合出るので、自分の仕事ちゃんとやって、デスゾーンとかあまり自分の中で考えなくて、自分のプレーを上手くできるように考えている。
―― ケガの状況はいかがですか?
ぶっつけ本番となるワーナー・ディアンズ
ワーナー:痛いところはない。今、いい感じでケガが治って、いい感じ。全然痛くないので大丈夫です。戻ってくるプロセスは、足首のリハビリをしていた。足首のまわりの小さい筋肉をトレーニングして、強くして、もう1回ひねらないようにバランスのドリルやっていて、4週間半くらいかかり、先週、イタリアで初めての練習やって、今週はいい感じでやっています。
―― プレッシャーをどう乗り越えていますか?
稲垣:プレッシャーを感じない選手はいないと思う。正直。プレッシャーを感じていない選手は強がっていると、僕は捉えてしまう。大事なのはプレッシャーを受け入れて、どう準備するか。じゃあ、その準備はなんなのか。自分たちが積み重ねてきたことを信じること。やってきたことしかグラウンドで出せない。付け焼き刃は通じない。信じればプレッシャー中でもプレーできると僕は思っています。
―― 国内で結果が出なかったことについては?
稲垣:結果が出なければ、いろんな意見でてくるのは当然だし、選手もスタッフもチームも、そういった意見を受け入れてきたと思いますし、僕自身もそう言われて当然だなと思います。選手としては結果を出すために、何が足りないのか必要なのか、前を向いて進んでいくしかない。これから先も前を見ながら進んでいきたい。今週、結果を出して上がっていけたらなと思います。
―― 去年もこのスタジアムで対戦しました。芝の感覚は?
前日練習中での稲垣啓太
稲垣:昨年、試合したときは芝生が濡れていたように感じたが、今日は晴れていたので、芝生の感覚てきにもいい感覚を持っている。FWで芝生チェックのために動作を確認した。準備もできたと思う。めくれるようなことは感じなかった。それを含めて試合中どうなるか、やってみないとわからない。そういった面も含めて準備してきた。
―― 明日のレフリーはニック・ベリーさんです
稲垣:どの部分で反則に気をつけているかは詳しくは触れないが、ワールドカップのような大きな大会の大きな試合になればなるほど1つの反則が得点に結びついてしまうので、トータル的に反則を減らすことはすべてのチームも気を付けている。我々もどのチームよりも気を付けているが、反則を恐れて何もしないと、相手に勢いを与えてしまう。
反則を取るか取られるか レフリーがするので、しないと思っていても結果的になることもある。80分を通して、アジャストすることも大事な要素。ニック・ベリーは練習、試合を何度もやっているので僕はやりやすいし、コミュニケーションを取ってくる。自分たちのラグビーをしっかりぶつけていきたい。
―― 姫野主将が前日練習に参加していませんでした。ブラウンコーチは明日にならないとわからないと言っていましたが?
稲垣:明日、スタッフが判断すると思うが、判断するのは選手じゃないとお伝えしておきたい。このチームはリーダーを張れる選手が多くいると思う。ただ、リーダーが1人1人がこれをしないといけない、修正しないといけないと、全員が話してもチームはまとまらない。
アタックなら誰が話すべきとか、阿吽の呼吸がチームに備わってきている。その時必要な選手が発して、他のリーダーは、その人に全員の目を向けさせる。「全員が同じ画を見る」とよく言っていると思うが、試合中そうするのが難しい。それができるように、全員が役割をまっとうするべきだと思う。
―― チリ代表戦のポイントになることは?
初戦に間に合ったワーナー・ディアンズ
ワーナー:チリ代表はウルグアイ代表、アルゼンチン代表みたいなチームで、パッションがある国、チーム。すごくタフなフィジカルな試合になる。相手も80分間、戦ってくると思うので、自分たちもそれに対してちゃんと(身体を)当てにいかないといけない。
稲垣:全部言ってくれました(苦笑)。大事なのはあくまでも個人的な部分ですが、相手どうこうではなく、自分たちがどういうラグビーをしたくて、それを相手にぶつけるかがすべてだと思います。開幕戦で何が起きるかわからないと思うが、それを含めて準備してきたので、100%自分たちのラグビーをぶつける。それに尽きると思います。
◆トニー・ブラウン コーチ会見
―― 姫野主将の状態はどうですか?
ふくらはぎに問題があって、間に合ってほしいが明日の朝までわからない。
―― 浦安合宿からアタック練習をしてきましたが、現在の状況はどうですか?
選手たちは必要なフィットネスを得るためにハードワーク、ハードな練習してきた。テストも重ねてきた。いい状況だと思う。ディフェンスも、明日の試合に合わせて仕上がっているはず。
―― 80分通してどんなプレーをしてほしいですか。また、フォーカスしていることは?
トニー・ブラウン コーチ
アタックもディフェンスも遂行力を上げることをフォーカスしてきた。チリには危険な選手がいるので、ディフェンスで封じ込めないといけない。日本代表のラグビー哲学はスピードとスキル。そして、チャンスがあれば必ず仕留める。それが我々の哲学。そのアタックの遂行力を高めた。
―― キックの多い試合でしたが、昨日の開幕戦の感想はどうですか?
朝早く見たらオールブラックスが負けていた。ワールドカップにふさわしい素晴らしい試合でした。後半、フランス代表はフィジカルで、非常に素晴らしい試合運びをしていた。フランス代表にとって、この上ないスタートを切ったと思う。
―― フランスの地で戦うことについては?
私たちは去年の10月にここで試合をした。スタジアムは非常に素晴らしく、芝も良く、雰囲気も良く、選手たちはまたここでやれるのを楽しみにしている。
―― 松島幸太朗選手がWTB(ウィング)ですが、どんな狙いがありますか?
WTBで先発する松島幸太朗
松島はFB(フルバック)でプレーしてきたが、チリ戦ではWTBで起用する。彼はワールドクラスのウィンガー。トライをする機会を与えたいと思った。
―― 2019年大会のアタックも世界に通用していたが、この4年間で変えたところと強みを教えてください
4年前、日本は素晴らしいラグビーをした。そこからまたチームビルディングをしてきた。ディフェンス、アタック、キッキングゲームも向上したと思う。効果的なディフェンスができれば、もっとキックでプレッシャーを与えられるようになる。
―― 選手たちは今、プレッシャーを感じていますか。
ワールドカップの舞台でプレッシャーを感じない選手はいない。昨日のオールブラックスでさえそう。ワールドカップでは、あれほどのテストマッチを経験した選手たちでも、全く違うレベルのプレッシャーを感じる。
チリ代表の選手たちは初めてのワールドカップ。だから日本の選手たちにとっても、これまで経験したことのない道の領域だし、この大会のプレッシャーを感じないはずはない。ただ、それでもチームとして戦うこと、役割を遂行すること、チャンスを決めることを心がけて自信を持って送り出します。
取材/文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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