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完敗を喫した8月20日の帝京大学戦(7-62)でもチャンスは数多く作れていた。フィニッシュへの道筋と精度が定まれば、試合運びは大きく変わるはず。そのイメージ通り、1週間で課題を修正した早稲田大学が同志社大学から12トライを奪う猛攻を見せ、夏合宿最終戦を快勝で締めくくった。
開始4分にラインアウトモールで先制トライを挙げ、7分には自陣からの連続攻撃を仕留めてWTB福島秀法がノーホイッスルトライを奪うなど、好スタートを切ったこの日の早稲田。12分に早いテンポの連続攻撃から同志社SO大島泰真にラインブレイクを許し、ゲームキャプテンのCTB岡野喬吾にトライを返されたが、すぐ反撃に転じる。
16分、敵陣ラインアウト起点のアタックでラックを連取し、キックパスを受けたWTB福島がインゴールへ。23分にもゴール前ラインアウトからのモールドライブで、HO安恒直人が右中間に押さえる。いずれもペナルティ奪取で得た好機をきっちりとスコアに結びつけ、ゲームの主導権を掌握した。
さらにチームを加速させたのは、帝京戦に続き先発に名を連ねたNO8松沼寛治とFB矢崎由高の大物ルーキー2人だ。まずは28分、右オープン展開でパスを受けた矢崎が鋭く縦に切り裂いてトライをマークすると、続くキックオフから今度は松沼が好サポートで抜け出しビッグゲイン。その後も入学から約5か月とは思わせない堂々たるプレーぶりでさまざまな局面に絡み続け、縦横無尽にフィールドを駆け回る。
勢いに乗る早稲田は34分にも矢崎のアシストからWTB守屋大誠がインゴールを陥れ、34-5とリードを拡大。ペースを保ったまま、前半の40分を折り返した。
後半も先にスコアを刻んだのは早稲田だ。44分、相手の反則に乗じて敵陣22メートル線内に攻め込むと、またもラインアウトモールを押し切ってトライ。51分にはラインアウトから左順目へリズムよくボールを動かし、FB矢崎が相手防御のギャップを走り抜ける。後半立ち上がりの大切な時間帯に集中力を発揮し、一気に44-5と引き離した。
大学ラグビー 菅平合宿 2023 練習試合
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 同志社大学
同志社も59分、ゴール前のマイボールラインアウトからFWがモールでなだれ込み、意地を見せる。しかし流れを変えるまでには至らず、ラスト15分はふたたび早稲田が敵陣で攻める展開に。69分に長い連続攻撃をキャプテンのCTB伊藤大祐が仕上げて左コーナーに飛び込むと、勢いの差は決定的となった。
以後、早稲田は75分にWTB守屋、80分にFB矢崎、84分にはWTB福島と、決定力あるバックスリーが3本連続でトライを追加。最終スコアを70-12まで広げて、フルタイムを迎えた。
拙攻に終始した帝京戦のうっぷんを晴らすように、多彩なアタックでトライを重ねた早稲田。特にこの日は敵陣レッドゾーンでのラインアウトモールで取り切れたことが、猛攻を呼ぶきっかけになった。スコアメイクの軸ができることで、試合運びの道筋を明確に描けるようになる。点差による精神的な余裕によって、学生屈指のランナーが並ぶBK陣も存分にポテンシャルを発揮した。
夏合宿の最終戦でその手応えをつかめたことは、選手たちにとって大きな意味があるだろう。今後はより厳しいプレッシャーの中でも、同じようにクオリティ高くプレーを遂行できるようになることが重要なテーマとなる。9月10日の立教大学戦(@熊谷、15時キックオフ)から始まる関東大学対抗戦の戦いを通じてどのようにチームを仕上げていくのか、楽しみがふくらむ試合だった。
同志社は不用意なペナルティから自陣への侵入を許し、苦しい状況で守る時間が続いたことが、大敗の要因となった。FWの力勝負に持ち込まれれば分が悪いだけに、反則をしない意識の徹底と中盤のプレーメイクは改善が必須だろう。9月17日の立命館大学との開幕戦まで残り3週間、課題をどこまで克服できるかが注目される。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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