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ラグビー コラム 2023年8月28日

【ハイライト動画あり】W杯直前テストマッチで明暗。40分間超14人のニュージーランドが南アフリカに大敗

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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約2週間後の現地時間9月8日、開催国フランスとのラグビーワールドカップ(RWC)2023開幕戦を控えているニュージーランド代表。

8月25日に大会前最後の試合となる南アフリカ代表戦に臨んだが、想定外であろう試練に見舞われた。

まずは好調だったLOスコット・バレットが2枚のイエローカードで退場処分になるなど、規律面で大荒れとなった前半40分間だ。

端緒はスクラム戦。

南アフリカの先発フロントローはPRスティーブン・キッツォフ、S東京ベイ所属のHOマルコム・マークス、PRフランス・マルハーバという最高峰の3人。

開始1分、NZ投入のファーストスクラムで、NZの新鋭PRイーサン・デクルートが反則。スクラムで攻守交代を起こして敵陣に侵入。ここからNZは防戦一方になった。

防戦の原因はペナルティの多発。

NZはこの日反則を21回犯したが、そのうち前半が15回。レフリーが示したモールの反則基準に適応できず、モールを中心に開始4分で5回のペナルティを犯した。

しかし南アフリカのモールを止め続けた肉弾戦のパワー、スキルは流石だった。4度目のラインアウトモールめ止め、ターンオーバーを起こした。

しかし我慢の時間は終わらない。

前半13分にはPRタイレル・ロマックスがスパイクで膝をカットするアクシデント。先発プロップを失うと、LOスコット・バレットがラックでの不要な反則でイエローカード。

さらに序盤からのモールの反則を止められず、前半14分にFLサム・ケイン主将にイエロー。NZは前半15分から一時的に13人になった。

しかしNZは大幅にFW戦力を落としながら、南アフリカのモールを止めてみせる。南アフリカは7度目のモールでさえもフィニッシュできなかったが、ここでバックラインに展開。

ラグビー テストマッチ2023(08/25)

【ハイライト動画】ニュージーランド vs. 南アフリカ

最後はRWCに間に合った怪我明けのFLシヤ・コリシ主将がトライラインを乗り越え、前半18分でようやく初得点、初トライを奪った。

7点ビハインドとなったNZは、前半25分までに一時退場の2人(LOスコット・バレット、FLケイン主将)が戻り、前半32分にはスクラムでペナルティも奪った。

ここから反撃開始といきたかったが、WTBカートリー・アレンゼがこの日効果的だったオフロードパスのカットを披露。独走トライ(ゴール成功)でリードを14点に広げた。

前半自陣で闘い続けたNZが、敵陣22m内で長いフェーズ攻撃を仕掛けたのは前半終了前だった。

しかしようやく巡ってきた得点機で、前半37分、LOスコット・バレットが不要な反則。ラックにいた相手HOマークスの頭部に上半身をヒットさせ、2枚目のイエローで一発退場。NZはフルタイムまで14人で戦うことになった。

ここでレフリーは今大会から導入のカード判定補助システム「バンカー」の利用を示したが、その後イエローはレッドに引き上げられず。

ただ今後、数試合の出場停止などの処分が科される可能性はあり、NZは大会序盤で主要ロックを失うかもしれない。

その後のNZは前半終了前、14人の波状攻撃からWTBウィル・ジョーダンが左隅に飛び込んだ。が、ビデオ判定でノートライ。南アフリカの14点リードで後半に入った。

NZは後半最初に先制したかったはずだが、歓喜の輪を作ったのは南アフリカだ。

後半最初のラインアウトで、右隅に残ったHOマークスが相手SHアーロン・スミスを振り切って右隅へ。キック精度が課題だったSOマニー・リボックの高難度のコンバージョンも成功し、21-0とリードを広げた。

絶対的司令塔だったハンドレ・ポラード(チームには帯同)は怪我により大会メンバー入りを逃したが、代役としての能力が期待されるSOリボックはこの日、高い能力と勝負度胸を示した。

後半12分に南アフリカFLピーターステフ・デュトイがイエローを受け、14対14になっていた同19分だ。

SOリボックが自陣10m前から、相手ゴール目前に迫るスーパータッチキック。FWのモールトライをお膳立てした。

SOリボックのコンバージョン成功でリードは28点に。さらに22年デビューの26歳は、6分後にもゴール目前に侵入するタッチキックを決める。

ここで急きょメンバー入りした静岡BRの新キャプテン、クワッガ・スミスが突進して5本目。ゴール成功で35-0とした。

完封負けの悪夢が迫っていたNZを救ったのは、NZの新鋭SHキャム・ロイガードだ。

後半31分、この日卓越した攻防センスを魅せていた南アCTBカナン・ムーディーが飛び出してしまい、生まれた間隙をSHロイガードが突破。3人を振り切って約60mの独走を決め、終盤にようやく7点を返した。

しかし追撃の得点はなく、規律面から崩れたNZは7-35で完敗。

28点差の敗戦は、オーストラリア代表に敗れた1999年(7-28)、2019年(26-47)の21点差を上回るワースト記録。

NZのイアン・フォスターHCは「南アフリカのプレーは素晴らしかった。彼らは力強いスタートを切り、私たちに多大なプレッシャーをかけた」と現地メディアに語った。

「ワールドカップを目前にして、スクラムとラインアウトを正しく遂行すること、そして規律を維持することの重要性を明確に思い出させてくれました」

前半のディフェンスについては「最初の20分間のディフェンスは優れていたと思います」。一定の評価はしつつも、「多くの良い教訓が得られました」と反省を口にした。

このワースト記録に意味があったとファンを納得させる最大のものは、史上最多4度目のRWC優勝だろう。

今回大敗した南アフリカとは、RWCの準々決勝で対決する可能性もある。ラグビー王国NZは、フランス大会でどのような軌跡を描くのだろうか。

文:多羅 正崇
多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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