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前半は相手の出足鋭いディフェンスを崩し切れず、新たに導入されるハイタックルの基準への対応にも苦しんで思うように流れに乗れなかった。それでも、終わってみれば62-7の大勝。フラストレーションがたまる展開にも集中力を失わず、要所をきっちり押さえて、相手の圧力が緩むやひと息にたたみかける。積み上げてきた土台の確かさを感じさせる重厚な戦いぶりで、帝京大学が早稲田大学との今季2度目の対戦を制した。
最初のトライが生まれたのは開始4分だ。早稲田の立て続けの反則に乗じて、帝京は一気に敵陣22メートル線内へ前進。ラインアウトモールを悠々と押し切って先制する。
しかしその後しばらくは停滞する時間が続いた。最大の要因は、「胸骨より下」へと引き下げられたタックルの新ルールにアジャストしきれず、ペナルティを重ねたことだ。その数は、アドンバンテージで解消になったものも含めれば前半だけで6本にのぼり、40分の大半で自陣での戦いを強いられた。
さらに19分には、危険なプレーによりFL青木恵斗がシンビンで一時退場。ひとり少ない状況で、自軍ゴールラインを背負う場面を招いてしまう。
もっとも、そんな苦しい局面にも動じず、堂々とはね返せるたくましさが、現在の帝京の強さだ。数的不利を忘れさせる厳しいディフェンスでプレッシャーをかけ、早いリズムでボールを動かそうとする早稲田のアタックを寸断。相手のラインアウトモールも固い結束で前進を阻み、危なげなくピンチを抜け出す。
そして青木がフィールドに戻った直後の34分、相手エラーに鋭く反応して敵陣ゴール前でマイボールラインアウトのチャンスをつかむと、ふたたびモールを押し切ってキャプテンのHO江良颯がグラウンディング。何度も攻め込みながら仕留め切れなかった早稲田とは対照的に、巡ってきた機会をしっかりとトライまで結びつけて得点を加える。その直後にはキックオフレシーブから積極的にパスをつないで防御を揺さぶり、ルーズボールを拾ったWTB高本とむがギャップを切り裂いてポスト下へ。これでスコアは一気に17-0まで広がった。
大学ラグビー 菅平合宿 2023 練習試合
【ハイライト】帝京大学 vs. 早稲田大学
早稲田の攻撃がようやく実を結んだのは、その直後の40分だ。ラインアウトを起点にテンポよくフェーズを重ね、好サポートから抜け出したFL池本大喜が左中間に飛び込む。一矢報いるトライを返し、後半に望みをつないだ。
ハーフタイムでの修正点と方向性の共有、意思統一を経て迎えた後半。ゲームは開始早々に動く。
マイボールのキックオフからディフェンスでペナルティを奪い、敵陣レッドゾーンでの攻撃機会を得た帝京は、自慢のラインアウトモールでじわじわと前進。相手防御を寄せたところでBKが右オープンを攻め、ルーキーのWTB青柳潤之介が大外を抜け出す。47分には中盤でのこぼれ球をすかさず拾って切り返し、フォローしたPR平井半次郎がゴールラインを越えた。
さらに51分には、またもペナルティ獲得→タッチキック→ゴール前ラインアウトの流れからドライビングモールでフィニッシュ。勝負どころの後半立ち上がりの3連続トライで一気に突き放すと、試合の趨勢は決定的になった。
59分、WTB青柳があざやかな個人技でタッチライン際を攻略し、この日自身2本目のトライをマーク。70分以降はリザーブのフレッシュレッグを続々と投入して攻勢を強め、73分にラインアウトモール、77分にNO8尹礼温、83分にはPR森山飛翔がインゴールを陥れる。後半は45-0と文字通り圧倒して、フルタイムを迎えた。
2か月前の関東大学春季大会での対戦時(60-21)からさらにスコアを広げる大勝で、早稲田の挑戦を退けた帝京。ハイタックルとイエローカード2枚を受けた規律面は大きな課題として残ったが、修正すべき点をはっきり認識できたという意味では、貴重な経験だったといえるだろう。スムーズな試合展開ではなかったからこそ、チームの底力はむしろ際立った。この反省を経て8月27日の明治大学戦(13時キックオフ)でどんなパフォーマンスを見せるのか、興味はふくらむ。
早稲田は前半、コンタクトエリアで奮闘し前回からの進歩を示したが、たびたび相手陣22メートル線内に攻め入りながら得点につなげられず、スコアでプレッシャーをかけられなかったことが大敗の要因となった。精度、連動性を欠いたラインアタックと、ことごとくマイボールを失ったラインアウトは、改善が急務の重要なテーマだ。同志社大との次戦(8月27日13時キックオフ)でどのように立て直してくるかが注目される。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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