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あくまで夏合宿のトレーニングマッチ。とはいえ、双方にとって単なる練習試合にとどまらない大切な意味を持つ一戦だ。
6月25日の関東大学春季大会での対戦時は、帝京大学が60-21で早稲田大学に大勝を収めている。2か月後の再戦でふたたび帝京が圧倒すれば、プレー、メンタルの両面で優位性は決定的なものになるだろう。早稲田にとっては快走するトップランナーを射程圏内にとらえておくために、確固たる手応えをつかまなければならないゲームとなる。
8月10日に菅平での夏合宿をスタートさせた帝京は、ファーストマッチとなった16日の天理大学戦に43-28で勝利した。立ち上がりの10分で2トライを先行される展開にもまったく動じず、ゲームの中で改善点にすばやく対応して流れを立て直した試合運びは、あらためてチームの揺るぎない地力を感じさせた。前後半でメンバーを総入れ替えするなどまだまだ余力を残した内容で、ここからさらに上昇曲線を描いて成長していくことを予感させる。
目を引いたのは、攻守とも厳しくプレッシャーをかけ続ける中で相手に隙が生じた瞬間にたたみかける集中力とゲーム理解の深さだ。その土台となるフィジカリティとスキル、フィットネスも、学生レベルを超越している。選手権9連覇の金字塔を打ち立てた黄金期の凄みが完全に戻ってきた印象だ。
一方、同じ8月10日から菅平に入った早稲田は、これがAチームの合宿初戦となる。前回対戦時の課題をいかに克服し、完敗を喫した相手にどのように対抗するのか。この8週間の取り組みの真価が問われる一戦といえるだろう。
6月25日のゲームではスクラムをはじめとするFW戦で劣勢を強いられ、ゲインラインバトルで終始食い込まれたことが、トライ数3対10の完敗の要因となった。サイズとパワーで上回る帝京がいったん前に出始めれば、勢いを断ち切るのは難しい。攻守とも出足の早さで上回り、常にゲインラインより前で接点を作ることが、この試合の最大のテーマとなる。
総合力を比較すれば、リザーブまで含めFW、BKとも抜き出た戦力を有する帝京の優位は動かない。早稲田としては焦点を絞り込んだプレーから突破口を開き、自分たちのペースで戦う時間を長くすることが、勝利への絶対条件となる。この点で16日の天理戦から参考にする部分は多いだろう。
むろん帝京も初戦の反省を生かすべく、高い意識でキックオフを迎えるはずだ。春季大会では立ち上がりの10分に接点で厳しくプレッシャーをかけて先に主導権を握ったことが、大勝の呼び水となった。激しい気迫のぶつかり合いが予想されるゲームの入りの局面は、大きな見どころとなりそうだ。
今年1月8日の大学選手権決勝で先発した15人のうち残ったメンバーは、帝京が10人、早稲田が8人。内訳を見るといずれもFWに前年のレギュラーが多く(帝京は6人、早稲田は5人)、セットピースやボール争奪局面では熾烈なせめぎ合いが繰り広げられるだろう。主軸が卒業したBK陣では、HB団のプレーメイクとキッキングゲームの攻防が注目される。
関東大学対抗戦で両者が激突するのは11月5日(@秩父宮、14時キックオフ)。2か月以上前の現段階ではともにチーム作りの途上にあり、シンプルかつ明確なテーマを持って今回のトレーニングマッチに臨んでくるはずだ。そしてその結果によって、この先のチーム作りの方向性もより明確になるだろう。
今季を占う重要な一戦は8月20日(日)の13時、サニアパークでキックオフを迎える。それぞれの現在地を、じっくりとチェックしたい。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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