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ラグビー コラム 2023年8月9日

日野レッドドルフィンズ、未来を切り開く再出発。苑田右二ヘッドコーチインタビュー

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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苑田右二HC(日野レッドドルフィンズ)

昨秋の不祥事の報告が遅れたため、昨季はシーズン途中で活動無期限停止となった日野レッドドルフィンズ。今季は春から活動を再開しており、7月4日にはスローガン「EXCITING NEW CHALLENGE」と新体制を発表した。

新たなヘッドコーチには、2021年からアカデミーコーチやチーム強化ディレクターを務めてきた元日本代表SH(スクラムハーフ)の苑田右二氏(50歳)が昇格し、12月から始まる新シーズンへ向けて日々、強化を進めている。レッドドルフィンズの新たな出発に際して苑田ヘッドコーチに話を聞いた。

――昨季はシーズン途中でチームの活動が中断。いつから再開したのですか?

4月末まではラグビー部自体の活動ができませんでしたが、いろいろな方に支えてもらって、またラグビーができる環境に感謝しながら、5月のゴールデンウィークの連休明けからグラウンドやジムを使わせてもらえるようになりました。7月からようやく全体練習をスタートさせることができています。

――今季、新たにヘッドコーチに就任された経緯は?

昨季、私はチーム強化ディレクターとしてチーム編成などを担当していました。練習は毎日見ていましたが、時々パスを教えたりするくらい。今季はチーム側の要請もあり、ヘッドコーチに就任することになりました。

まだ全体練習は始めたばかりですが、選手・スタッフ全員が声を掛けながらまとまって練習をしています。実は会社にお願いして、オンとオフの切り替えができるように全体練習を午前中にやるように変えて、午後に社員選手は出社し、プロ選手は身体のケアやトレーニングに充てています。

――苑田ヘッドコーチは、神戸製鋼(現・コベルコ神戸スティーラーズ)、母校の法政大学でも指導されていましたね。

36歳で現役引退してからすぐ、4年間、神戸製鋼でヘッドコーチをしていました。その後、少しラグビーから離れて、また法政大学で5年ほどヘッドコーチを務めました。一昨年に日野にアカデミーコーチとして入り、昨季はチーム事情もあって強化ディレクターを務めていました。

大学での指導もそうですが、いろいろ経験して人間的にも成長した部分もあり、いろいろな人と話をしていく中で、コーチとしての役割やチームの作り方など、よりわかってきましたし、そういった意味も含めて今すべてが楽しいですね。

――ワールドカップやセブンズなどに参加しているインターナショナルな選手もいます。が、どのようなメンバーで練習していますか?

WTB(ウイング)福士萌起がセブンズ日本代表に参加し、SHオーガスティン・プルがトンガ代表でプレーしています。オーストラリア代表経験のあるLO(ロック)ローリー・アーノルドも昨シーズンに続き、チームでプレーしています。7月から外国人選手も含めて、ほぼ全員参加してくれているので、一体感のあるいい雰囲気で練習を進めることができています。

――今季はキャプテンにベテランLO笠原雄太、FL(フランカー)/NO8(ナンバーエイト)中鹿 駿、ノア・トビオ、SH橋本法史、FB(フルバック)床田聖悟という4人の若きバイスキャプテンというリーダーの体制となりました。

今季はすごく重要な1年になると思っていますし、社員選手も多くなってきていることもあり、もう一度原点に戻り、チームへの帰属意識を高めることも含めて、社員選手がキャプテンになってチームをリードするという形にしました。

チームは73年の歴史がありますが、100年を超えていくような歴史あるチームになるにはリーダーシップを次の世代に繋げていくことも大切。これまでずっとNO8堀江恭佑とSHオーガスティン・プルがこのチームを引っ張ってきたので、彼らがアドバイザー的な存在になり、若い選手たちがリーダーシップを学んでいく機会を持つことが必要だと思いました。

――昨季まで日野はFW(フォワード)が強いイメージがありました。今季はどんなラグビーを目指していますか。

今季のスローガンは「EXCITING NEW CHALLENGE」と定めました。自分たちが目指すスタイルの「エキサイティングラグビー」はミーティングでも話しをしていて、やっている選手も、見ているファンもワクワクするようなラグビーをしていきたい。それから日野は昔からフィジーの出身選手が多いのですが、彼らは何をしてくるかわからない、ワクワクするようなラグビーをしていた。そういう歴史も踏まえて、みんながワクワクするようなラグビーを目指しています。

新シーズンに向けて語る苑田HC

――もちろん、昨季まで武器だったFWも強化する気持ちもありますね?

僕は日本代表、フランス、アイルランド、ニュージーランドといったFW、BK(バックス)一体となってボールを動かすラグビーが好きだし、選手も楽しいと思うのでそういったワクワクするラグビーがしたい。今季は特にアタック、ディフェンス、セットプレーの3つのエリアを大事にし、私がアタックを、BKコーチのアンドレ・プレトリアスがディフェンス、そして新しく入ったアイルランド出身のFWコーチのダリル・マクナマラがセットピースを担当します。

今のラグビーはラインアウトからのトライが50%前後、スクラムからのトライが10%前後と、60%がセットプレーからのトライで占められているので、セットプレーも大事なピースの1つになります。この3つのエリアで、アタックでは変幻自在の「サムライアタック」、ディフェンスは伝統の「レッドウォール」、セットプレーはマイクタイソンのように一発で相手を倒す「タイソンタイム」と、それぞれアイデンティティを作ってやっていこうと思います。

――チームとしての目標は?

「強く(T)、愛され(A)、この街の誇り(PRIDE)となるようなチーム」を目指して新しいエキサイティングなチャレンジをしたい。「チームワーク、アクション、プライド」というみんながつながり続けるといった意味も込めて「TAP」というスローガンを作りました。選手は練習後やミスをしたとき、様々なタイミングでタップして意思疎通を図っています。

――2018年から「日野レッドドルフィンズ」というチーム名で活動しています。地域密着の思いを大事にしてきたと思いますが?

地域に根差したチームを作るのはもちろんですが、リーグワンは企業チームとプロのハイブリッドな形なので、自分たちの母体があった上で成り立っていることを忘れないようにしていきたい。会社自体も苦しい状況ですが、我々が強くて愛される、この街の誇りとなるようなチームとなり、リードしていく存在になっていきたいと思っています。

――若手や新人選手も多いので、活躍が期待できそうですね。

プル、アーノルドや、昨季ずっと出ていたバイスキャプテンのFLノア・トビオあたりが中心選手になると思いますが、今季入ってきた若い選手や、昨季あまり試合に出られなかった選手も意欲的にやっているので、本当に楽しみな1年になると思います。

新しく入ってきた東海大学出身のNO8井島彰英、2年目のPR(プロップ)徳田悠人も頑張っています。朝長駿は明治大学ではFWで、日野ではBKでしたが、またFWに戻ってFLでプレーする予定です。彼のスピードやスキルを、今のラグビーの戦術であれば、外で活かせると思います。

新人の日本大学出身の水間夢翔はFWもできると思いますが、彼の良さを前面に押し出してやっていければと思うので、今はWTB(ウイング)で考えています。そういう意味では、新たな力、ベテランの経験、今一番油が乗っている中堅選手が競い合い、ワクワクするようなラグビーがしたいですね。

――改めてどんなシーズンにしていきたいですか?

あまり先のことは考えていなくて、自分たちで1つずつ未来を切り開いていきたい。多少なりとも注目されると思うので、目の前の1秒1秒に集中し、正しいことを正しく、いい判断を積み重ねて行動していくことが大切だと思っています。また「謙虚」「感謝」の気持ちを忘れずに、家族のような一体感あるチームを作っていきたい。限られた中でも選手を伸ばすのがコーチとしての仕事ですし、今いる選手でワクワクするラグビーができると思っています。選手スタッフ含め全員が成長するために献身的なハードワークをすることが重要になってくると思います。

――ファンにはどこを注目してほしいですか?

しっかり準備してチームをビルドアップしたい。自分たちのスローガン「EXCITING NEW CHALLENGE」や「TAP」を体現しながら、目標を達成し、日野市にこんな素晴らしいチーム、選手、スタッフがいることを証明したい。ファンのみなさまには、一緒になって新しいチャレンジを見ていただいて、ともに未来を築いていければと思っています。

取材/文:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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