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【ハイライト動画あり】ラグビー日本、フィジー戦で「開始7分でレッド」の試練。W杯前国内最終戦。リポビタンDチャレンジカップ2023
ラグビーレポート by 多羅 正崇トライを決めたジョネ・ナイカブラ
現地時間9月8日(金)に開幕するW杯フランス大会へ向けた、国内5連戦の最終戦。
ここまで1勝3敗のラグビー日本代表は、リポビタンDチャレンジカップ2023「パシフィックネーションズシリーズ第3戦」で、世界ランキング10位のフィジーを東京・秩父宮に迎えた。
日本は8月15日(火)にW杯メンバー発表を控えており、W杯戦士発表前の最後の実戦機会だったが、真夏のナイトゲームは序盤にアクシデントが起きた。
フィジー得意のオフロードパスを繋がれ、先制トライを許していた前半7分。
7点を追う日本は、股関節の怪我から今季初先発の19年W杯戦士、FLピーター・ラブスカフニがタックル。この際に自身の頭部とCTBヴィリモニ・ボティトゥの頭部が衝突した。
相手の進行方向と逆に頭を入れる正しい「順ヘッドタックル」だったが、位置が高かった。日本代表のジェイミー・ジョセフHCも「(ラブスカフニは)高くいってしまうところがある」と話した。
このプレーに対して、W杯フランス大会も担当する2人、マシュー・カーリー(イングランド協会)レフリー、TMO担当のブレンドン・ピッカリル(ニュージーランド協会)氏らはレッドカードという結論。
FLラブスカフニに退場処分。観衆2万2137人の秩父宮ラグビー場がどよめいた。
日本は「最もハードワークしなければならないポジション」(ジェイミーHC)であるフランカーを欠き、残りの73分間を戦うことに。これでサモア戦でのリーチマイケルに続いて、3試合で2枚目のレッドだ。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
「先週(トンガ戦)のパフォーマンスから良い準備が出来ており、自信がありましたが、レッドカードが出るとチームの考えていたストラクチャーが変わってしまいます」(ジェイミーHC)
チームは「アタックの部分ではモールなど」(HO坂手淳史)様々な準備していた。しかし14人となり応急的な戦術対応を強いられた。
「6人で取りたかったラインアウトを5人にするなど、アジャストしなければならない状況でした」(HO坂手)
リポビタンDチャレンジカップ2023 ラグビーパシフィックネーションズシリーズ
【ハイライト動画】日本代表 vs. フィジー代表
ただ14人の日本は奮闘した。
しかし前半17分に英サラセンズ所属のPRエロニ・マウィに、ゴール前のFW戦から押し切られて被2トライ目。
すると、日本にさらなるアクシデントが。
下川甲嗣
今夏ブレイクしたLOアマト・ファカタヴァが前半23分に負傷。ワーナー・ディアンズの負傷により急遽メンバー入りした下川甲嗣が、スクランブル出場で約10カ月ぶりとなる代表戦のピッチへ。
が、ここから約20分間スコアは動かなかった。
フォワードで数的不利の日本は、敵陣でモールを押し切れず、フェーズ攻撃でもパスミスなどで決定的な場面を作れない。しかし随所に効果的なダブル・タックルも見せた。
しかし前半38分。
自陣ゴール前スクラムでペナルティを与えると、今年のスーパーラグビー・パシフィック(SR)でプレーオフ進出のフィジーチーム「フィジアン・ドゥルア」所属のSHシミオネ・クルヴォリが、右に持ち出してインゴールへ。
前半を0-21で終えた日本は、後半からリザーブ4人を投入。
すると後半開始から不安定だったスクラムは改善。アタックでは自陣からでも積極的に展開してチャンスを作り出した。
長田智希
後半7分にはWTBナイカブラが戻されたキックを必死に追いかけて殊勲のトライ・セーブ。2戦先発のCTB長田智希は確実に前進するキャリー能力を存分に発揮。同16分には前半取られたゴール前のFW戦もヘルドアップで防ぐなど、フォワードも高いエナジーを持続させた。
しかし後半18分にトライを奪われ、残り20分間で28点ビハインドに。
後半21、23分にはビデオ判定でフィジーのトライが2度取り消される展開。ギリギリの状況が続く日本は、しかし後半31分だった。
敵陣左スクラムからWTBナイカブラがスピーディーな突進。
ここで途中出場のCTB中村亮土が相手を的確に排除し、生まれた中央のスペースへ、WTBナイカブラが起き上がりピックでインゴールへ。開始70分27秒で歓喜の1本目が生まれた。
さらに日本は連続トライ。
後半35分にフィジーがハイタックルでイエローカード。約70分振りに人数が同数(14対14)となって、日本は敵陣で7フェーズを重ねた。
セミシ・マシレワ
そして後半36分、日本はゴール前でアドバンテージをもらうと、途中出場のSH流が、3人を飛ばしてWTBセミシ・マシレワへ。フィジー出身の2人の連続トライで、16点差(12-28)に詰めた。
しかし日本は最終盤、パスミスで攻撃権を失うと、フィジーのWTBセレスティノ・ラヴタウマンダが突破。5トライ目を奪われ、日本の国内最終戦は23点差でノーサイドを迎えた。
試合後の会見で、日本のジョセフHCはレッドカードについて「ネガティブに考えていない。カードにフォーカスするのではなく、先に進んでいかなければいけません」と話した。
4年前はSR参戦のサンウルブズが日本の重要な強化基盤となり、W杯前にフィジーにも34-21で勝利した。
しかし日本が20年にサンウルブズを失った一方、フィジーは22年にフィジアン・ドゥルアがSR参戦。サンウルブズ同様の強化手法を採り、今回は4年前に敗れた日本に35-12で快勝した。
日本のジョセフHCも「2019年で成功したのは毎週スーパーラグビーでプレーして、高い強度、スキル、スピードの中で試合を毎週できていたからです。タフな大会があったことは自分たちとしてはよかった」と、あらためてサンウルブズの価値を評価していた。
ただ指揮官は、チームを誇りに思う、とあくまで前を向いていた。
「私が言いたいことは、30度という気温の中、(14人の)選手たちがアタッキングラグビーを見せてくれたこと。長田もカンジ(下川)も素晴らしい仕事をしてくれました」
「チームのスピリット、強い精神は凄く感じました。タックル精度は改善が必要ですが、チームの強さが見えたことは確かです」
国内5連戦が終わり、残る強化試合は国外でのイタリア戦のみ。
3試合で2枚目のレッド、そして敗戦と、不安が膨らむ結果となったが、それでも指揮官は「自信がある」と力強かった。
「このチームに関してすごく自信はあります。先週のパフォーマンスから良い準備が出て、今週一週間について自信がありました」
「(レッドカードが出てストラクチャーが変わった中で)調整して、28-0の状況から2つトライを取れたことは誇りに思います」
「ここから精度と遂行力をしっかりとやっていかなければならないと思っています」
敵陣22m内の好機におけるハンドリングエラー、ディフェンスの一貫性などに不安は残る。まだ準備万端とは言えない。
しかし、それでもW杯はやってくる。
8月15日にW杯メンバーが発表される。そして8月26日、多彩なアタックを魅せるイタリア代表と敵地で最後の強化試合を行う。
そこからフランスへ渡り、現地時間9月8日にW杯が開幕。2日後の同10日、チリ代表とのW杯初戦が待ち受けている。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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