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ともに3戦全勝、勝ち点17で並ぶ帝京大との試合前時点での総得失点差は「153」。30分遅れで始まる熊谷での帝京大対早稲田大戦の結果次第で逆転優勝の可能性があるとはいえ、何よりいい内容で関東大学春季大会を締めくくることが、この日の明治大のテーマではなかったか。ここまで積み上げてきたものを余すことなく発揮し、春シーズンの成果をパフォーマンスで示す。まさにその通りの戦いぶりで、明治が東洋大から大勝を収めた。
8人平均で身長が4センチ、体重は9キロ重い大型FWを擁する東洋を相手に、明治はキックオフ直後からコンタクト局面で圧倒して主導権を握った。開始2分、ペナルティ奪取→タッチキックからラインアウトモールを押し切って早々に先制すると、10分にも同じ流れで力強くゴールラインを越える。さらに続くキックオフレシーブから80メートル以上をつなぎ切ってWTB安田昂平がノーホイッスルトライを挙げ、序盤の15分で17-0と大きくリードを奪った。
その後は完全に明治がペースをつかみ、縦横自在のアタックで次々とスコアを重ねていく。16分、23分とWTB安田が3連続トライを決めれば、27分以降にはSO伊藤耕太郎とHO松下潤一郎が交互に2度ずつグラウンディング。40分間で9度インゴールを陥れ、57-0で前半を折り返した。
後半に入っても明治の前に出る意欲と推進力は衰えず、42分にたたみかけるような連続攻撃でSO伊藤が自身3本目のトライをマーク。48分には試合前の変更でリザーブから先発に繰り上がったルーキー、東福岡の優勝キャプテンにして高校日本代表でもスキッパーを務めたFL大川虎拓郎が、密集サイドを割ってポスト右に押さえる。さらに続くキックオフからテンポよくフェーズを重ねて相手防御を崩し切り、最後は好サポートのFL福田大晟が左中間へ飛び込んだ。
一方的な展開の中、東洋が意地を見せたのはその直後だ。明治の大外へのカットパスが乱れたところにWTBボンド洋平がすばやく反応し、こぼれ球を拾って約40メートルを独走。53分にしてこの日初めてトライラインを越え、一矢を報いる。
ラグビー関東大学春季交流大会2023 Aグループ
【ハイライト動画】明治大学 vs. 東洋大学
その後もディフェンスを起点に敵陣ゴール前でマイボールスクラムのチャンスを作ったが、ここは明治が厳しく体を当てて前進を阻み、ターンオーバー→カウンターで一気に陣地を挽回。一連の流れで敵陣22メートル線内へ攻め入ると、NO8木戸大士郎がパワフルな縦突破で左中間にねじ込み、ふたたびリズムを取り戻す。
以後、64分にFB池戸将太郎、78分と80分にはWTB安田がインゴールへ駆け抜け、トライを追加。最終スコアを102-7まで伸ばして、フルタイムを迎えた。
これで台風の影響で中止となった帝京戦を除き、4戦全勝で春季大会を終えた明治。結果的に勝ち点22で並ぶも全試合の総得失点差(帝京269、明治172)により順位は2位となったが、持ち味を存分に出して快勝で最終節を締めくくったことは、チームにとって確かな意義があるはずだ。明治らしい接点の激しさをベースにしつつ、さまざまなパターンでトライを重ねた試合内容は、大きな伸びしろを感じさせる。
順位表の数字が表すように、現時点で帝京大とともに今季の覇権争いを牽引する存在であるのは間違いない。持ち越しとなった両校の直接対決は、8月下旬の夏合宿での練習試合で予定されている。2か月後、真価を問われる戦いでそれぞれがどのようなプレーを見せるか、今から楽しみだ。
一方の東洋はAグループ5戦全敗、勝ち点0と、トップカテゴリーで戦う厳しさを実感する春シーズンとなった。もっとも昨季29年ぶりに昇格した関東大学リーグ戦1部で3位に躍進した伸び盛りのチームにとって、この段階でこれだけ多く強豪と真剣勝負を経験できたことは、大きな財産だろう。ポテンシャルを秘めた選手が多いだけに、春季大会で得た体感を糧にできれば、秋の公式戦でふたたび旋風を巻き起こす可能性は十分ある。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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