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中山大暉(慶應義塾大学)
緻密なゲームメイクとひたむきなディフェンスを軸とするチーム同士の対戦らしく、立ち上がりから引き締まった流れで試合は進んだ。緊張感ある攻防を制したのは、今季より就任した青貫浩之新監督のもとで覇権奪回へ歩を進める慶應義塾大だ。昨季の関東大学対抗戦で過去最高の2勝を挙げた立教大を31-0と完封し、関東大学春季大会Bグループで3勝目を挙げた。
キッキングゲームで優位に立つ慶應が序盤から敵陣で試合を進める中、最初のトライが生まれたのは前半9分。相手の反則からゴール前でマイボールラインアウトの好機をつかむと、モールを押し切ってHO中山大暉が右中間に飛び込む。
立教も直後のキックオフから相手陣22メートル線内へ攻め入りゴールラインに迫ったが、慶應は動じることなく鋭いタックルで対抗。接点で厳しく体を当てて圧力をかけ、ペナルティ奪取でこのピンチを脱すると、防御裏へのキックとひたむきなチェイスから逆にチャンスを作る。一連の流れで立教ディフェンスを揺さぶり、抜け出したCTB三木海芽が19分にトライを追加した。
その後も慶應が敵陣で攻めるシーンが続いたが、立教はこの苦しい場面で崩れることなく身上のハードワークを繰り返し、流れが大きく傾きそうなところをよく踏みとどまる。32分過ぎには中盤ラインアウトを起点にテンポよくフェーズを重ねて敵陣レッドゾーンへ攻め込むも、ここは慶應が懸命のカバーリングとしぶといボールへの絡みで反則を誘発。前半終了間際のピンチも慶應が渾身のディフェンスでしのぎ、14-0で折り返した。
トライ数は2対0ながら内容はほぼ互角、次にどちらが得点を挙げるかによってゲーム展開も決まるという状況で迎えた後半。その重要な立ち上がりの時間帯にスコアを刻んだのは、試合巧者の慶應だった。
キックレシーブからのカウンターで右サイドを切り返すと、敵陣22メートルライン内へ前進。そのまま早いリズムでたたみかけ、ギャップをブレイクした桐蔭学園出身のルーキー、FB松田怜大が左中間に押さえる。慶應にすれば前半30分以降押し込まれる局面が多かっただけに、ここでトライを取れたことは大きかったはずだ。
ラグビー関東大学春季交流大会2023 Bグループ
【ハイライト】慶應義塾大学 vs. 立教大学
佐藤侃太朗(立教大学)
立教もすかさず反撃に転じ、46分にCTB佐藤侃太朗があざやかな縦突破からインゴールへなだれ込んだが、慶應の懸命のタックルにグラウンディングを阻まれトライはならず。するとこのピンチを守り切った慶應が、ふたたびゲームの主導権を握る。
試合を決める4本目のトライが生まれたのは54分。中盤で辛抱強くアタックを継続してゲインを重ねると、中央ラックからピックアンドゴーでCTB山本大悟が抜け出し、サポートしたHO中山がフィニッシュ。SO永山淳のコンバージョン成功でリードは26点に広がった。
61分にはラインアウトモールから右オープンに振って巡目に仕掛け、FB松田が見事な個人技で相手タックラーを振り切り自身2本目のトライをマーク。以降は多くのメンバーを入れ替えながらゲームをコントロールし、時計を進める。追加点こそ奪えなかったものの相手にも得点を許さず、31-0の最終スコアでフルタイムを迎えた。
この勝利で春季大会は3勝1敗となり、勝ち点を14に伸ばした慶應。攻め込まれても簡単にゴールラインを破らせず、ここという場面で集中力を発揮して得点を積み上げた戦いぶりは、FL出身の青貫新監督のカラーを感じさせるものだった。この日欠場のSO/FB山田響、NO8福澤慎太郎ら個の力で膠着状況を打開できるアタッカーが加われば、さらに得点パターンは広がるはず。Aチームデビュー戦で2トライと非凡なポテンシャルを示したFB松田も大きな期待を抱かせた。
今後は6月4日の早稲田大との招待試合(@岐阜・長良川競技場)を経て、6月11日に春季大会最終戦で筑波大学と激突する(@筑波大グラウンド、12時キックオフ)。春シーズンの締めくくりはその2週後の同志社大学戦(6月25日@静岡・草薙総合運動公園)だ。実力校とのタフな連戦を通してどのようにチーム力を伸ばしていくかが注目される。
立教大も結果的に完封負けを喫したものの、鋭いタックルでたびたび相手を押し返し、一体感あるアタックで何度も敵陣深くまで攻め込むなど、多くの見せ場を作った。さらに連携を深め、チャンスを仕留めきる決定力が高まれば、チームとしてもう一段上の戦いができるだろう。こちらも今後の成長が楽しみな存在だ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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