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ラグビー コラム 2023年5月27日

ラグビーU20日本代表、粘り強くニュージーランド学生代表に逆転勝ち。「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」に向け大きな自信

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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NZUに勝利したU20日本代表

6月24日(土)から南アフリカで開催される「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」を控え、5月27日(土)に東京・秩父宮ラグビー場で「U20日本代表」が「NZU」(ニュージーランド学生代表)と対戦した。

なお、U20年代の日本のチーム(当時はU20選抜)が、NZUと国内で対戦するのは10年ぶりで、2013年に沢木敬介監督(現・横浜キヤノンイーグルス監督)と、姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)キャプテンが率いるチームが19-61で敗戦している。

U20日本代表のメンバーは試合前に変更され、NO8(ナンバーエイト)最上太尊(明治大学2年)がメンバー外となり、控えだったNO8宮下晃毅(関西学院2年)が上がり、控えにはFL(フランカー)利川桐生(明治大学2年)が入った。

ハカを見せるNZU

最高気温26度と夏を感じさせる快晴の中、2526人のファンが「東の聖地」に集い、NZUがハカを披露した後、午後1:00にNZUのボールでキックオフされた。

NZUのハカに逆V字で対抗するU20日本代表

前半、先制したのはNZUだった。前半5分、スクラムを起点に攻め込み、最後はWTB(ウイング)ジェレマイア・アシが左隅にトライを挙げ、5点を先制した。U20日本代表もすぐに反撃。11分、LO(ロック)ハリー・ウィラード(ダラム大学1年)が前に出て、最後はCTB(センター)平翔太(明治大学2年)が中央左にトライ。SO(スタンドオフ)楢本幹志朗(筑波大学2年)がゴールを決めて、7-5と逆転する。

トライを挙げるSH土永

その後、NZUにPG(ペナルティゴール)を決められたが、18分、ハーフウェイラインのラインアウトから右に展開し、WTB御池蓮二(立命館大学2年)がトライ。ゴールも決まり、12-8。さらに24分、相手のパスが乱れたボールをSH(スクラムハーフ)土永旭(京都産業大学3年)が奪い返して左隅にトライ。21-8とリードを広げた。

しかし、30分を過ぎるとNZUの時間帯となる。33分、NZUはラインアウトモールを起点に左に展開し、再びWTBアシがトライ。さらに前半終了間際にモールでHO(フッカー)テ・アリキ・テ・プニが押さえて、21-20と1点差に追い上げられて前半を終了した。

後半、U20日本代表は先に点を取りたかったが、4分、NZUのWTBアシにハットトリックとなる3本目を許してしまい、21-27と逆転を許してしまう。だが、U20日本代表も負けていない。11分、ラインアウトのサインプレーからWTB御池が裏にキックし、バウンドしたボールを自らキャッチ。フォローしたFL小林典大(関西学院大学2年)が左中間にトライ、28-27と再逆転に成功する。

しかし15分、18分、NZUのFW(フォワード)からプレッシャーを受け、2トライを奪われ、28-39と11点のリードを許す。ここでキャプテンの大町佳生(帝京大学2年)は「ここで落ちてしまったら、サモア遠征に行ったが意味なくなってしまう。マインド、インテンシティのところを上げよう」と声をかける。また、「相手WTBの後ろにスペースがあるから、そこを攻めよう」と意思統一をした。

ファーストタッチでトライを挙げたWTB矢崎

するとフレッシュレッグスが入ったFWが、スクラムで相手の反則を誘った後、ラインアウトからボールを継続。23分、途中出場したWTB矢崎由高(早稲田大学1年)がラインブレイクし、足に2度かけて自らキャッチ。そのままトライを挙げて35-39。「(自分の出来は)満足はしていないが、自分の力で1トライ取れたのは良かった」(矢崎)。

ペナルティトライを挙げて喜ぶFW陣

さらに相手ゴール前で反則を得て、スクラムを選択。2度、ペナルティをもらい、相手の右PR(プロップ)がシンビン(10分間の退場)となる。そして30分、3度、スクラムを選択して押し込むと、相手が反則を犯してペナルティトライ。U20日本代表が42-39と逆転する。

後半途中で交代したHO(フッカー)長島幸汰(同志社大学2年)は、「相手は大きいので、僕らが低く組むことで大きなアドバンテージがある。試合前からも低さにフォーカスすれば、相手がどれだけ大きくても優位性が持てるとわかっていた。チームとしてやってきたことがスコアにつながったことはうれしい」と笑顔を見せた。

大きな自信を得て南アフリカに向かう

さらに、数的有利となったU20日本代表は自陣からボールを継続、32分、左サイドをCTB野中健吾(早稲田大学2年)、NO8宮下、FL小林とつないで小林が2つ目のトライを挙げて47-39。35分にはSO楢本のキックパスをWTB御池がトライし、52-39と大きくリードした。38分にトライを返されたが、結局、U20日本代表が8トライを重ねて52-46で、見事に勝利を収めた。

NZUから称えられたNO8宮下

3週間前にこの試合が決まったというNZUのジェイソン・マクリーンHC(ヘッドコーチ)は「月曜に来日して、水曜に初めて試合を行った。そこから非常に大きな進歩を見せることができた。勝つことはできなかったが、パフォーマンスに関しては、ある程度納得のいくものだった。もう1週間、準備の時間があればもっといいトライがたくさん取れたたし、プレッシャーをかけることができたのではないか」と振り返った。

両チームのキャプテン

キャプテンのPRニック・グロゲンは「目まぐるしい展開となったが、我々が準備してきたことや、ジャパンが取り組んできたことが反映された試合だったのではないかと思う。(スクラムについては)前半は良かったが、後半はジャパンが強く組んできた。スクラムがこの試合の流れをひっくり返すことにもつながった印象」と話した。

ロブ・ペニーHC(右)と大町キャプテン

U20日本代表を率いるロブ・ペニーHCは「後半11点差になった時、めげずに反撃できたところにチーム力、人間性を見せられた。そういった部分はこれからの南アフリカの遠征に反映できる部分だと思う。身体の大きな選手がオフロードをしてくるところのディフェンスで、対応できないところで弱みを見せていた」。

「南アフリカではニュージーランド、フランス、ウェールズと対戦するので改善しないといけない。アタックでは自信を持ってフェーズを重ねて圧力をかけていければ、アタック力のあるチームだと今日も証明できた」と冷静に話した。

大町キャプテンは「オフロードの部分で、どうしてもつながれてしまった。その原因はダブルタックルや、ディフェンスラインを上げきれなかったこと」と反省しつつも、「桜のジャージーは価値のあるものなので、背負って、ここ(秩父宮ラグビー場)でプレーできてうれしい。80分間、僕たちのラグビーを体現できた。しっかりチャンピオンシップに向けて準備したい」と前を向いた。

ゴールを狙う司令塔のSO楢

司令塔のSO楢本は「かなり納得いくゲーム運びだった。試合中に選手、コーチから改善点が出て、それを修正できたのが勝因。ただ、46点も取られたのが現状なので、これからの合宿で修正していきたい」と納得の表情を見せていた。

2トライを挙げたFL小林

2トライのFL小林は「相手はむちゃくちゃ強かったが、小さい分、低さにこだわってきたので、そこで勝負を分けられた」。同じく2トライのWTB御池は「個人的には波がなく、いつも通りにできた。個人としてはしっかりラインをためる、チームとしてはブレイクダウンをファイトして奪い返すことをテーマにしてやった。ペナルティが多かったので修正したい」と話した。

こちらも2トライのWTB御池

合宿、試合を重ねるごとにチーム力が上がっているU20日本代表。6月上旬に再び合宿、練習試合を経て、南アフリカに遠征する30名に絞るという。ペニーHCは「選手が仕事をしてくれたので、セレクターとして仕事を成し遂げるだけ。(選考するときに)プライドを持って日本を代表することが一番。熱意だとか、容赦しない精神を自分が一番見ていく」と話した。

試合終了後、両チームとレフリーで記念撮影

「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」まで残り1ヶ月あまり、NZU戦で大きな自信と課題を得たU20日本代表は、チームをもう1段階、2段階成長させて世界の強豪相手に挑みたい。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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