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かたや最多16回の大学選手権優勝を誇る国内随一の伝統校、早稲田大。対するは昨季29年ぶりに昇格した関東大学リーグ戦1部の初戦で4連覇中の東海大を撃破し、3位に躍進するなどセンセーションを巻き起こした東洋大。公式戦初顔合わせとなった前年度大学選手権の3回戦では、東洋大が一時19-7までリードするも後半に早稲田大が巻き返し、34-19で逆転勝ちを収めている。そんな両校が5月21日、関東大学春季大会でふたたび対峙する(13時キックオフ@早稲田大学上井草グラウンド)。
それぞれの今季の足跡を振り返ると、早稲田大は5月7日の東海大戦に33-19で勝利し、大田尾竜彦監督の就任3年目で初めて春季大会で白星スタートを切った。翌週の明治大戦は24-45で敗れたものの、前半5-28と大きく先行されたところからスクラムの修正を足がかりに後半3トライを返し、残り10分で9点差まで猛追。最後は引き離されたが、スピーディーな連続展開や鋭い切り返しであざやかに仕留めきるなど、非凡なポテンシャルを披露した。
昨季選手権決勝での大敗(20-73帝京大)をさまざまな視点から見つめ直し、たどり着いた覇権奪回への突破口は「自分たちしかできないものを磨き上げる」という発想だ。「オリジナルのものをいくつ持てるか。こぼれ球への反応や最後まで諦めない姿勢、そういった細かい部分がワセダの強みだと思う」(大田尾監督)。その半面、ラグビーの根幹となるフィジカル強化にも昨季以上に時間を割いて取り組んでおり、ウエートトレーニングやフルコンタクトのメニューを大幅に増やしたという。
その成果は、明確にボリュームアップした各選手のシルエットはもちろん、プレーの端々からも見てとれる。東海大戦では序盤からコリジョンのバトルで優位に立ち、明治大戦もタックルで相手をドミネートする場面がたびたびあった。1年時から主軸として活躍してきたHO佐藤健次は、「昨シーズンの最後のほうが104キロほどで、今は109キロ。去年の春も110キロくらいありましたが、ただ大きいだけだった。今年は109キロで走れる体になっているので、いいトレーニングができていると思います」と手応えを口にする。
一方の東洋大は4月23日の春季大会初戦で昨季大学王者の帝京大と対戦し、14-92で完敗。中3週で臨んだ第2戦でも、同じ関東大学リーグ戦所属の東海大に21-113と大敗を喫した。キャプテンのLO齋藤良明慈縁(現静岡ブルーレヴズ)やSH神田悠作(現九州電力キューデンヴォルテクス)、SO土橋郁矢(現NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)ら躍進の原動力となった昨季のレギュラー10人が卒業し、試合経験の少ない下級生主体のチームになったこともあって、ここまで厳しい戦いが続いている。
最大の課題は、2試合連続で大量失点を喫したディフェンス面だ。昨シーズンはひたむきなタックルをベースに粘り強く守って失点を最小限にとどめ、クロスゲームに持ち込んで競り勝つというのが勝利のパターンだった。今後どんなスタイルを目指していくにせよ、ゲームメイクの要となる部分だけに強化は必須。優れた攻撃力を有する実力者との対戦が続く春季大会の残り3試合で、少しでもいい感触をつかみたいところだろう。
早稲田大学スターティングメンバー
2日前に発表された登録メンバーを見ていくと、早稲田大は前週の明治大戦からスターター3人を入れ替えた。前節途中出場で存在感を示した亀山昇太郎が右PRに入り、左PR門脇浩志、HO佐藤健次とフロントローを形成。BKでは期待のルーキー、矢崎由高が入学後初スタメンで11番に名を連ねた。最後尾のFBは、4年生の大型BK京山秀勇が務める。
東洋大学スターティングメンバー
対する東洋大の前節東海大戦からの先発変更は1人だけ。211センチ、132キロのジュアン・ウーストハイゼンに替わって194センチ、106キロの笠掛優がリザーブから5番に。それ以外の14人は先週に引き続きスタートからの出場だ。学年を見るとFLヴェア タニエラ主将を筆頭に4年生が4人、3年生が5人、2年生が5人、1年生がWTB坂本琥珀ひとりという構成になっている。
両校にとって全5試合の春季大会で中間点の3試合目となるこの一戦。実戦を経験することで相互理解が深まり、チームとしての今シーズンの戦い方が徐々に輪郭を帯びてくる頃だろう。それぞれがどのように進歩したパフォーマンスを見せるか、注目だ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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