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日本ラグビーの頂点に立つのはどちらのチームなのか。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023のプレーオフ決勝戦が、国立競技場にて、5月20日(土)、午後2時30分にキックオフされる。
連覇を狙う王者・埼玉パナソニック ワイルドナイツ(埼玉WK)は、準決勝で横浜キヤノンイーグルス(横浜E)を51-20で退けた。前半は2トライを奪われたが、SO松田力也の4PGとドロップゴールで15-17と差を詰め、後半はギアを上げた。後半20分までに、WTBマリカ・コロインベテ、CTBディラン・ライリーのトライで、34-20とリードし、横浜Eにレッドカードが出て、14人になった後は2トライを加えて突き放した。
前半は我慢し、後半に選手間のコミュニケーションを密にして得点を重ねる王者のスタイルはこの日も健在だった。ロビー・ディーンズ監督はその攻撃をダムにたとえた。「ダムのどこかに穴が開けば、そこから決壊して一気に水が流れ込みます」。ディフェンスの背後にキックを使うなど、どこを崩すかをチーム全員が理解し、穴を開ける。決勝戦でも同じような展開になるのか。その対応力の高さは相手にとって最大の脅威になる。
埼玉ワイルドナイツスターティングメンバー
爆発的な走りで3トライをあげたコロインベテは、秩父宮ラグビー場バックスタンドの壁に激突して心配されたが、決勝戦のメンバーには名を連ねた。稲垣啓太、坂手淳史キャプテン、ヴァルアサエリ愛のFW第一列ほか、先発15名は変わらず。ルーキーの長田智希が引き続きWTBに入り、準決勝で堅実なハイパントキャッを披露した野口竜司が最後尾を守る。リザーブ(控えメンバー)の変更はPRの控えが藤井大喜に代わってスクラムに自信を持つ平野翔平が入ったのみ。プレーオフをほぼベストの布陣で戦えるのは、質の高いトレーニングと、無理をさせないマネージメントがあるからこそだろう。
対するクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)は、東京サントリーサンゴリアスとの死闘を制して初の決勝進出となった。終了間際に逆転につながるトライを奪われたかに見えたが、東京SGの選手がボールを押さえたかどうか映像でも確認できず、そのままノーサイド。まさに薄氷を踏む勝利だった。「最後まで勝敗がどちらに転ぶか分からない試合で勝てたことは自信につながります」(立川理道キャプテン)。準決勝では相手にレッドカードが出たにもかかわらず、数的優位を生かすことができなかった。決勝では、SH谷口和洋、SOバーナード・フォーリー、CTB立川を軸に立体的にボールを動かしたい。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイスターティングメンバー
メンバーは先発15人で3名の変更がある。準決勝の開始早々に負傷退場した海士広大は欠場。準決勝で海士の交代で入ってスクラム、ボールキャリーで大活躍した紙森陽太が1番のPRに入る。LOヘル ウヴェはリザーブに下がり、4番のLOでベテランの青木祐樹が先発。CTB(13番)はリカス・プレトリアスから今季限りで引退を表明しているライアン・クロッティへ。クロッティは準決勝ではリザーブだったが、今回は先発で元ニュージーランド代表の経験値の高さを見せつけたい。HOリザーブは杉本博昭からスカルク・エラスマス、紙森に代わってPR(1番)の控えは元・宗像サニックスブルースの加藤一希。CTBの控えにテアウパ・シオネが入り、オペティ・ヘル、ヘル ウヴェ、ハラトア・ヴァイレアとともにインパクトプレーヤーとなる。
埼玉WKは安定したディフェンスから一気に切り返すアタックを得意とする。キックに対しても野口竜司を軸にフィールディングが良く、機を見て思い切ったカウンターアタックを仕掛ける。S東京ベイも攻撃でミスをすれば、そこから失点し、不用意なキックを使えばカウンターアタックを食らうだろう。S東京ベイの強みは強いボールキャリアが多いことで、得点力が高い。彼らを効果的に使って前進し、根塚洸雅、木田晴斗という決定力あるWTBを走らせたい。
今季はレギュラーシーズンの交流戦(3月4日)で対決し、30-15で埼玉WKが勝っている。後半28分まで20-15という僅差だったが、SO山沢拓也がドロップゴールを決めて、トライ、ゴール、PG、ドロップゴールとラグビーの得点方法をすべて決めるフルハウスを達成。最後は長田のトライで突き放した。この試合も含め、埼玉WKはS東京ベイとの対戦成績は現在14連勝中(プレーオフの成績を含む)だ。埼玉WKの優位は動かないが、立川キャプテンは言った。「相手がどのチームだろうと、自分たちのラグビーをするだけ。そうすれば結果はついてくる」。松田力也とバーナード・フォーリーのプレーメイカー&プレースキッカー対決、長田智希と木田晴斗のルーキーWTB対決ほか、注目のマッチアップも多い。観る者の胸をときめかせるようなプレーが相次ぐ戦いを期待したい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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