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【ハイライト動画あり】薄氷を踏む勝利で、S東京ベイが初の決勝進出 東京SGは「14人で最高のパフォーマンス」も悔しい敗戦
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
リーグワンプレーオフ準決勝第2試合は、5月14日(日)、秩父宮ラグビー場(東京都港区)で開催され、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)が24-18で勝利。初の決勝進出を決め、5月20日、国立競技場で埼玉パナソニック ワイルドナイツと対戦することになった。一方、敗れた東京サントリーサンゴリアス(東京SG)は、5月19日、秩父宮ラグビー場で開催される3位決定戦で横浜キヤノンイーグルスと対戦する。
準決勝第2試合は、勝負の綾が幾重にも重なる戦いだった。秩父宮ラグビー場には、13,065人の観衆が集った。その多くが、S東京ベイが配布したオレンジのベースボールシャツ、東京SGのイエローの帽子をかぶり、スタジアム全体が明るい色に包まれてのキックオフだった。午後12時5分、S東京ベイのSOバーナード・フォーリーがボールを高く蹴り上げる。キャッチした東京SGのLOツイ ヘンドリックを、S東京ベイのPR海士広大が抱えて込んでターンオーバーを勝ち取る。直後のスクラムでは東京SGの反則を誘い、PGチャンスを得るもフォーリーのPGは外れる。
直後に東京SGのツイがボールを持って突進してきた海士の顔面に頭部をぶつける危険なタックルでレッドカード(退場処分)を受ける。海士は担架で運ばれ退場。S東京ベイは大切なFW第一列の選手を失った。東京SGは残り75分を一人少ない14名で戦うことになる。しかし、齋藤直人キャプテンはすぐに対処する。「アタックのシステムを変更しました。攻撃ではショートサイドを多用し、守ってはブレイクダウンに人数を割かず、立っている人数を多くしました」。練習から多数のシナリオを作り、14人の戦い方を全員が理解していたからこその対応力だった。
試合はS東京ベイのペースで進んだが、前半16分、東京SGは元ニュージーランド代表SOアーロン・クルーデンがロングPGを決めて、3-0とリード。その後、S東京ベイのPR北川賢吾が危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)になるなど、互いの熱いプレーが行き過ぎる面もあったが、相手のミスや、ターンオーバーに機敏に反応する両者のハイレベルの攻防が続いた。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【プレーオフトーナメント 準決勝-2 ハイライト】クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 2位) vs. 東京サンゴリアス(D1 3位)
前半24分、海士に代わって出場したPR紙森陽太がトライして、S東京ベイが7-3と逆転すると、30分、東京SGがトライを返す。CTB中村亮土のジャッカルで反則をさそい、そのPKから松島幸太朗が防御背後の広いスペースにキック。これを追ったWTBテビタ・リーがトライをあげる。アイコンタクトで防御のいないスペースをつくトライだった。前半の東京SGは粘り強くディフェンスしてワンチャンスをものにし、スクラムでは怪我の垣永真之介に代わって今季初先発となった細木康太郎が安定したスクラムを組んだ。14人ということを感じさせない戦いで、前半は東京SGリードで折り返す。
松島幸太朗(東京サンゴリアス)
後半開始早々、S東京ベイのWTB木田晴斗が松島に強烈なタックルを見舞って反則を誘いスタンドを沸かせる。後半7分、フォーリーがPGを決めて10-10の同点。東京SGは後半10分、FW第一列を全員交代させ、SHも齋藤から流大にチェンジ。攻撃をテンポアップさせてS東京ベイにプレッシャーをかける。クルーデンのPGで一歩リードも、直後に自陣から攻撃を仕掛けたとき、松島のキックをS東京ベイHOマルコム・マークスにチャージされ、そのままFWでつながれてトライを奪われる。スコアは、17-13でS東京ベイのリード。
その後も東京SGは攻撃の手を緩めない。後半17分に今季初出場となったCTBサム・ケレビを投入すると、ケレビが強烈なタックルを見舞って観客を沸かせ、パワフルな突進で攻撃の軸となる。しかし、22分、ゴール前のラインアウトでノットストレート。24分には交代出場の尾崎泰雅がインゴールに駆け込むも、TMO(映像判定)でトライキャンセル(一連のプレーでノックオンがあった)。連続して好機を逸する。
防戦一方のS東京ベイもフォーリーのディフェンス背後へのキックでゴールに迫り、交代出場のCTBライアン・クロッティ、NO8ファウルア・マキシの突進の後、フォーリーがトライ。結局、これが決勝点になった。あきらめずに攻め続ける東京SGと、懸命にしのぐS東京ベイの攻防でスタジアムは興奮のるつぼとなる。試合時間80分を告げるホーンが鳴ったあとも、東京SGはボールをつなぎ続け、「試合に出たら勝利に貢献したかった。ぜったいに何かしてやろうと思っていた」という尾崎泰雅がインゴールにボールを押さえる。しかし、これもTMOでトライキャンセル(一連の攻撃でスローフォワードあり)。
それでも東京SGはあきらめない。2分後には、クルーデンの好タッチキックでゴール前のラインアウトを得てモールを押し込む。上手く方向を変えながらインゴールに入り、交代出場のHO中村駿太がボールを押さえたかに見えた。東京SGサポーターは歓喜する。しかし、レフリー、アシスタントレフリーからはグラウンディングが見えなかった。TMOでも確認できずにトライは認められなかった。東京SGにとっては納得しかねる判定のはずだが、流大は「レフリーの判定がすべて。14人で最高のゲームができた」と話した。
初の決勝進出を決めたS東京ベイの立川理道キャプテンは、「タフな試合でした。最後まで勝敗がどちらに転ぶか分からない試合で勝ち切れて自信になった。サントリーが14人で良い戦いをしたことを尊敬します」と東京SGを称えた。TMOの適用方法では、映像に頼りすぎ、時間のかけすぎと多くの観客が感じたであろう試合運営の課題は残ったが、選手たちは観客を魅了する質の高いラグビーを見せてくれた。3位決定戦、決勝戦も好試合を期待したい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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