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【ハイライト動画あり】埼玉パナソニックワイルドナイツ、したたかな強さを見せて横浜キヤノンイーグルスに逆転勝ち。ジャパンラグビー リーグワン プレーオフ準決勝
ラグビーレポート by 斉藤 健仁POMに輝いたSO松田
「NTTジャパンラグビー リーグワン」ディビジョン1のプレーオフ準決勝第1試合が、5月13日(土)に東京・秩父宮ラグビー場で行われた。連覇を狙うリーグ戦1位の埼玉パナソニックワイルドナイツと、4位で初のベスト4入りを果たした横浜キヤノンイーグルスが激突した。
ワイルドナイツの失点は270点とリーグで一番少なく、反則数も173でリーグ2位の少なさだ。一発勝負のプレーオフ、やはり武器であるディフェンスから流れをつかみたい。一方のイーグルスはトライ数では、リーグトップタイの84トライを誇り、得点もリーグ2位の588点と攻撃力が自慢。得意のモールから主導権を奪いたいところだ。
今季は1月28日の交流戦で1度対戦しており、ホストのワイルドナイツが、21-19で逆転勝ちを収めている。リーグ戦1位の王者ワイルドナイツが強さを見せて連覇に王手をかけるのか。それともイーグルスが初のプレーオフ出場の勢いのまま、ファイナルに駒を進めるのか。
ワイルドナイツのキャプテンHO(フッカー)坂手淳史と、イーグルスのゲームキャプテンFL(フランカー)嶋田直人がともに、キーポイントに「規律」を挙げた試合は小雨の降る中、午後2:35にワイルドナイツボールでキックオフされた。
先に規律が乱れたのはワイルドナイツだった。前半2分、ワイルドナイツの日本代表PR(プロップ)ヴァルアサエリ愛が、危険なタックルでシンビン(10分間の一時的退室)となる。
トライを挙げたNO8ハラシリ
勢いの出たチャレンジャーのイーグルスは相手陣に攻め込み、14分、ラインアウトからモールを形成し、NO8(ナンバーエイト)シオネ・ハラシリがトライ。日本代表経験豊富なSO(スタンドオフ)田村優がゴールを決めて7点を先制する。だが、ワイルドナイツもすぐに反撃し、スクラムで反則を誘い、18分、日本代表SO松田力也がPG(ペナルティゴール)を沈めて3-7とする。
アタックをリードしたSHデクラーク
20分、集中していたイーグルスはゴール前の相手反則から、南アフリカ代表SH(スクラムハーフ)ファフ・デクラークが隙をついてクイックタップでスタート。ライン際で待っていたWTB(ウイング)イノケ・ブルアが右端に飛び込んでトライ。SO田村が難しい角度のゴールを決めて、14-3とリードを広げた。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【ハイライト動画】プレーオフトーナメント準決勝 埼玉ワイルドナイツvs.横浜キヤノンイーグルス
しかし、ワイルドナイツは焦ることなく、23分、29分、相手の反則からSO松田が落ち着いてPGを決めて、9-14と追い上げる。さらに35分、アドバンテージの中、SO松田がDG(ドロップゴール)を沈めて12-14と2点差とした。
松田が決めれば、田村も黙っていない。38分、相手のゴールラインドロップアウトのボールを、ハーフライン付近でパスを受けたイーグルスのSO田村が、約45mのDGを成功させて、点差を再び5点と広げた。ロスタイム、イーグルスのSO田村が危険なタックルでイエローカードとなり、SO松田が中央からのPGを決めて、ワイルドナイツは15-17でハーフタイムを迎えた。
後半、数的優位となった2点ビハインドのワイルドナイツは「前半は(キッキングゲームで)相手にボールを渡していたので、後半アタックはしないといけない」(SO松田)とギアを上げる。
後半だけでハットトリックを達成したWTBコロインベテ
後半2分、キックカウンターからワイルドナイツはボールを継続して、日本代表CTB(センター)ディラン・ライリーが抜け出してチャンス。最後はオーストラリア代表WTB(ウイング)マリカ・コロインベテがピック&ゴーで抜け出してトライ。ゴールも決まって22-17と逆転に成功する。11分、イーグルスはFB(フルバック)小倉順平がPGを決めて、2点差に追い上げた。
キックキャッチ、チェイスで良いプレーを連発したFB野口
しかし、勢いに乗るワイルドナイツは13分、相手のハイパントキックをFB野口竜司があざやかにキャッチし、フォローしたCTBライリーが裏にキック。最後はWTBコロインベテが中央にトライを挙げて29-20。さらに17分、相手ゴール前でターンオーバーし、最後はアングルチェンジで内に切れ込んだCTBライリーがトライを挙げて、36-20と突き放した。
24分にはイーグルスの南アフリカ代表CTBジェシー・クリエルが、ラックで危険なプレーをしてしまい、レッドカードで退場となった。攻撃の手を緩めないワイルドナイツは、SO松田がPGを決めて39-20。31分には自陣からクイックタップでスタートし、左サイドをアタック。最後はWTBコロインベテが50mを走り切ってハットトリックとなるトライ。44-20とさらにリードを広げた。
存在感を見せたHO堀江
さらに36分にはモールを組んで、途中出場のHO堀江翔太が左端に飛び込んでトライ。試合はそのままノーサイドとなり、ディフェンディングチャンピオンのワイルドナイツが後半だけで5トライを重ね、51-20で大勝した。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)にはゴール成功率100%(PG5本、ゴール3本、DG1本)のワイルドナイツのSO松田が選出された。「キックを蹴れるのは味方がトライを取ってくれるからなので、(POMは)僕じゃなくても良かった(苦笑)。(キックは)角度がないところが多かったが、自分の役割を果たせて良かった」。
沢木監督(右)と嶋田ゲームキャプテン
クラブ史上初のプレーオフとなったイーグルスの沢木敬介監督は「(前半)40分は、ある程度戦えた。ワイルドナイツはコンタクトやセットプレーなど、シンプルなプレーでプレッシャーをかけられる。経験のない選手が多い中でチャンピオンのワイルドナイツとの戦いはいい勉強になったと思う」。
「現状、このくらいの差はあるんだろうなというのをしっかり受け止めたい。今まで築いてきたものに自信を持っていいと思うので、もう1回、しっかり成長を見せられるように、チーム全員で3位を狙いにいきたい」と話した。
嶋田を先頭に「トレイン」でロッカーに戻るイーグルス
ゲームキャプテンのFL嶋田は「自分たちがプレッシャーを相手にかけて、いい前半を過ごせたと思うが、後半、規律の部分や疲れ、プレッシャーなどで、システム通りいかなくなって、自分たちから崩れてしまう場面がどんどん多くなって、最終的に点差も離れた。まだ、あと1試合あるので、最後しっかり勝って笑顔で終われるように1週間、準備していこうと思う」と話した。
随所にベテランらしいプレーをみせたSO田村
司令塔のSO田村も「僕がシンビンをしたのもありますし、何より、インテンシティーを40分しかチームとして保つことができなかった。大事なことがわかったと思うので、この痛い経験から学ぶだけ。もっとこのチーム強くします。(来週は)3位を目指す。今年はこういうチームだったと組織として見せたい。今日みたいに下手でも、何か伝わるプレーをしたい」と振り返った。
ディーンズ監督(右)とHO坂手主将
後半、見事な逆転勝ちを収めたワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は「フィジカルな準決勝になった。相手からとても厳しいプレッシャーをかけられて、前半はチームとして流れをつかめなかったが、選手たちはその中で自分たちの道というものを探して勝利に導いてくれた」。
「ハーフタイムを超えてから、自分たちが裏に出るということができて、そこからいいモメンタムが生まれて試合を開かせ、勝利に導いてくれた」と冷静に振り返った。
ノーサイド、ワイルドナイツが決勝へ
HO坂手キャプテンは「今日1日、一番努力したチーム、そして一番努力した個人であろうとチームに伝えてゲームに入った。前半、難しい時間帯がたくさんあり、流れに乗れない部分があったが、全員がゲームを維持し続けた40分だった」。
「後半になったら、自分たちの時間が来るだろうと思っていた。本当に23人、またチーム全員で勝ち取った勝利だと思う。イーグルスさんはすごく強かったですし、タフなゲームだった。身体も痛いし、本当にしんどいゲームだった。ただ、勝ち切れたことは大きな一歩だと思うので、また成長して次に向かいたい」と前を向いた。
POMのSO松田
昨季はケガのためプレーオフに出られなかったSO松田は「(前半リズムがつかめなかったが)どう自分たちがリズムを取り戻すか。ダイレクトにアタックして、スペースがあればキックして、ディフェンスから流れを作ろうと話をしていた。みんなが一緒の画を見られていたからこそ、前半は15-17で折り返すことができた。それが大きかった」と笑顔で振り返った。
トップリーグ時代から3シーズン連続のファイナル進出を決めた埼玉パナソニックワイルドナイツは、5月20日(土)、東京・国立競技場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイと決勝戦を迎える。横浜キヤノンイーグルスは5月19日(金)、東京・秩父宮ラグビー場で、東京サントリーサンゴリアスとの3位決定戦に臨む。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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