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激しい雨の中での対戦となった
ラグビー関東大学春季交流大会のAグループ、5月7日(日)には神奈川・城山陸上競技場(小田原)に、東海大学(昨季関東大学リーグ戦1位)が昨季の大学選手権のファイナリストである早稲田大学(関東大学対抗戦3位)を迎えた。
東海大学ラグビー部が神奈川県ラグビー協会、小田原ラグビー協会などの協力を得て、小田原でのホーム開催を実現したとのことで、6月18日(日)の東海大学vs.帝京大学の試合も小田原で行われる。
東海大学SEAGALES(シーゲイルズ)
東海大学は先週の開幕戦で、同じリーグ戦に所属するライバル・流通経済大学(リーグ戦2位)にアウェイで、21-40で勝利していた。春季大会の2試合目、しかもホームでの試合ということで、キャプテンのFB(フルバック)谷口宜顕(4年)は「見に来てくださった方々に恩返しするのは、この試合に勝つしかない」とチームメイトと話して試合に臨んだ。
今季の開幕戦となる早稲田大学
一方、この試合が春季大会の開幕戦となった早稲田大学は、この10年、春季大会で東海大学に勝利したことがなく、当然、3年目を迎える大田尾竜彦監督体制下でも同様で、2月に新チームが始動したときから、この試合をターゲットにしてきたという。大雨が降る中、午後1:00に東海大学ボールで試合はキックオフされた。
試合の主導権を握ったのは『アカクロ』ジャージーだった。今季のスローガンに『WASEDA FIRST』を掲げた早稲田大学は試合の入りから集中しており、特にフルコンタクトの練習を1週間で30分から2時間に増やし、さらにレスリングトレーニングを復活させたことが功を奏し、接点で優位に立ち、相手のオフサイドを誘いチャンスを得る。
キックを主体にゲームを作った早稲田SO伊藤
前半5分、早稲田大学は相手ゴール前でモールを形成し、まっすぐ押してHO(フッカー)佐藤健次(3年)が左中間に押さえてトライ。キャプテンSO(スタンドオフ)伊藤大祐(4年)もゴールを決めて、7点を先制する。
その後も早稲田大学の時間帯が続き、11分、SH(スクラムハーフ)宮尾昌典(3年)のグラバーキックをWTB(ウイング)磯崎錬太郎(4年)が左隅に押さえてトライ。14分にはキックカウンターからHO佐藤がゲインし、最後はフォローしたCTB岡本大輝(4年)が左中間にトライ。ゴールも決まって、19-0と大きくリードする。
関東大学春季交流大会2023 Aグループ
【ハイライト動画】東海大学 vs. 早稲田大学、雨中の小田原決戦
東海大学は17分に反則の繰り返しにより、HO安藤良太(4年)がシンビン(10分間の一時的退場)となってしまう。木村季由監督は「こういう天候もあり、試合前からペナルティは絶対しないでいこうと言っていたが…。こちら側の問題だけではなく、早稲田大学さんが一歩でも前に出ていこうという圧を感じさせたので、反則が起きた部分もある。五分じゃダメ」と振り返った。
激しいランを繰り返した東海NO8オフィナ副将
ただ、14人にったシーゲイルズは一気に集中力が増し、副将FL(フランカー)アフ・オフィナ(4年)の激しいランもありペースをつかむ。21分、ハイパントキック後にプレッシャーをかけて、カウンターラックからチャンスをつかみ、最後はWTB中川湧眞(3年)が飛び込んでトライ。さらに27分にもゴール前のチャンスから最後はLO(ロック)中山竜太朗が押さえてトライを挙げて14-19と5点差に迫った。
東海はWTB中川のトライで反撃開始
しかし、早稲田大学も立て直して、キックカウンターからSH宮尾が抜け出し、キックを蹴ってチャンスを作り、最後は副将のFL永嶋仁(4年)が押さえて、26-14と早稲田大学がリードして前半を折り返した。
モールからトライを挙げて喜ぶ早稲田HO佐藤
雨が降り続く後半の序盤、互いに相手のディフェンスの前に得点を挙げることができない膠着した状態が続くが、均衡を破ったのはリードしている早稲田大学だった。後半15分、相手反則からゴール前のラインアウトのチャンスを得ると、再びモールをまっすぐ押し切ってHO佐藤が押さえてトライ。ゴールも決まって33-14と大きくリードする。
その後、「早い段階からボールを動かすトレーニングをしてきた」という東海大学は雨の中でもFW(フォワード)、BK(バックス)が一体となってボールを継続してアタックしたが、なかなかトライを奪うまでには到らなかった。それでもロスタイムにモールから途中出場のFL弓部蒼生(4年)がトライを奪い意地を見せた。
接点の攻防は早稲田大学が優勢
結局、試合は前半だけで4つのトライを挙げた早稲田大学がリードを守り切って、33-19で勝利した。早稲田大学が春季大会で東海大学に勝利したのは、11年ぶりとなった。
東海大学、左から木村監督、FB谷口主将
ホームで勝ちたかった東海大学の木村監督は「私たちはあくまでチャレンジャーとして今日のゲームに臨んだ。前半ちょっと空回りで反則が続いてしまって、主導権を握れずに進んでしまった」。
「セットプレーも最後まで安定せず、スクラム、ラインアウトともにボールの争奪のところもうまくいかなかった。そういうところをしっかり修正していきたい。結果よりもゲームの内容、正しいことができていたかどうか、というところに目を向けて改善していきたい」と振り返った。
東海FB谷口主将
キャプテンのFB谷口も「負けてしまって、すごく悔しい気持ちで一杯。前半の反則の多さが今日の結果にそのまま繋がった。練習で反則を減らしていくようにしなければならない。ただ、アタックについては雨でも、春から積み上げてきたものが相手に通用したと感じる部分もいくつかあった。失点が多かったのでディフェンスも練習して、アタック、ディフェンスともに磨き上げたい」と前を向いた。
早稲田大学、左から大田尾監督、SO伊藤主将、HO佐藤
春季大会の開幕戦で、強豪の東海大学に勝利した大田尾監督は「2月から準備してきたことが、どれだけ出せるかと臨んだ。今年に賭けるメンタル的なところなど、今出せるものを出してくれた。春季大会の初戦に勝ったのも東海大学さんにも勝ったのも初めてなので、選手たちに感謝したい」と話した。
キャプテンSO伊藤は「最初キックオフレシーブでしたが、みんなディフェンスで頑張れて、反則なく最初もいけたので、『WASEDA FIRST』に対してできたと思う。(『WASEDA FIRST』には)すべてのプレーの最初をしっかりやるという意味もあり、僕自身体現できなかったこともあったので、リーダーとして、もう1回見つめ直したい。自分たちのやりたいことが出せたり、出せなかったりしたが、勝てたことは自信になる」と冷静に話した。
春季大会2試合目で初黒星を喫した東海大学、1試合目を勝利で飾った早稲田大学。雨の中の難しい状況での試合となったが、ともにいい点も反省すべき点もあったようだ。
東海大学は、次節は5月14日(日)、昨季リーグ戦の開幕で敗れた東洋大学と、相手のグラウンドに乗り込んで対戦する。一方の早稲田大学は同日、熊本・えがおスタジアムで永遠のライバルである明治大学と激突する。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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