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トライを挙げるHO坂手主将
5月5日(金・祝)、リーグワン・ディビジョン1のプレーオフ準決勝を13日(土)控え、連覇を目指す埼玉パナソニックワイルドナイツは、埼玉・熊谷ラグビー場で東洋大学と練習試合を行った。ファンクラブ、地域の方限定だったが約3500人が集った。
なお、2021年11月にワイルドナイツは埼玉県川越市、東洋大学とラグビーを通じた地域振興等に関する協定を締結しており、協定が結ばれてから初めての試合となった。また、東洋大学の指導者は福永昇三監督、山内智一コーチ、宮本安正FW(フォワード)コーチと、首脳陣がワイルドナイツのOBという関係にもある。
◆5月13日(土)午後2:35 秩父宮ラグビー場
ジャパンラグビー リーグワン プレーオフトーナメント準決勝
埼玉パナソニックワイルドナイツvs.横浜キヤノンイーグルス
2014年からワイルドナイツを指導するロビー・ディーンズ監督は東洋大学と試合をした意図を「(リーグ戦からプレーオフまで)3週間空く。3週間、試合をしないで(プレーオフに)臨むのはどうしても避けたかった。相手がどうこうより、試合の経験ができたこと、スパイクを履いたり、テーピングを巻いたり、試合に向けた準備ができて良かった。東洋大学さんが試合を組んでくれたことに何よりも感謝している」と説明した。
WTBコロインベテ
指揮官の言葉通り、この1週間は東洋大学戦にしっかり準備して臨んでいたというワイルドナイツ。先発メンバーも本番さながらの主力メンバーだった。オーストラリア代表WTB(ウイング)マリカ・コロインベテが先制トライを挙げると、キャプテンで日本代表HO(フッカー)坂手淳史がモールから2トライを挙げた。主力メンバーは前半20分あたりで交替したが、その後もディーンズ監督は「全選手を見たかった」と30名以上の控え選手も試合に起用した。
トライを挙げて喜ぶ東洋大学
試合は予想通り一方的な展開となり、ワイルドナイツが16トライを挙げて101-12と圧勝した。ただ、後半の終わり、東洋大学はWTB(ウイング)石本拓巳が2トライを挙げて一矢を報いた。ワイルドナイツの坂手主将は「(プレーオフのために)どういう準備が必要かということで、ゲームスピードに慣れることができて良かった。東洋大学さんがよくやってくれて、次のステップになった。東洋大学さんも次の東海大学戦、そして秋のリーグ戦のプラスにしてほしい」と話した。
東洋大学の福永監督(右)と山内コーチ
ワイルドナイツOBの福永監督は「素晴らしい機会をいただいてうれしい限りです。おそらく学生にとっては一生記憶に残ると思います。とにかく今季は経験が必要なチームですし、最後に2トライできたことは評価できる」と破顔した。
また試合後、プレーオフは延長でも勝負がつかなかった場合、キッキングコンペディションで雌雄を決するため、主力メンバーの「ワイルド」、控え組の「ナイツ」、そして東洋大学から5人ずつ3チームでキッキングコンペティションが行われた。
キッキングコンペティションに臨むSO山沢
主力メンバーはFB(フルバック)野口竜司、SO(スタンドオフ)松田力也、SO山沢拓也、CTB(センター)ダミアン・デアレンデ、WTB竹山晃暉の5人が出場した。結果は「ワイルド」と「ナイツ」のサドンデスとなり、8本目ではSO山沢が決めたら勝ちの状況で外し、さらに10本目でWTB竹山が外してしまい「ナイツ」が勝利した。
「キッキングコンペティション」を行った理由をディーンズ監督に聞くと「プレーオフでは状況によっては、キッキングコンペティションがある。選手たちは試合での経験はほとんどない。練習場で蹴っているキックとは違って、場が静かな状況ではプレッシャーがかかってくる。いい経験になったと思いますし、この経験はプレーオフに活きてくる」と話した。
キッキングコンペティションでのSO松田
2本決めたSO松田は「いろんなことを想定して準備するのはロビー(・ディーンズ)さんらしく隙がない。いい経験になった」と言えば、SO山沢は「キッキングコンペティションに頼らないようにしたい。ぶっつけ本番より、どういうものかわかったので良かった。ただ、(キッキングコンペティションで)蹴らないのが一番いいですね」。また、ゴールキックは高校以来だったというCTBデアリエンデも「いい経験になったが、プレーオフではやりたくないね!」と話した。
5月13日(土)、リーグワン連覇、そしてトップリーグから通算3連覇がかかるワイルドナイツは東京・秩父宮ラグビー場で、初のトップ4入りを決めた横浜キヤノンイーグルスとプレーオフ準決勝で激突する。リーグ戦では1月28日に対戦し、ワイルドナイツが21-19で逆転勝利を収めている。
ディーンズ監督
ディーンズ監督は「お互いに手の内がわかりきっている。熊谷で試合をしたときにはタイトになった。プレーオフでもタイトになると思うし、非常に充実したプレーオフになる」と言えば、坂手主将も「僕らに対してどうアタックしてくるかわからないところがある。型にはめずにオープンマインドで、受けではなく自分たちから仕掛けていきたい」と気を引き締めた。
主力メンバーたちにもイーグルス戦への意気込みを聞いた。
HO堀江
「アタックで自分たちのやってきたことをどれだけ出せるか。ディフェンスにどう対応するか、です」(HO堀江翔太)。
LOデヤハーと東洋大学のLOウーストハイゼン(右)
「前回対戦したときコンテストキックでプレッシャーをかけられて、キッキングゲームで受けてしまったのが苦戦した要因なので、しっかりチャレンジしたい。もう1つは強いボールランナーがたくさんいるので、ディフェンスで立ち向かっていきたい」(LOルート・デヤハー)。
CTBライリー
「もちろん自信を持っている。プレーオフのような試合は自信を持たないと勝てないし、キヤノンとはリーグ戦で厳しい試合になったが、あれから自分たちもより成長しているので、いいパフォーマンスを見せられる」(CTBディラン・ライリー)。
CTBデアリエンデ
「2020年以来のキヤノンとの対戦だが、あのときより、チームとして向上しているので大きなチャレンジとなる。(イーグルスの南アフリカ代表)ジェシー(・クリエル)とは大親友で、ワールドクラスなので対戦するのが楽しみだし、負けたくない。できれば勝利の女神が僕らに微笑んでくれればいいな」(CTBデアリエンデ)。
「僕たちもあのときと違うチームになっている。自分たちにフォーカスすることは変わらない。相手はコントロールできないので、準備のところは自分たちに向けてやっている」(SO松田)。
「すごく勢いあるチームだし、チャレンジしてくると思うので自分たちもチャレンジしたい。リーグ戦でギリギリの試合をしていて(相手は)行けるというイメージでくると思うので、前のような試合にしないようにしたい」(SO山沢)。
最後にディーンズ監督に連覇に対して自信があるかと聞くと、「我々は連覇という表現を使っていなくて、それは過去のこと。この1年、このメンバーで目の前の努力が大事になってくる。だから結果は向こうから歩いてくるものではない。来週の土曜日の夜に結果が出る。目の前の試合、本当に1回切りの大会に主眼を置いて、自分たちのラグビーをすることが大事」と語気を強めた。
今季の同じメンバーで戦えるプレーオフは1回限り。チャレンジャーとして目の前の試合に全力で臨む。きっとその先には今季も優勝カップが待っているはずだ。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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